ごみ・環境ビジョン21 三島 佳子 現在、環境省は、来年の通常国会へ向けて、廃棄物処理法の改正案づくりをすすめています。また、経済産業省でもワーキンググループを立ち上げ、環境省に対し“リサイクルを廃棄物処理法から切り離す”ことを積極的に働きかけています。
いったい、廃棄物処理法はどう変わろうとしているのでしょうか? また、その落とし穴は...今後の廃棄物行政にとって重要なカギとなる廃棄物処理法改正に向けた動きをレポートします。
昨年4月、行政改革をすすめる内閣府の総合規制改革会議は、昨年7月に「重点6分野に関する中間とりまとめ」を発表しました。
このような規制改革の動きに背中を押されるかたちで、昨年9月より検討を開始した環境省中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会は、産業界、地方公共団体、廃棄物処理業界、NPOなど26団体からのヒアリングをはじめ9回の検討を経て、今年3月22日、「廃棄物・リサイクル制度の基本問題に関する中間とりまとめ」を発表しました。
「中間とりまとめ」の主な論点は次の4つです。
〈T〉廃棄物の定義 ・・・・・・・・ リサイクルできるものも「廃棄物」に
環境省は「廃棄物の定義」について、不適正処理が跡を絶たない現状から…◇ リサイクル可能物も含めて不要物として廃棄されたものを広く(廃棄物に)含める ◇ 不要物以外のリサイクル可能物も規制対象とする方向で考えるべき ◇ 不要物以外のリサイクル物については、より穏やかな規制とすることも考えられる …と、リサイクル可能物も廃棄物に定義する方針を打ちだしました。
この方針に対しての、産業界やリサイクル関係団体などからの「リサイクル可能物を廃棄物から除外すべき」との指摘については…
〈U〉 廃棄物の区分 ・・・・・・・・ 事業系(一廃)は今までどおり?
@ 日常生活に伴って排出される廃棄物を「生活系廃棄物として、原則として市町村の責任の下で処理するA 事業活動に伴つて排出される廃葉物を「事業系廃棄物」として、原則として排出事業者責任の下で処理することに区分する …としています。
しかし、現在の事業系一般廃棄物については、 「ごみっと・SUN29号」でも特集しましたが、事業系一般廃葉物の「持ち込みごみ」は増え続けており、しかも、事業系一般廃葉物のごみ質には特徴があります。一般廃棄物のごみ問題のなかで事業系一般廃棄物の問題が大きなウエイトを占めている今、従来どおりとしてしまうのは大いに疑問です。 また、排出源に対応した区分を基本としつつも…「同一性状の廃棄物(例:家庭から出る廃パソコンと事業所から出る廃パソコン)については同一の区分として処理できること、さらに「有書性がある廃棄物やリサイクルされる廃棄物については、一般廃葉物・産業廃棄物を問わず、独立した区分を設けること」…が示唆されています。 拡大生産者責任という点からも、このように区分された「リサイクル可能物(製品廃棄物)」や「有害廃棄物」が生産者による回収処理の対象となるのは望ましいことです。 しかし、一方でこの独立区分が、産業焼棄物と一般廃棄物の垣根を取り崩し、産廃と一廃の混合処理に道を開き、排出事業者責任を曖昧にされてしまうことが心配されています。
〈V〉 廃棄物処理業・施設設置規制 ・・・・・ 規制は厳格に、手続きは合理的に?
規制改革会議や経済産業省の意に反して、リサイクルを廃棄物処理法から切り離さなかった環境省ですが、その分「手続き等を合理化」することで、広域的・効率的な廃棄物処理・リサイクルを促進することが主張されています。つまり、事業者が廃棄物処理やリサイクルに取組みやすくなり、民間活力が発揮されるように検討がすすめられています。
新たに手続きの合理化が示唆されているのは、次のようなものです。
規制は厳格に…と、枕詞で言いながら、手続きの合理化を推進するなかで、情報公開や住民合意がいよいよ切り捨てられるのではないでしょうか。
〈W〉 排出者責任と拡大生産者責任 ・・・・・ ごみ有料化と拡大生産者責任の強化
環境省が排出者責任について打ちだしたのは次のようなものです。@ 一般廃棄物のごみ有料化、分別排出の徹底 A 市町村が自ら処理すべき廃棄物が他の市町村の区域で処分される場合、排出元の市町村の責任を強化 B 不法投棄の処理に要する費用の負担は… *一般廃棄物は生産者にも一定の役割を求ある *産業廃棄物は産業界からの費用徴収の方法を含め費用負担を検討する
一般廃棄物について、不法投葉に対しての生産者責任や排出元の市町村の処理責任が指摘されたと同時に、ごみ有料化が重要な政策としてあげられました。
具体的手法としては…
リサイクル可能物も廃棄物と区分した環境省に猛反発しているのが経済産業省です。 ワーキンググループでは、環境省が「中間とりまとめ」を発表する直前に、環境省中央環境審議会 廃棄物・リサイクル部会あてに「リサイクル対象物をなるべく『資源』としてとらえ『廃棄物(ごみ)』としては扱わない方向が検討されるべき」、「リサイクルについては、廃棄物処理法としてではなく、リサイクル関係法制によって適正なリサイクルが担保される方向が検討されるべき」といった内容の廃棄物処理法への意見書を送付したり、環境省の部会委員に説明に回るなど積極的に働きかけています。 これに対して、環境省は「このような指摘は、廃棄物の定義の問題ではなく、むしろ、廃棄物処理法の体系下でリサイクルに係る規制をどの程度合理化するかという問題である」と切り返しています。
廃棄物問題の根本解決である発生抑制を実現させるためには、生産と廃棄物処理・管理を一本化させ、産業界に直結するシステムの構築が不可欠ですが、それ以前の問題として省庁のなわばり争いや縦割り構造を改めなければなりません。
また、その後の部会で、非鉄金属業界などから「廃棄物に含めないこと」を強く求める意見も寄せられています。 |