ごみっと・SUN 27号
廃プラスチック処理施設の発表を巡って
田中 誠(町田ごみない倶楽部2000)

  町田市では1997年、焼却炉の排ガスのダイオキシン値が、都内ワースト2という事態が判明したことをきっかけに、その対策のための審議会が緊急的に設置され、多くの市民も巻き込んで、さまざまな取り組みがなされました。
 そして99年2月、市長に提出した審議会の中間答申により、容器包装リサイクル法(容リ法)に基づいた廃プラスチックの分別収集のモデル実施を、3,800世帯を対象に同年4月から実施しています。

  その後、2000年1月に最終答申が提出され、廃プラスチックと生ごみの処理対策等について報告されました。この審議の中で、4月からの容リ法の施行に基づき、廃プラの分別収集を全市で実施するための中間処理施設について、ごみ処理施設が集中しているリサイクル文化センター内に建設する方針を行政が一方的に公表しました。
 しかし、ごみ処理施設が小山田地域にさらに一極集中になってしまうことの諸々の課題、およびこの施設の安全性について周辺住民の同意を得るに至らず、建設できないままになっていました。ごみ処理施設の建設、運営などは、市民と行政が一体となって対処するべき問題ですから、この結果は自然の成りゆきだと思われます。

  このような状況の中でこの夏、8月10日に開かれた町田市議会の都市環境常任委員会において、まったく突然に『南地区におけるプラスチック資源化施設の公募について』と題する重大な行政発表がなされ、議員並びに傍聴者一同(数名の議員と市民)唖然とした次第です。
 行政がやることは、得てしてこのような抜き打ちの発表が多いだけに、今まで市民は煮え湯を飲まされてきたことが度々あり、この中間処理施設の分散化は想定されうる事態ではありました。それにしてもまず驚いたことは、この施設の建設に当たり、民間資金を活用したPFI的な手法による施設を企業から募集するということでした。

PFIの導入でいいのか?

  全国でごみ処理施設にPFIを導入した自治体はすでにありますが、審議会が進言したこの廃プラスチックの中間処理施設は、その設備の安全性や運用面などの点でかなり難しい事柄を有していて、慎重に論議されている状況であっただけに、突如、この施設にPFIの導入とは如何なものか、と誰しもが疑う状況ではないかと思います。
 もちろん、国の行財政改革に基づけば、自治行政への権限の移行により、国の企業活動の活性化には民間資金の活用は時代の流れとは思いますが、この廃プラ施設にPFIの導入とは、市民にとって一抹の不安材料になるのではないかと心配しています。

分散化される中間処理施設の安全性の対策は??

  この度、南地区に廃プラスチックの資源化施設(中間処理施設)を建造する理由として、審議会の答申の基本理念にそって、発生源に近く適正な処理をしたいから、南地区の準工業地域内を設置場所として選んだと行政は発表しています。
 町田市民が排出するごみの処理施設が小山田地域に一極集中して、ダイオキシンの発生などで周辺住民の人々に迷惑をかけていることは、決して望ましい状況ではありません。
 確かに、廃棄物処理の施設を分散して市民が身近に感じるようになれば、全市民がごみの発生抑制に対処していこうという気心が強く芽生えてくるはずです。しかし、これらの施設が周辺住民に対し、環境負荷を与える懸念がありそうならば論外です。
 従って、この度の資源化施設が、圧縮、結束の工程などで、化学物質などを発生しない設備であることを実証し、市民の同意を得ることが何よりも大切であります。

市民への情報の伝達は!!

  議会の常任委員会で行政発表をしたのですから、この施設の建設に関するあらゆる情報を、行政は全町田市民に対して、間髪を入れずに公表するべきであります。
 私はたまたま、この南地域に住居を構えていることでもあり、また、審議会の市民委員として答申書に関与していた経緯もあることから、南地域の多くの人々にこの行政発表の全容をいち早く伝達するのが務めだと思い、次のような行動を起こしています。

  ◆町田市議会の都市環境常任委員会委員長に、行政に対して情報の公開を求める要望書を提出いたしました。
◆一般市民として、議会からの情報を耳にすることができるのは一部の市民にすぎず、また、このような施設を身近に感じることがない南地区の準工業地域内の人々だけに、余計に情報を早く提供し、市民・行政と一体となって、懸念される安全性の問題に対処していくべきだと考えます。
 従って、市長に対して情報の公開を求める要望書を提出するとともに、南地域周辺の環境問題に関心を示している人々に対して、今までに行政などから得た情報を提供するべく、市民の会合を開いています。

市民はどう対処していけばよいのか…

  何よりも施設の全容を知りたいと望んでいる人々が集まり、『廃プラスチック処理施設情報連絡会』を開きました。
 この南地区の鶴間地域では、東名高速道路の横浜・町田インター近くの「サンケイ(産業廃棄物業者)」などから発生しているダイオキシンに現在とても苦しんでいる状況があり、この中間処理施設が何と言っても安全第一の操業であってほしいと願っています。
 廃プラスチックの資源化によるダイオキシンの発生抑制とごみ処理施設の分散化には、市民は一定の理解を示してはいるものの、やはり、これ以上環境を悪化させる懸念ありとの疑念がある以上、行政から充分な情報を提供してもらい、安全のお墨付きを欲しいと願うのは市民として至極当然のことだと思われます。

 市民は、PFI的な手法による施設の概要を少しでも早く教えてほしいと願うとともに、市民と行政とが一体となって、この施設が環境への負荷を与えないものにするためには、いかなる措置をとるべきかを、共に考えていこうではないかと切に願っている所です。
 この施設の建設に、やれ反対、賛成というのではなく、まず真実を知ることにより、より良き環境を維持していきたいと願っての情報開示の要望なのです。

【ごみっとメモ】
PFI=
空港や道路、橋などの社会資本の整備を民間事業者の主導で進める手法を指す。
英語のPrivate Finance Initiative(民間資本主導)の頭文字をとった略称。
 1990年代初めから英国で広がり、東南アジアの開発途上国でも応用されている。自民党のPFI推進調査会がまとめた法案要綱によると、対象事業は道路、港湾、下水道など従来の公共事業のほか、情報通信施設、リサイクル施設、観光施設なども含まれる。
国や自治体は一定の出資や債務保証、政府系金融機関の無利子融資などで支援し、民間事業者は利用料を徴収して、費用を回収する。


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