ごみっと・SUN 30号
話題騒然!「杉並区のレジ袋税」

  買物のとき…「袋持参」を常々心掛けつつも、ついチャッカリいただいてしまうレジ袋。一方で中央防波堤処分場に鳥のように舞う無数のレジ袋。

そんな「重宝するけど、やっかいな」レジ袋に税金をかけようという「すぎなみ環境目的税(レジ袋税)」条例が、議会でのすったもんだの末、三月十八日に本会議で可決、成立しました。

 一人一日一枚や二枚のレジ袋も…日本中で使われれば、その数、年間280億枚、原油計算では5億7800リットル、ドラム缶にして約1400万本というのですから、まさに塵も積もれば…で、
すさまじい資源の無駄使いとなります。

 新聞紙上を賑わした杉並区発「レジ袋税」について、自他共に認める「ごみオタク」のAさん、
マイバッグ持参運動を進めるBさん、某市・市議会議員のCさん、の三名に各々の立場からお話をうかがいました。

レジ袋税(すぎなみ環境目的税)
  東京・杉並区内で使われるレジ袋1枚に5円課税する「環境目的税」。
 客は税を上乗せして店に払い、店が一括して区に納める。同様な法定外目的税は例がなく、全国初。
 税収見込みは年間4億円程度、屋上緑化の財源などに使われる予定。
山田宏区長は「税収増が狙いではなく環境の改善が目的」と説明している。実施時期は未定。

 

「レジ袋税」やレジ袋をこう見る


 レジ袋税については
@税金として
Aレジ袋をターゲットにした環境対策として妥当かどうか
B消費者の反応はどうか
C販売店の利便性としてはどうか…4つの見方が考えられますよね。

 今回の杉並区の税は「特定目的税」で、中味としては環境配慮とかもありますが、いずれにしても目的税は、結果的に普通の税金のエリアに含まれることは間違いありません。
 本来、納税者の収める税金で政策をやり繰りしなければなりませんが、その分が浮くということなので、その浮いた部分をどう活用するかが問われることになります。


 私はマイバッグ持参運動に取り組んでいますが、レジ袋だけにこだわっているわけではないんです。
「プラスチックごみをどうしようか」というのが出発点ですね。みんなの理解を得るのに、レジ袋ならとっつきやすいですから。いきなり「プラスチックごみを減らそう」と言っても大変難しいですからね。
 市内3ヶ所のスーパーやコンビニ、商店でマイバッグ持参のデモンストレーションをしたら「減らしたいと思っているが、客には言えない、外から動きがあるのはありがたい」というところもありましたよ。
 そうそう、ある商店街で、旅行バッグになるような立派な袋を200枚ぐらい配ったのですが、ほとんど使われないで、旅行用に(笑い)しまい込んでいる人もいるらしいですよ。
がっくり来てましたけどね。市民運動にしても商店にしても、思うようにレジ袋は減りませんね。


 私が住んでいるT市でもマイバッグ運動を重点目標として展開しようという施策があります。
 杉並ではレジ袋税の税収を環境保全に使うと言っていますが、このような形で税収を確保するのは税のあり方としておかしいと思います。
 大型店は利幅の中で吸収できますが、小売店の場合は、消費者の肩代わりをして税金を負担することも考えられるからです。結果的に小さな商店に追い討ちをかけるわけですから、単独の自治体では商店街の活性化に逆行してしまうと思います。
 市内のあるスーパーではレジ袋を5円で売っていますが、別に売上も減らないようで、袋の持参率も定着していると聞いています。


 地元のT市でアンケートをしたところ「レジ袋をわざわざごみ袋代わりに使っているという利便性を享受している人たち」と「環境に配慮してごみ袋としては使わない」という人たちと二つの層に分かれました。
抜本的にはごみ処理はどうするかということに言及していく問題ですが…。

環境? それとも税収?


 税金っていうのは、本来は「その仕事をやるため」に納めるわけで、そういった基本的な税と、「ペナルティ的な性格」の税を使って対応していくケース、と二通りありますね。


 納税者に素直に受け入れられる税であれば、それほどもめませんから、今回は納得しない増税の手法と言えますよね。 
例えば10円の税収を得るために8円の経費が掛かるとか、商店が代行するけれど、まだ原価計算をしていないとか。


 すごく税収があるように見えますが、小売店の人たちのボランティアで補っていくというのでは少し無理がありますね。


 地方分権一括法で課税の選択幅が広がり、杉並区のプロジェクトチームでは、何の税でもいいけど、杉並中継所の問題(次項参照)があるから「環境」にしよう、それならプラスチック、それならレジ袋ということで、スタートしたようです。


