ごみっと・SUN 28号
特集 ● ごみ有料化をどう考えるか!
 

 昨年は「環境の世紀」の幕開けであるはずが、“戦争”という最悪の環境破壊に曝される年になってしまいました。
国内の廃棄物問題では、各種リサイクル法の問題が顕在化し、ごみ処理の広域化、ガス化溶融やRDFなど次々と新たな受け皿が作られ、「循環型社会元年」を単なるなる掛け声に終わらせてしまいました。
 一方、市民が着実に力をつけ、まちづくりの主体になってきたことは、ダイオキシン条例の制定やごみ減量に向けての実践を見ても明らかです。こうした地域社会の流れを踏まえ、ごみ・環境ビジョン21では、市町村に密着したテーマを取り上げる一年にしようと考えています。

 第一弾は「ごみの有料化」問題です。有料化については、市民への動機付け、費用の公平化、減量効果などの賛成意見、一方、税の二重取り、ごみ質に関して公平化ではない、消費者への一方的な負担などの反対意見が挙げられ、議論が繰り返されています。
 果たして「有料化」はごみ減量の切り札となるでしょうか。すでにかなりの市町村で導入されている「家庭ごみの有料化」について、事例を示しながら検証します。

「家庭ごみの有料化」をめぐる状況

★ 有料化の広がり町村から中小都市へ
 家庭ごみの有料化が、ごみ政策として急浮上したのは1990年以降のことです。1993年〜94年、厚生省や環境庁(当時)は、環境先進国の事例などを踏まえ、「経済的手法」と しての「有料化」を示唆する答申を発表しました。
 厚生省の答申では、次の4つの効果を期待できるものとして「従量制の有料化」を掲げています。

@減量効果を期待できる
A受益と負担の不公正が解決できる
B環境意識やコスト意識など排出者の意識変革に効果がある
Cリサイクルが促進される

 そのころ、焼却施設の建設と維持管理のための財源確保に苦慮した北海道伊達市が、有料化に踏み切って2年後「3割減った」というセンセーショナルな発表を行ったことから、全国の市町村で「減量」と「財源確保」を目的とする有料化の機運が高まりました。1992年6月には、全国市長会も、有料化の推進を提言。厚生省の調査によれば、同年10月時点で、従量制の有料化を実施している自治体は636市町村(19%)にものぼっています。ただし、実施しているのは人口規模が小さい自治体が多く、人口10万人以上の市では実施されていませんでした。
 しかし、95年以降、千葉県野田市(人口約12万人)、茨城県ひたちなか市(人口約15万人)をはじめ、98年には100万都市の北九州市でも指定袋による有料化が実施されるなど、有料化は10万人以上の都市で実施されるようになってきています。

★ まず、多摩地区から・・・・お膳立て整い東京都が方針
 有料化の根拠となる手数料の徴収が規定されている法律は「廃棄物処理法(第6条の2の6項)」と「地方自治法、(第227条 手数料)」ですが、廃棄物処理法は、今回の改正で手数料の額の勘案に関するただし書きが削除され、地方自治法では、地方分権一括法実施に伴う改正で、「手数料」の規定が簡素化されるなど、自治体の有料化実施に制約が少ない形に変わりました。
 さらに、環境省の中央環境審議会が昨年10月に発表した「循環型社会形成推進基本法に盛り込む事項」でも「経済的手法の重要性」として、「デポジット制度の導入」や「生産・流通段階での課徴金」と並べて「家庭ごみ処理の有料化の実施」が打ち出されています。

 東京都では、区部で91年に粗大ごみの全面有料化、96年に事業系ごみ全面有料化を実施していますが、97年6月に出された清掃審議会の最終答申では…「家庭ごみの有料化」小項目で「ごみの発生・排出抑制を促進させることが期待できる」と評価しながらも、事業系ごみは「事業者処理責任」が原則であるのに対し、家庭ごみは「基礎的な行政サービスの一つ」であるとして「ごみ減量化の状況や処理費用等の情報を都民に積極的に提示し、処理費用の負担がどうあるべきか、議論を踏まえた上で判断すべきである」…と慎重な構えみせていました。
 ところが、98年10月に有料化を開始した青梅市にはじまり、日野市、清瀬市が実施に踏み切るなか、昨年8月都廃棄物審議会がとりまとめた「東京都廃棄物と行政行動」では「排出量に応じた負担を求めていく家庭ごみの有料化は既に多摩地区のいくつかの市で実施している」として、「都民がごみの排出に責任を持ち、ごみ減量に努める手法として家庭ごみの有料化が考えられる」と家庭ごみの有料化を示唆しました。

