ごみっと・SUN 28号 特集 ● ごみ有料化をどう考えるか!
昨年は「環境の世紀」の幕開けであるはずが、“戦争”という最悪の環境破壊に曝される年になってしまいました。
第一弾は「ごみの有料化」問題です。有料化については、市民への動機付け、費用の公平化、減量効果などの賛成意見、一方、税の二重取り、ごみ質に関して公平化ではない、消費者への一方的な負担などの反対意見が挙げられ、議論が繰り返されています。
★ 有料化の広がり町村から中小都市へ
家庭ごみの有料化が、ごみ政策として急浮上したのは1990年以降のことです。1993年〜94年、厚生省や環境庁(当時)は、環境先進国の事例などを踏まえ、「経済的手法」と しての「有料化」を示唆する答申を発表しました。厚生省の答申では、次の4つの効果を期待できるものとして「従量制の有料化」を掲げています。
@減量効果を期待できる
そのころ、焼却施設の建設と維持管理のための財源確保に苦慮した北海道伊達市が、有料化に踏み切って2年後「3割減った」というセンセーショナルな発表を行ったことから、全国の市町村で「減量」と「財源確保」を目的とする有料化の機運が高まりました。1992年6月には、全国市長会も、有料化の推進を提言。厚生省の調査によれば、同年10月時点で、従量制の有料化を実施している自治体は636市町村(19%)にものぼっています。ただし、実施しているのは人口規模が小さい自治体が多く、人口10万人以上の市では実施されていませんでした。
★ まず、多摩地区から・・・・お膳立て整い東京都が方針
有料化の根拠となる手数料の徴収が規定されている法律は「廃棄物処理法(第6条の2の6項)」と「地方自治法、(第227条 手数料)」ですが、廃棄物処理法は、今回の改正で手数料の額の勘案に関するただし書きが削除され、地方自治法では、地方分権一括法実施に伴う改正で、「手数料」の規定が簡素化されるなど、自治体の有料化実施に制約が少ない形に変わりました。さらに、環境省の中央環境審議会が昨年10月に発表した「循環型社会形成推進基本法に盛り込む事項」でも「経済的手法の重要性」として、「デポジット制度の導入」や「生産・流通段階での課徴金」と並べて「家庭ごみ処理の有料化の実施」が打ち出されています。
東京都では、区部で91年に粗大ごみの全面有料化、96年に事業系ごみ全面有料化を実施していますが、97年6月に出された清掃審議会の最終答申では…「家庭ごみの有料化」小項目で「ごみの発生・排出抑制を促進させることが期待できる」と評価しながらも、事業系ごみは「事業者処理責任」が原則であるのに対し、家庭ごみは「基礎的な行政サービスの一つ」であるとして「ごみ減量化の状況や処理費用等の情報を都民に積極的に提示し、処理費用の負担がどうあるべきか、議論を踏まえた上で判断すべきである」…と慎重な構えみせていました。
★ あいまいな有料化の定義
ひとくちに「ごみの有料化」といっても明確な定義はなく、手数料の徴収の仕方によって、次のようにさまざまな方式があるのが実情です。また、指定袋の料金設定も、山口県下関市の100円/大袋から、岡山県津山市の5円/大袋まで、開きが大きく、税収を見込んだ自治体と、指定袋制と変わらない自治体までまちまちです。
@ 定額制
【A】単純方式
★ 減量効果は価格に応じて?
ごみ量の変化を下のグラフでみると、初年度以降は減量効果が薄れています。守山、都城市はこれをきっかけに産廃の受け入れを禁止したり、資源回収を始めたり、他の施策も平行しているので、単純に有料袋効果とは断定できません。また可燃・不燃、各々の増減の変化をみると、可燃ごみは指定袋の値段が高いほど、実施後の減量比率が大きいが、数年を経過すると、実施前の量に戻る傾向。不燃ごみも同じく値段が高いほど減量化の比率が大きく、可燃ごみよりも大きくなっています。これは無料の資源ごみへの排出を誘導したものと考えられます。
従量制の方式別自治体数は【A】方式が圧倒的に多く、次に【B】【C】はわずかです。
★ 有料化まで「三多摩はひとつなり!?」
★有料化でホントにごみは減ってるの?
都市長会は『多摩地域におけるごみゼロ社会をめざして―家庭ごみの有料化について―』として、文書にまとめ、有料化の効果として、焼却量や最終処分量の減少、処理費用の削減や財源確保をあげています。さらに、市民意識の変化を促し、拡大生産者責任の強化を図ることができるとしています。有料化を全面的に肯定する理由は「青梅、日野、清瀬の3市が大きな効果をあげている」と評価しているからに他なりません。果たして、本当にそうなのでしょうか。資料として添付された下の表で検証してみたいと思います。
知人からは「物置まで壊して捨てた人がいる」と聞きました。こうした状況から判断すると、実質月での比較は減量効果を判断する資料としては使えません。
★みんなで話した「家庭ごみ有料化」問題
市長会合意の新聞発表からひと月後の11月26日【みんなで話そう!三多摩の家庭ごみ有料化】と題する会合が開かれました。緊急の企画にも拘わら市民、議員、市職員など50名が参加し、関心の高さがうかがえました。
各報告から紹介すると、3年を経過した青梅市は「プラスチックやビニール袋などは減量していないので、環境への影響は変わらない。直前の駆け込み排出で減量した不燃ごみがまた増えてきた」とマイナス評価。
今年6月から実施した清瀬市は前出の2市とは違って「すでにステーション収集をしていたので、分別・資源化がある程度進んでいた。有料化だけの効果はまだはっきりしないが減量率の高い数字はこの先も表れないのではないか」という疑間が出されました。 一方、立川では市長が9月議会では「有料化はしない」と答弁。国分寺では有料化を公約に掲げた市長が当選後初めての9月議会でトーンダウン。市長会の合意との矛盾が明らかにされました。
★まず「事業系ごみ」をチェックしよう!
