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ごみかん

ドイツ特派員の

理穂です

第 3 巻

 

ごみっと・SUN 34号
第13回 缶のデポジット制が始まった !

  賛否両論を巻き起こした空き缶のデポジット制が、元旦より始まりました。91年に制定、98年に部分改正された容器法により、リユース瓶の利用が全体の72%を切ると(その半年後に缶のデポジット制を導入することになっていたためです。
  このたびデポジットになったのは、炭酸入り飲料の使い捨ての缶、瓶、プラスチックボトルで、つまリガス入り水、コーラ、ファンタ、ビールなどです。牛乳やワイン、オレンジュース、シャンパンなどは対象外になります。
払い戻しは買った店でのみ受け付け、空き缶と一緒に、レシートまたは購入時にもらうメタルチップが必要です。
店によって対応はばらばらで、対象となる飲料の種類もややこしい。政府は秋までに返還システムを統一するといっています。
  デポジット料金は1.5リットル未満の容器で25セント(約30円)、それ以上だと50セントです。
リユースの場合、500ml瓶で8セント、750ml瓶で15セントですから、使い捨て容器のデポジットはリユースよりも割高です。

  そもそもこの制度の目的は、リユース瓶の利用を促進すること。
すでにその傾向は見られ、導入3ヶ月でリユース瓶の使用は10%上がるだろうと試算されています。フランクフルト・ルンドシャウ新聞のコラムでは、使い捨てという便利さを妨げ、市民の不便さと引き替えにエコロジーを実践している、という意見が掲載されていました。
  私もさっそく缶ビールを買ってみました。もらったレシートにはデポジット25セントと明記されています。
さて、私はレシートを保管し、買っ店を覚えておかなければならない。友達の家にそのビールを持っていって飲んだとしたら、わざわざ空き缶を持って帰ってこなければならい。
これは不便です。それなら最初からリユース瓶のを買った方がいい。リユース瓶を扱っている店なら全国どこでも引き取ってくれますし、レシートを提示する必要もありません。

  しかしディスカウントスーパーでは、コスト削減のためリユース瓶を扱っているところは少なく、私の最寄りのスーパーもそう。今回のデポジット導入によって、小売店は莫大なコストと手間を強いられるわけで、反対の裁判を起こしたところもあります。消費者側も面倒になるという理由で、反対の声が根強くあります。
しかし政府は強し。缶の処理法が統一されていない、デポジット実施をチェックする機能が確立されていないなど、問題は残っていますが、ともかく堰は切られたわけです。
  リユース瓶は重いし、たまに炭酸水を買うくらいだし、という理由でで私も最近ご無沙汰していましたが、リユース瓶の意義に再び目覚めたところ。環境やごみ問題は身近なところからというけれど、毎日のことなので継続するのはなかなか大変。
楽な方に流れてしまいがちの現代人には、 ドイツのスパルタ的なやり方が必要なのかもしれません。


ごみっと・SUN 35号
第14回 DSDの全自動ごみ分別工場

  DSD(デュアルシステムドイツ)の全自動ごみ分別工場をハノーファーで見学しました。エキスポの年の2000年に建てられた全国で第一号。現在はドイツ国内195ある分別工場のうち、10台が全自動になっています。

  ドイツでは包装材や容器は製造企業に処理責任があります。DSDはプラスチック、缶、ビン、紙などを回収、リサイクルする組織で、1991年にドイツの企業が協力して作りました。
現在は17,500企業が20億ユーロ(1ユーロ約130円、100セントで1ユーロ)のライセンス料を払い、DSDで共同処理を行っています。商品の包装にはグリューネプンクト(緑の点)がついており、販売価格にリサイクル費用が上乗せされています。

