ごみっと・SUN 30号
「杉並病」・・・・原因はプラスチツク起源物質だ !
科学者グループからのアッピール
《プラスチツクによる大気と健康の影響》より

 1996年4月、杉並区井草で開所されたプラスチック主体ゴミの減容詰め替え所、「杉並不燃ごみ中継所」周辺では稼働直後から、多数の周辺住民に気道系、中枢神経系、自律神経系、皮膚系などの多くの症状が現われ、なぞの化学物質過敏症「杉並病」として社会問題化しました。

  区の実施した疫学調査から、中継所と「杉並病」の相関関係を認めざるを得なくなった東京都は、2000年 3月「主な原因は中継所の硫化水素が、住宅内の配管や道路上の雨水ますから
放出したため」という『硫化水素説』を発表しました。
  排水施設の改修後は「杉並病」の発生は認めず、補償もしないという態度をとり続けています。しかし、健康被害発症地域の広がりは「硫化水素説」では説明がつかず、改修工事後も多くの患者が発症し、今なお「杉並病」は続いています。

  このような状況のなか、被害者の一人である津谷裕子さん(工学博士)をはじめ、34人の科学者たちは「廃棄物系化学物質による健康被害を支援する科学者グループ」を結成。東京都に対して、中継所の稼働中止や調査の実施等を求める意見書を提出し、自らも協力しあって原因究明を続けています。

   4月20日、被害者と科学者グループは緊急シンポジウム「プラスチックによる大気と健康の影響」を開催しました。
  科学者グループは、周辺大気の分析調査解析や健康被害調査、国内外の文献調査などから、「杉並病」の原因は「硫化水素」ではなく「プラスチック起源物質」であることを主張、中継所の稼働中止を訴えました。

  津谷さんが、行政が中継所周辺大気から採取した半揮発性物質の分析器磁気記録を解析したところ、トルエンジイソシアネート(ウレタンフォームの原料)やフタル酸エステル類(塩ビ可塑剤)、
カプロラプタム(ナイロンの原料)など400種類以上の化学物質が検出され、自動車排ガス由来の大気汚染とは全く異なる、違った種類の汚染であることが判明しました。

  プラスチック樹脂(ポリマー)などの高分子は、何万ものモノマー(単量体)が化学結合して出来ていますが、多くのプラスチックの場合、モノマーと高分子との中間の「多量体」の方が高分子に比べて毒性が強いものが多く、しかも蒸発しやすい性質を持っています。

  中継所は、プラスチックごみを圧縮・減容し、大型のコンテナ車に積み替える施設ですが、
地下2階の圧縮作業ラインの排ガスは、負圧にして一気に排気されるシステムになっています。
圧縮の際、強い機械的せんだん力(すりあわす力)によって、プラスチック相互の表面が強く擦り合わされ、ポリマーから、モノマーや多量体に分解(解重合)され、さらにそれが、大気中で新たに
化学変化を起こしながら新たな有害物質を生成している可能性が指摘されました。
  しかし、現在の技術では環境中の物質を分析できるのは全体の4%がせいぜいといわれており、しかも、分析できるのはモノマーのみで、多量体は毒性をもっているにもかかわらず分析不能だそうです。

  このように、廃プラスチック処理の過程でどのような化学物質が生成するのか、まだ、ほとんどが未解明で、その中に新たに毒性を示す物質が存在することが危惧されている状況の中、プラスチックの大量消費・処理・リサイクルが推し進められています。


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