★ あいまいな有料化の定義
 ひとくちに「ごみの有料化」といっても明確な定義はなく、手数料の徴収の仕方によって、次のようにさまざまな方式があるのが実情です。
 また、指定袋の料金設定も、山口県下関市の100円/大袋から、岡山県津山市の5円/大袋まで、開きが大きく、税収を見込んだ自治体と、指定袋制と変わらない自治体までまちまちです。

@ 定額制
 ごみの排出量に関係なく、世帯または世帯員一人当たりにつき一定額を負担する方法。
A 従量制
 ごみの排出量に応じて処理手数料を負担する方法。
 指定袋やシールを販売し、その袋やシールを貼ったものでないと収集しないシステム

【A】単純方式
 指定袋やシールが一枚目から有料 (伊達市、鳥栖市)
【B】超過量方式
 一定枚数の指定袋やシールを無料配布し、それを上回ると有料で販売。 (野田市)
【C】二段方式
 一定枚数まで指定袋を原価で販売し、それを上回ると高い価格で販売。 (守山市、都城市、御殿場市、関市)

★ 減量効果は価格に応じて?
 ごみ量の変化を下のグラフでみると、初年度以降は減量効果が薄れています。守山、都城市はこれをきっかけに産廃の受け入れを禁止したり、資源回収を始めたり、他の施策も平行しているので、単純に有料袋効果とは断定できません。
 また可燃・不燃、各々の増減の変化をみると、可燃ごみは指定袋の値段が高いほど、実施後の減量比率が大きいが、数年を経過すると、実施前の量に戻る傾向。不燃ごみも同じく値段が高いほど減量化の比率が大きく、可燃ごみよりも大きくなっています。これは無料の資源ごみへの排出を誘導したものと考えられます。

 従量制の方式別自治体数は【A】方式が圧倒的に多く、次に【B】【C】はわずかです。
購入価格は@5円から100円/45リットル。
追加価格の最高が【B】350円、【C】300円となっています。
 以上は横浜市の資源化ごみ減量等審議会小委員会の検討資料より抜粋し引用させていただきました。

◆ 有料化によるごみ量の推移 ◆縦軸は総排出量の指数(有料化前年を100)

 

検証・三多摩の「家庭ごみ有料化」

★ 有料化まで「三多摩はひとつなり!?」
 昨年10月26日付けの朝刊・多摩版に「都市長会家庭ごみ有料化合意」「全市、03年度までに」という見出しが躍りました。
 多摩地域30市町村のうち、これまでに3市が有料化を実施し、検討中の自治体が数市あります。
 しかし、年度目標まで示した「多摩地域いっせい有料化の掛け声」には、疑問を持たざるを得ません。この合意は、町村を除く26市の首長が「有料化をめざそう」と意思一致したもので、各自治体のごみ政策のもと、市民に諮りつつ進めてきた有料化とは「似て非なるもの」だからです。
 繰返しになりますが、有料化は保留になったり、議論が分かれたり、という流動的な手法であり、ごみ有料化導入の是非、あるいはその時期についても、市民参加による慎重な議論の結果でなければなりません。
 また同10月、市長会事務局の企画政策室が各市の廃棄物担当職員にヒアリングをしたところ「有料化実施予定なし」と答えた市が9市、答申は出たが、未実施の市が4市、計13市は「現在、有料化の意向がない」という結果でした。
 有料化を市長会の合意という「トップダウン」で進めていくのは、大いに疑問です。

◆ 家庭ごみ有料化実施(予定)市の状況 ◆
 市   青梅市   日野市   清瀬市   福生市   昭島市 
有料化実施 年月 平成10年10月 平成12年10月 平成13年 6月 平成14年 4月
(予定)
平成14年 4月
(予定)
収集方式 ダストボックス
→個別収集
ダストボックス
→個別収集
集積所収集 個別収集 個別収集
料金
(指定収集袋
当たり)
5リットル 10円 7円 7円
10リットル 12円 20円 10円 15円 15円
20リットル 24円 40円 20円 30円 30円
40リットル 48円 80円 40円 60円 60円
有料化の効果
(前年同月比)
可燃ごみ 39.3%減 48.3%減 16.4%減
不燃ごみ 50.6%減 68.2%減 5.6%減
資源ごみ 286.1%増 176.1%増 18.5%減

★有料化でホントにごみは減ってるの?
 都市長会は『多摩地域におけるごみゼロ社会をめざして―家庭ごみの有料化について―』として、文書にまとめ、有料化の効果として、焼却量や最終処分量の減少、処理費用の削減や財源確保をあげています。さらに、市民意識の変化を促し、拡大生産者責任の強化を図ることができるとしています。
 有料化を全面的に肯定する理由は「青梅、日野、清瀬の3市が大きな効果をあげている」と評価しているからに他なりません。果たして、本当にそうなのでしょうか。資料として添付された下の表で検証してみたいと思います。