  ビンは路上にあるコンテナで色ごとに回収。古紙類は2週間に一度表に出しておきます。プラスチックや缶など軽量簡易包装材はゲルベザック{黄色い袋)に入れ、定期的に回収されます。
ゲルベザックの使用は義務ではなく自由ですが、人口の約90%利用しているそうです。家庭ごみの処理は有料で量によって料金が設定されますから、包装材を別にしなければ自分が損になります。
DSDが回収しているごみ全体の量(ガラス瓶、古紙、缶、プラスチックなど)は1人当たり78キロで、ゲルベザックごみ(プラスチックなど簡易包装や缶)は一人あたり23キロでした。ちなみに250グラムのヨーグルト(販売価格は45セントくらい)ではそのプラスチック容器の処理に1.24セントかかります。

  ザックは回収され、分別された後、リサイクルされます。プラスチック以外は既存の業者が引き取りますが、プラスチックについてはDSDが最後まで責任を持つて処理。新しくプラスチック製品になるか、化学反応を利用して鋼鉄の製造に利用されます。

  リサイクル率には国の基準があり、ガラス類75%、缶、紙は各70%、アルミニウム、プラスチックは各60%となっています。EUでは2006年をめどに圏内のリサイクル基準を定めることになっていますが、ガラス60%、プラスチック20%と、 ドイツの基準よりも下回っています。それだけドイツがEU圏内で進んでいる、ということですね。

  自動化された同工場ではハノーファー市と周辺町村の110万人分を処理しています。建設には1千万ユーロかかりました。運び込まれたゲルベザックは乾燥したり湿らせたりする過程で素材ごとに分けていき、45分で完了。
ザック袋5キロあたり、処理に必要な水は1リットル、必要電力は1時間あたり3.5メガワットです。
職員数は手動分別工場だと17人のところ自動だと10人。費用削減になる上、むらのない分別ができるため、DSDは全土で自動化展開を目指しています。

  DSDの職員は360人、その子会社で技術開発などをしているSystec(システック)では20人が働いています。説明してくれた女性は広報専門でわざわざ西のケルンから来ました。工場併設のきれいな部屋で、コンピューターとスクリーンを駆使したスマートな説明。
わかりやすくまとめられたデータと整ったビデオを見た後で、処理の様子を見学しました。場内は話し声が聞き取れないくらいうるさく、ごみの匂いがします。これが現場で、実際にこうして働く人たちのお陰でリサイクルは支えられているんだなと実感しました。

  最後に、どうしたら日本でもこのようなシステムができるでしょうか、と質問したところ「法律が必要」との答え。やはり強制力なもった法整備がないと、難しいということですね。当然といえば当然のことですが、“ふんふん”といろいろ納得したDSD訪問でした。


 

ごみっと・SUN 36号
第15回 TEILSOLAR 太陽の電気を共有しよう

  ハノーファーにはエコシュタット(直訳すると環境都市)という団体があります。タイトルの“teilsolar”のteil(タイル)とは分配すること、分けること。そこではタイルオート(車)、タイルバイク、タイルボートに続いて、タイルソーラーがあります。

  初めの3つは車やバイク、ボートを皆でシェアすること。いわゆるカーシェアリングですね。タイルソーラープロジェクトは市民参加で太陽光発電施設を設置しようというものです。
ハノーファー中央駅裏に位置するパビリオンは、日本でいう公民館のようなもの。 図書館、舞台のついた広いホール、会合などが開ける部屋を始め、調理実習ができるキッチン、通りに面したカフェもあり、市民が集う場となっています。
その2階建ての屋上に同団体と別の市民団体「市民パビリオン」による太陽光発電装置があります。
丸い発電パネルは斜めに設置され、道を歩いているとすぐ目に入る。これはプロジェクト第一号で市民参加ではなく、市や基金などの補助金を得て設置しました。
電力買取法が施行されていなかったころのことで、人々にソーラー発電をアピールする広告塔の役割を担っています。

  市民参加としては昨年初めて、ニーダーザクセン州立図書館屋上に太陽発電装置を設置しました。モジュールを一口290ユーロ(1ユーロ約130円)で市民に販売。電気回線は同団体の所有で、管理も行っています。また市郊外の小学校屋上に設置の計画も進んでおり、そこは30人が全パネルの共同所有者という形になっています。