意見交換では「事業系ごみ」に議論が集中しました。三多摩地域では大半の市で事業系ごみの有料化を実施しています。廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の第1章総則ど第3条(事業者の責務)には「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と規定されています。家庭ごみと違い事業活動によって生ずるごみを公共施設に持ち込むのですから、当該の市町村が手数料を徴収するのは当然と言えます。話合いでは「市民の努力で減少傾向にある家庭ごみの有料化より、有料になっても増えている事業系ごみの減量が先決」という結論になりました。 事業系ごみには、処理業者を介して中間処理場に運ばれるいわゆる「持ち込みごみ」と小規模事業者が指定袋などで排出するごみの二通りあり、後者は家庭ごみと一緒に回収されています。 武蔵野市では、公募による市民・事業者、各課の職員で構成される「ごみを減らそう市民行動委員会」が昨年7月からスタートしました。リサイクルではなく、発生抑制=リデュースに目的を絞った委員会での「(減量計画を立てるにあたって)事業ごみと家庭ごみの量をきちんと把握したい」という要望に応え、行政が整理した可燃ごみのデータ(表)は、大変興味深いものです。
下の表は事業系ごみを、有料袋の使用量からごみ量を換算した数字です。許可業者による「持ち込みごみ」を加えて、家庭ごみと比較すると、前者が約45%、後者が55%で、約半分が事業系ごみであることが分かりました。有料袋すら使っていない事業系ごみを含めれば、割合が逆転するのは間違いありません。事業所の多い23区では約70%が事業系ごみとも言われています。
★有料化で税収入・・・・・ほんとにそうなの?
有料化効果のひとつに袋の売上が税収入になった、ことが挙げられます。果たしてそうでしょうか。ごみ袋の値段を比べてみると、日野市では他の2市より倍ほど高く、1枚80円/40リットルとなっています。市の統計によると、2000年度の総収入はすべて袋の売上で、3億3372万5200円、一方、総支出は、製造コストから取扱店への委託料まで諸々を含め、1億2774万9511円です。担当職員2名の人件費(未定)を差し引いても、約2億円の収入になります。 日野市では、環境政策に使うということですが、税収入であることには間違いありません。青梅、清瀬の2市の袋は各々48円、40円ですが、相応の約1億円の税収入と計算されます。 財政が逼迫している現在、行政側にはありがたい税収のように思われますが、たった一袋のごみ処理でも、焼却、収集の委託、手選別、資源化、設備投資などすべて住民の税金で賄われているのですから、有料袋の収支のみを比較すること自体に無理があり、むしろ高額な税収入は「税金の二重取り」になります。税収入になるから有料化するというのは本末転倒と言わざるを得ません。
★ 製造者責任を明確にするために
「ごみっと」誌上でも繰返し主張してきたように、ごみ問題の根本的な解決は、製造段階で廃棄物に係るコストを製品価格に内部化し、生産者責任で処理を行う仕組みにしていく、つまりごみを作り出している社会・経済システム自体を変えていくことです。肝心の生産者責任が明確ではない法律や改善されていない社会・経済システムをそのままにして、住民が一方的に廃棄物処理コストを負担する有料化では問題が解決しません。例えば、ダイオキシンの発生原因である塩化ビニール製品の禁止、または韓国のように使い捨て商品規制などを行なうことが先決です。 ごみ処理の責務を負う市町村は市民との連携の中で、上記の方向性を共通認識として、持ちつつあります。また容器包装リサイクル法に則って、容器プラスチックの回収を始めた市町村は、収集保管費用の過大な負担に苦慮し、生産者責任の欠如という法律の問題点を指摘しています。
「循環型社会」を掲げ、各種リサイクル法が動き出しても、生産段階での改革は進まず、有害物質を含む大量のごみが持ち込まれ、処分場という出口もない、市町村は板ばさみ状態に陥っています。ごみ減量は至上命題であり、行政が住民理解を得やすい有料化を導入したいという意向も分からないではありません。 【ごみっと特集チーム】
★全市、2003年度までに
都市長会は、ごみ最終処分場の延命を図るため、ごみ減量の方法を検討していた。「多摩地域におけるごみゼロ社会をめざして―家庭ごみの有料化について」と題し、2003年度末までにすべての市が有料化をすると打ち出した。2001年10月25日に開かれた全体会では、1人の市長から「努力はするが、がっちりと決められてしまうと困る」との声が出たものの、残る市長からは異議はなく了承されたという。申し合わせでは、有料化の手法や料金などについては、各市の判断に任せることにした。 背景となった市長会での合意の要点 |