 レジ袋が問題だったから、レジ袋にしようというのではないのですね。


 そもそも杉並中継所が問題なのに、その重大性が薄められ末端のレジ袋にターゲットが絞られ、地方分権一括法の後押しがあるからやりましょう、というのは安易な進め方です。


 もし、ほんとにレジ袋が問題だとするなら、もっと早くレジ袋を対象にして政策を打っているはず。そうでないところが問題ですね。


 無料だったレジ袋に5円の税金を掛けることと、5円の有料袋にするのは同じですよね。


 そうなんですよ。杉並区が有料化にしなかったのは、一括法という法律の後押しが無いからです。


 でも、先ほどのスーパーみたいにレジ袋を有料にすれば、消費者は袋を持って来ますよね。


 レジ袋税は煩雑で、小売店は計算したり、報告したり、大変な手間を強いられます。
また申告しないとペナルティを取られたり、マイバッグを持ってきた人にはスタンプを押す手間もあります。
 さらに補助金で2円分は返すなど細かいことを決めていて、レジ袋は減るかもしれませんが効果は小さい、という疑問があります。


実施日を明記しないで、区民への広がりを待つやり方


 レジ袋だけが目的で、しかも小売店が不利になるというのは、どう考えてもおかしい。


 私はマイバッグ持参運動をきっかけにして、プラスチック製品そのものを少なくしていきたいと思っています。
三多摩地域の市長会も「揃って有料化しよう」なんて言う前に、国や産業界に「容リ法を変えろ」と押し寄せたらいいと思いますよ。


 政治的には可能ですが、市町村はまだどうしたらいいか、試行錯誤している状態です。


 それにしても、これだけ続けて新聞紙上でレジ袋のことがクローズアップされたことは、ありませんでしたね。


 そうなんです。
私たちのような市民は動きやすくなると思いますよ。税の問題とは別に、一般の人たちにもレジ袋に目を向けさせたのですから。


 もうひとつ、条例では施行日は決めていません。
新聞によると、これから公募の区民もいれて「レジ袋削減推進協議会(仮称)」を発足させ、まずレジ袋削減の具体的な方策について話し合うということです。
 区長は報道各社へのコメントの中で「あくまでもレジ袋の削減が目的で、税収が目的ではない」と強調しています。


 削減目標は5年で6割、目的が達成されれば、施行しない場合もあり得る、と書いてますね。


 私の住むM市では転居してきた人に、もれなく市からマイバッグを渡すのですが、ほとんどは陽の目を見ない(笑い)みたい。行政側の自己満足なんです。
 杉並では区報などにごみやリサイクルが、かなり取り上げられるようになったそうですね。
美大生がポスターをデザインしたり、ビデオを作ったり、と若い人も動き始めているのはうらやましい限り。


区民不在、議会での駆け引き


 新税ブームですが、よく見極めないといけません。
放置自転車の問題で、駅に税を掛けるというのがあるけど、これは都市計画や都市整備、公共交通をどうするか、という市町村の問題ですから。


 全国各地で花盛りの法定外税ですが、そのほとんどは、特定の事業者や地域外の居住者を課税の対象にしたものばかりで、地域の住民が負担する税は今回の杉並区が初めてです。


 区議会では、かなりもめたようですね。うちの議会でもよくもめますけど(笑い)


 専門委員会である区民生活委員会から全員出席の予算特別委員会へ「付託替え」をした…このことに端的に現れています。


 付託替えって?


 去年の11月に区民生活委員会で継続審議になった後、可決できないとみた条例賛成派が動議を出して、予算特別委員会に差し戻しをしたということです。杉並区議会始まって以来だそうです。


 区民委が予定していた公聴会を、参考人招致に替えて、採決を急いだというのですから、区民不在もいいとこです。実に強引な議会運営ですね。


 先ほど小さな商店やコンビニの人たちが反対しているという話が出ましたけど、そのことと関係あるの。


 差し戻しをしたのは、来年の選挙を控えて早く決着したいというつもりでしょうか。


 商店会連合会の幹部の認識と会員の認識は違っていて、会には区から補助金が出ているので、反対は言い辛い立場です。 一方、コンビニなどは反対して、裁判や直接請求を起こすと言っていますね。


 レジ袋を減らそうという環境が目的の税なのに、決め方が区民不在だったり、事業者の反対があったりですっきりしませんね。


 今後、行政側は本来のごみ減量や環境というコンセプトを小売店や消費者に理解してもらう努力が不可欠です。


レジ袋の有料化は可能か


 これだけ騒がれると、他の自治体も確実に刺激を受けますね。


 中野と練馬の区民が手を結んで、行政にアプローチしたり、近隣にも広がりは見せているみたい。波及効果はありますね。


 都知事はレジ袋税については肯定的ですから、東京都レベルで導入してくれるといいのですが…。


 今度は埼玉とか神奈川との問題がでてきそうですよね(笑い)。ただ県レベルとなれば、インパクトはありますね。


 M市では容器プラスチックやペットボトルの収集に費用が掛かり過ぎてしまって、今度はプラスチックを燃やしてしまおうと、試験運転を始めました。とんでもないことですが、プラスチックは市町村の手に負えないんです。
 燃やそうなんて言う前に、収集拒否をしたり、メーカーに送りつけたりというアクションを起こしたらいいのに。