  代表のハイトランド氏は建築家ですが、本業よりもタイルソーラーの活動に力が入ってしまう、とのこと。市主催のソーラー祭りにも出展し、「多くの人に身近なこととしてとらえてほしい」と、参加をよびかけていました。

★エコシュタットのホームベージはこちらからリンクしています


ごみっと・SUN 37号
第16回 PASSIVE HOUSE さらなる省エネ

  2000年のハノーファ万博をきっかけに開発された住宅地クロンスベルク(Kronsberg)に、パッシブハウスが建っています。パッシブハウスとは低エネルギー住宅よりももっと省エネ化が進んだ建物のことで、エネルギーを安動的かつ効果的に利用します。
  低エネルギーハウスとは1平方メートあたりの年間エネルギー消費が70kWhのものですが、パッシブハウスはその基準をはるか下回り15kWhとなっています。
  北海道のような気候のドイツでは冷房はほとんど必要ありませんが、暖房は必須。お湯を循環させて家全体を暖める暖房方法が一般的です。パッシブハウの暖房費は普通の住宅の7分の1ですみます。

  その秘密は機密性の高い壁。南側に窓を大きくとり、3重ガラスは光は通しても外の空気をいっさい通しません。屋根には5平方メートル大のソーラーコクター(太陽熱を利用した温水器)が設置され、家族4人が必要なシャワーや暖房用のお湯の約60%を賄います。基本的に窓は開けず、換気装置がずっと作動し、外気と内気を入れ替えつつ室温をそのまま保ちます。
  つまり夏、外から熱い空気を取り入れますが、換気装置の中で内側のひんやりした空気とすれ違うときに熱交換するため、室内に入るときはひんやりとしています。冬はその反対。加えて湿度を一定に保つ働きがあり、普通の暖房と違って空気が乾燥しすぎる心配もありません。
  また普通、暖房には各部屋の窓の下に平らなボックスのようなものを設置し、そこに約70〜80度の湯が流れることで室内を暖めますが、パッシブハウスは壁全体に湯が通る壁暖房になっています。流れる面積が広いため湯の温度は26〜28度でよく、普通の暖房よりもずいぶん低い。
  ですから天気のよい日ならソーラコレクターだけで十分まかなうことができます。またオプションで、太陽電気発電装置を屋根に付けている家もあり、太陽のエネルギーをもらさず利用しています。

  99年に完成した32軒はEUのプロジェクトの支援を受け、地元の電力供給会社が音頭を取っていましたが、近く完成予定のパッシブハウスは「パッシブハウスコンセプト」という企業が分譲しています。
  建築コストは高いけれども、光熱費の節約になるため長い目で見るとお得なパッシブハウス。エネルギーの節約だけでなく、コストの節約にもなるわけで、徐々に市民権を得てきています。


ごみっと・SUN 38号
第17回 ドイツ鉄道 料金体系見直し

  昨年12月15日に実施された割引料金制度とバーンカード体系の不評を受け、ドイツ鉄道は8月1日に再び料金体系改定を行いました。好評だった50%の割引になるバーンカードを再び取り入れ、顧客取り戻しにやっきになっています。
  バーンカードを購入すると一年間、列車料金が割引になります。この制度はもともと市民団体の提案で取り入れられたもので、130ユーロ(2等席)で一率50%の割引きは、長年愛用されてきました。しかし昨年の変更ではバーンカード での割引率は25%のみ、カード購入は60ユーロ(2等席)に下げ、列車指定と1、3、7日前の事前購入により、10、25、40%の各割引を始めました。
  長距離切符は全体的に値下げとなり、事前購入による割引制度で、消費者にやさしい改定との触れ込みでしたが、割引分が決められているため事前割引きがいつでも受けられるとは限らず、割引条件がが複雑。
一般市民や政治家からも激しい批判を安け、5月までの売上は予定より20%下回りました。それで、8ヶ月あまりで再び、改定となったわけです。