 知人からは「物置まで壊して捨てた人がいる」と聞きました。こうした状況から判断すると、実質月での比較は減量効果を判断する資料としては使えません。
 また、青梅・日野両市と清瀬市の減量率に差があるのは、2市が有料化と同時に何時でもごみが出せるダストボックスを廃止して、原則個別収集に方式を変えたからです。すでに個別収集で分別排出・資源化が進んでいた清瀬市では、同じ実施月で比較しても可燃・ 不燃・資源共に2市との差は際だっています。  有料化による効果として添付された資料ですが、有料化により収集方法の変更がごみ減量に効果があることが分かります。

★みんなで話した「家庭ごみ有料化」問題
 市長会合意の新聞発表からひと月後の11月26日
【みんなで話そう!三多摩の家庭ごみ有料化】と題する会合が開かれました。緊急の企画にも拘わら市民、議員、市職員など50名が参加し、関心の高さがうかがえました。

 各報告から紹介すると、3年を経過した青梅市は「プラスチックやビニール袋などは減量していないので、環境への影響は変わらない。直前の駆け込み排出で減量した不燃ごみがまた増えてきた」とマイナス評価。
 日野市は「市民に向け660回(述べ3万人)説明会を開いた。日の出処分場への搬入ワースト1の状況を市民に知らせ、共に議論したことによる『ごみ改革』であり、有料化だけの成果ではない。結果的に「資源物も含め、総量で27.5%減量した」と収集形態の変更を含む『ごみ改革』を強調しました。

 今年6月から実施した清瀬市は前出の2市とは違って「すでにステーション収集をしていたので、分別・資源化がある程度進んでいた。有料化だけの効果はまだはっきりしないが減量率の高い数字はこの先も表れないのではないか」という疑間が出されました。
 来年4月に導入予定の昭島市は2年前に「7分別収集と有料化も効果的」という答申が出され9月の予算委員会で予算計上(袋購入費とし約400万円)されたが、市議でさえ「寝耳に水」で「1年前からプラスチックの分別収集(北海道へ)をしているが、包装容器が多いのにその分も有料になるのはおかしい。増税ではないのか」という指摘がありました。

 一方、立川では市長が9月議会では「有料化はしない」と答弁。国分寺では有料化を公約に掲げた市長が当選後初めての9月議会でトーンダウン。市長会の合意との矛盾が明らかにされました。

◆ 東京・三多摩地域 家庭ごみ有料化の現状 ◆平成13年10月現在
市長会事務局調査制作室調査より
  市  数  比 率 (%) 
実施済み11.5
 実施予定または有料化答申済み 34.6
検討中19.2
検討無し・その他34.6
合  計26100

 

「家庭ごみの有料化」の前に

★まず「事業系ごみ」をチェックしよう!
 意見交換では「事業系ごみ」に議論が集中しました。三多摩地域では大半の市で事業系ごみの有料化を実施しています。廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の第1章総則ど第3条(事業者の責務)には「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と規定されています。家庭ごみと違い事業活動によって生ずるごみを公共施設に持ち込むのですから、当該の市町村が手数料を徴収するのは当然と言えます。
 話合いでは「市民の努力で減少傾向にある家庭ごみの有料化より、有料になっても増えている事業系ごみの減量が先決」という結論になりました。
 事業系ごみには、処理業者を介して中間処理場に運ばれるいわゆる「持ち込みごみ」と小規模事業者が指定袋などで排出するごみの二通りあり、後者は家庭ごみと一緒に回収されています。
 武蔵野市では、公募による市民・事業者、各課の職員で構成される「ごみを減らそう市民行動委員会」が昨年7月からスタートしました。リサイクルではなく、発生抑制=リデュースに目的を絞った委員会での「(減量計画を立てるにあたって)事業ごみと家庭ごみの量をきちんと把握したい」という要望に応え、行政が整理した可燃ごみのデータ(表)は、大変興味深いものです。