 化粧品や医薬品の入ったプラボトルは「適正処理困難物」扱いにして、メーカーに引き取らせるという方法もあります。
韓国では使い捨て商品に対する規制があり、過剰包装の調査を委託して、みつかれば、自治体が罰金を徴収できることになっています。


 レジ袋を有料にして、5円で売ればいいと思うけど、お客さんが減るからできないんですよ。
 特殊な例では、M市のある有名スーパーは袋の持参率が30%。
なぜかというと、その店のオリジナルバッグはある意味「ブランド」で、地方の人からお土産に頼まれるくらいらしいですよ。


 日本はみんな揃ってないとしない。
会社の哲学とかポリシーをみせて、むしろそれを売りにすればいいんですが、有料の店も、無料で配る店もありというのが、外国では当たり前です。
コンビニでは本部が決めてくれれば、という回答が多かったですね。


 その点は杉並のように自治体で決めれば、やり易いかもしれませんね。自治体が助成して商店街ごとにオリジナルバッグを配ってもいいと思います。


 杉並区の職員の話によると、マイバッグを配っても、10%の利用率だったということです。
つまり、レジ袋税が導入されても5円を出す人はたくさんいるということです。


産業界の責任に迫ろう


 レジ袋税は確かに問題提起としては評価できます。
マスコミが賛否を含めて取り上げ続けてきましたし、過剰包装やごみ問題を考えるきっかけにはなったと思います。
 でも商店との対立を招いたり、これだけのエネルギーを費やすなら、他にやり方はなかったかと考えてしまいます。


 東村山市ではペットボトルに20円程度の課税をしようという提案があって、話題になっています。
リサイクルに問題があるので使用を抑制していくためで、コスト負担について市民に考えてもらおうというのが狙いだとか。


 容器プラスチックの処理費が掛かり過ぎたから燃やそうなんて、M市も東村山市を見習ってペットボトル税でもやって欲しいですよ。
 処分場に代わるエコセメント化施設の焼却灰が足りないから、プラスチックまで燃やそうと思ってるのかも。


 杉並区を通ると中央線からノボリ旗や横断幕が見えますよね。
何にしようかな式でレジ袋にしたという出発点は問題ですが、このままレジ袋が削減できれば導入しないかも知れません。
 レジ袋税が引き金になって、論争の輪が広がっていけばいいと思います。何も考えない人に考えさせたという意味では、100点満点です。


 杉並のような税というやり方には反対でも、文京区は、商店街連合会がレジ袋を断ると金券になるポイントが貯まる制度、品川区は「ノーレジ袋運動」事業を始め、板橋区はレジ袋有料化を検討する…などいろいろな動きが出ています。
 また栃木県では県内のスーパー4社が、一律5円の有料化を予定していて、公正取引委員会は「ごみ減量という公共的な目的」を評価し、独占禁止法上問題ないという結論を出しています。


 市民運動だけではどうしても限界があります。
行政も本気になってもらうためにも、何もやらないより、ずっといいと思いますね。


 昔のごみは厨芥ごみなど生活の結果だけでした。東京オリンピックぐらいから、ごみ質が変わってしまったのに、黙々と市町村で処理をしてきたことがおかしい。
 生ごみとか限定したものだけは市町村、あとは製造したところ、民間で処理させるようにしなければなりません。


 そのためにも、焼却・埋立てに逆戻りするのは止めさせないと。今までの市民運動が報われませんよね。


 プラスチック類の処理やリサイクルに多くの税金が使われていることを、もっと住民に知らせていかないといけませんね。


 市町村レベルでいろいろな問題提起やアクションを起こしながら、製造者責任という核心に迫って欲しいですね。

 

レジ袋税を巡る経過

2000年   
 4月   収入役を座長とする杉並区長の諮問機関「区税等研究会」が法定外税の検討を開始
 9月 4日同研究会がレジ袋への課税案をまとめ、山田宏区長に答申
10月24日区民、事業者、学識経験者ら12人による「杉並区レジ袋税調査会議」
(会長・中条潮 慶大教授)を設置
2001年   
 5月29日同会議が「レジ袋税は選択肢の1つと考えられる」との報告書を山田区長に答申
10月25日山田区長がレジ袋税条例案11月開会の区議会に提案し、合わせて「エコシール制度」を
設けることを発表
10月30日区内95の商店会が加盟する区商店連合会がレジ袋税に同意
11月 7日同条例案が区議会に上程、区民生活委員会に付託
11月 8日同委員会での深夜に及ぶ議論の末、継続審議を求める動議が出され・・・・・・
29日区議会本会議で全員一致で継続審議を決定
2002年   
 1月15日区民生活委員会が公聴会の開催を決定
 2月22日議会運営委員会で、全区議が委員となる予算特別委員会へ同条例案を付託替えが決定
公聴会開催は不可能に
 3月 5日予算特別委員会が商店、消費者、学識経験者ら6人を招致
 3月15日同委員会で賛成多数で同条例を可決


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