  8月1日より実施となった新体系ではバーンカードによる割引率は25、50、100%の3種類となり(各50、200、300ユーロ。2等席用。ただし100%割引には毎月170ユーロの使用料が必要)、列車指定による事前購入割引は3日前のみで25、50%と単純化されました。
事前購入割引はともに往復で買うことが条件で、週末を含むと50%になります。事前購人の最低最低額は30ユーロ(2等席)。指定の列車を逃した場合、普通料金との差額に手数料15ユーロを払えば別の列車を利用できることになり、これまでの取り消し不可で罰則的規定と不評だったところを見直しました。

  航空運貸の値下げや車の相乗りが増え、交通事情は多様化。また同鉄題の職員の訓練不足から顧客の三人に一人は、正しい列車や料金情報を得ていないという調査結果もあります。
ドイツ鉄道では以前から二人以上で往復する場合二人目からの料金を半額としたり、5人まで鈍行列車週末乗り放題チケットなどきまざまなサービスを実施していますが、これらも以前に比べて値上がりの一途。
8月の改定を機会に、50%割引きバーンカードの売上が予想以上に好調だと発表していますが、新制度がどういう効果をもたらすかはまだ未知数です。


ごみっと・SUN 39号
第18回 学校に緑を!

  ベルリンにはGruen macht schule(緑が学校をつくる)という団体があり、幼稚園や学校の庭の緑化を手助けしています。
ベルリンには約千校ありますが、団体設立の1983年からこれまでに500以上の学校や幼維園が校庭や中庭を改造しました。
スタッフは教育関係者が2人、景観計画士2人、秘書の計5人で、市行政と環境教育関係の団体から財政援助を受けて活動しています。

  庭のコンクリートをはがし、子供たちの要望を取り入れて、音楽や劇を上演できる舞台を造り、ベンチを設置し、花壇を整備し、やなぎ小屋を作ります。
学校それでれの要望を取り入れ、学校内での調整を行い、改造計画を提案し、財政的時間的な事柄についてアドバイスを行います。

パン焼き窯がある中庭
  600人の児童が通うベーケ小学校ではアスファルトの
中庭を全面的に改造しました。
ポンプを取り付け、水が庭の中心を石の間を縫って流れるようにしました。なだらかに流れるので、子どもたちは思う存分水遊びができます。
周囲には木や縄で作った道具があり、上って周囲を見回せます。
わざと少しゆがんでつくってあるのでバランス感覚を養うことができます。

  ドイツの伝統的なバン焼き釜も設置し、地域の人との交流の場になっています。
モザイク柄は生徒のアイデイア。
かくれんぼができる大きな土管は蛇のモチーフで、これはある保護者がデザインしました。
小高い丘もあり、子どもたちは園内で様々な遊びを自分で創造することができます。

  同団体の景観計画士でコーディネーターのオルトルド・クールさんは「落ち若いた、心地よい環境を学校内に実現することで、攻撃的な行動が減り、生徒たちの学習意欲も高まったとの印象を教師たちは持っている。
学校側すなわち生徒たちが望んで改造した学校ほどその期果は高い。
特に小学校は自分たちの手を加えて改造しているところが多く、より効果的だ。

  高学年になるほどなかなか夢中にさせることは難しい、特に大学進学を目指すギムナジウムでは難しい。改造に関して、熱心な先生がいることが久かせない。
そのような教師が一人いることで他の数師や生徒たちも実際にどういう仕上がりになるのか想像することができる。
感化されて、やる気が湧いてくるのだ。最初のモチベーションを作るのが最大の課題だ」と話しました。

  ベルリンには外国人が多く住み、失業率は18%。社会問題が山積みとなっており、物を破壊するなど若者の暴力行動もそのひとつです。

 クールさんは「自分で手を加えると学校に対して愛着が湧く。学校を大事にするようになり、学校全体の雰田気が変わっていく。
よい環境を作ることで、心が落ち着き、学習能力が高まり、知識を得て、それをまた有意義に使うことができる。
満ち足りた生活を実現することが可能になる。環境問題はつながっている」と話しました。

  同団体の活動はただ緑を増やすだけではなく、子どもたちの心の健康、ひいては子供たちの未来に対しても大きく貢献しているのです。


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