 下の表は事業系ごみを、有料袋の使用量からごみ量を換算した数字です。許可業者による「持ち込みごみ」を加えて、家庭ごみと比較すると、前者が約45%、後者が55%で、約半分が事業系ごみであることが分かりました。有料袋すら使っていない事業系ごみを含めれば、割合が逆転するのは間違いありません。事業所の多い23区では約70%が事業系ごみとも言われています。
 家庭ごみの有料化を云々する前に、行政は事業系ごみの量を市民に公表し、飲食店から出た生ごみの堆肥化など減量に向けた指導を強化すべきです。
 また全国的に産業廃棄物の処分が困難な状況にある現在、市町村に医療性廃棄物を含む産廃や他市町村のごみが混入されていたという報告もあり、事業系ごみの中身や出所を厳しくチェックする必要があります。
 市町村でのごみ減量と規制のターゲットは家庭ごみではなく、事業系ごみといわざるを得ません。

◆ 事業系可燃ごみ推計値 ◆単位 トン
   平成10年度   平成11年度   平成12年度 
可燃収集ごみ 26,650 26,294 25,059
許可業者他 14,264 14,294 14,250
ごみ量合計 40,914 40,588 39,309
事業系ごみ量 18,257 18,041 17,742
家庭ごみ量 22,657 22,547 21,585
事業系ごみの割合 45% 44% 45%
 市民一人当たり量  475g 471g 452g

★有料化で税収入・・・・・ほんとにそうなの?
 有料化効果のひとつに袋の売上が税収入になった、ことが挙げられます。果たしてそうでしょうか。ごみ袋の値段を比べてみると、日野市では他の2市より倍ほど高く、1枚80円/40リットルとなっています。
 市の統計によると、2000年度の総収入はすべて袋の売上で、3億3372万5200円、一方、総支出は、製造コストから取扱店への委託料まで諸々を含め、1億2774万9511円です。担当職員2名の人件費(未定)を差し引いても、約2億円の収入になります。
 日野市では、環境政策に使うということですが、税収入であることには間違いありません。青梅、清瀬の2市の袋は各々48円、40円ですが、相応の約1億円の税収入と計算されます。
 財政が逼迫している現在、行政側にはありがたい税収のように思われますが、たった一袋のごみ処理でも、焼却、収集の委託、手選別、資源化、設備投資などすべて住民の税金で賄われているのですから、有料袋の収支のみを比較すること自体に無理があり、むしろ高額な税収入は「税金の二重取り」になります。税収入になるから有料化するというのは本末転倒と言わざるを得ません。

★ 製造者責任を明確にするために
 「ごみっと」誌上でも繰返し主張してきたように、ごみ問題の根本的な解決は、製造段階で廃棄物に係るコストを製品価格に内部化し、生産者責任で処理を行う仕組みにしていく、つまりごみを作り出している社会・経済システム自体を変えていくことです。
 肝心の生産者責任が明確ではない法律や改善されていない社会・経済システムをそのままにして、住民が一方的に廃棄物処理コストを負担する有料化では問題が解決しません。例えば、ダイオキシンの発生原因である塩化ビニール製品の禁止、または韓国のように使い捨て商品規制などを行なうことが先決です。
 ごみ処理の責務を負う市町村は市民との連携の中で、上記の方向性を共通認識として、持ちつつあります。また容器包装リサイクル法に則って、容器プラスチックの回収を始めた市町村は、収集保管費用の過大な負担に苦慮し、生産者責任の欠如という法律の問題点を指摘しています。

 「循環型社会」を掲げ、各種リサイクル法が動き出しても、生産段階での改革は進まず、有害物質を含む大量のごみが持ち込まれ、処分場という出口もない、市町村は板ばさみ状態に陥っています。ごみ減量は至上命題であり、行政が住民理解を得やすい有料化を導入したいという意向も分からないではありません。
 しかし、有料化が一時的な減量効果をもたらしても、リサイクルに回されたごみに係る費用負担が加われば、税収入も追いつかず、結果的に今の誤った生産体系を支えるだけになってしまいます。
 ごみの有料化をめぐる考え方は賛否両論、様々です。「ごみ改革」の中で行政と市民・事業者がごみと真摯に向き合った日野市のように、徹底的な議論が不可欠でしょう。
 ごみを出さない社会システムを作り出すために市町村では何をすべきか、今、問われています。

【ごみっと特集チーム】


都市長会、家庭ごみ有料化合意

★全市、2003年度までに
 都市長会は、ごみ最終処分場の延命を図るため、ごみ減量の方法を検討していた。「多摩地域におけるごみゼロ社会をめざして―家庭ごみの有料化について」と題し、2003年度末までにすべての市が有料化をすると打ち出した。
 2001年10月25日に開かれた全体会では、1人の市長から「努力はするが、がっちりと決められてしまうと困る」との声が出たものの、残る市長からは異議はなく了承されたという。申し合わせでは、有料化の手法や料金などについては、各市の判断に任せることにした。
背景となった市長会での合意の要点


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