ごみっと・SUN 27号
三多摩にも “ガス化溶融炉”
服部 美佐子(府中市)

  「ごみっと・SUN」誌上で再三にわたり、その問題点を取り上げてきた“ガス化溶融炉”が、三多摩地域の調布市と三鷹市の共同事業として浮上しています。今年3月の新聞に「ガス化溶融炉を中心に検討する」と出ていたので、三多摩にもついに現れた、と思い、三鷹市ごみ対策課に電話を入れました。
  「何故、ガス化溶融炉?」というストレートな質問には「スラグになり、焼却灰が出ない」との答え。重金属溶出の危険性や焼却灰を溶融した後のスラグの行き場がない多摩川衛生組合の話をしても「スラグの需要はある」の一点張り。

  どんなごみでも“飲み込む”のが売りのガス化溶融炉。プラスチックについて訊ねると、今後「分けてリサイクルしていく」との答え。加えて生ごみの堆肥化や古紙のリサイクルを進めれば「ますます要らないのでは」と思ったのですが、担当者は最後までガス化溶融炉にこだわり続けました。

三鷹・調布市、合同処理までの経過

  三鷹市と調布市が3月に出した「新ごみ処理施設整備基本計画素案報告書」は、炉の大きさから適地選定、事業方式、環境影響評価の手続きまで、素案とは思えないほど具体的で行き届いた(?)内容で、その一例が「ガス化溶融炉を中心に検討する」という一文です。
 気に掛かるのは、この報告書が三鷹市と調布市の連名で出されていることです。何故なら、現在調布市は小金井市、府中市と二枚橋衛生組合の焼却炉を共有、三鷹は単独の施設を持っているからです。

  二枚橋衛生組合は67年に稼動、72年に増設し、我が国最古といわれるほど老朽化しています。過去の建替え計画では、新炉を三鷹市にある野川公園に予定したものの、近隣住民、及び三鷹市議会で反対され、凍結したまま今日に至っています。
 現在、調布、府中市が多摩川環境組合や多摩ニュータウン環境組合など他の施設に焼却を依頼して、全体の焼却量を減らし、騙し騙し稼動させている状況です。 一方、三鷹、調布の二市は80年に「ふじみリサイクルセンター(調布市、市境)」を建設、今日まで不燃ごみと粗大ごみの処理を行っています。
 今回の計画は、思うように建替えが進まない二枚橋衛生組合を抱えた調布市が、野川公園の一件を機に三鷹市と接近したことに始まり、98年には、合同でごみ処理施設基本構想を策定、99年には双方で覚書を締結しました。

ごみ問題を置き去りにした建設計画

 三鷹市は武蔵野市と武蔵野三鷹保健衛生組合を構成し、各々市内に、第一、第二処理場を設置し単独処理を行っています。
 84年・武蔵野、85年・三鷹と続けて稼動が開始され、決して新しい炉とは言えませんが、武蔵野市ではこのままメンテナンスを続け、建替えは当分先送りと聞いています。
 では同時期に稼動を始めた三鷹市は、稼動後の年数に、2倍もの開きがある調布市と組んで、なぜ施設建設を急ぐのでしょう。

  「・・・平成8年ごろから、野川の一件で語り合うことになった三鷹の市長さんが『調布はこんなに困っているのだ、実はうち(三鷹)の焼却場の隣接地は調布で、住民の皆さんに迷惑を掛けている、将来を考えれば調布と一緒にやっていくことも可能かな』という話をした・・・両方が持っている公共用地というのはあそこだなあ・・・」長々引用しましたが、これは調布で行われた素案説明会での市長発言です。
 三鷹では「・・・隣同士で共同して暮らしやすい町を作っていく・・・共同処理というと不燃物処理を行っている周辺が適地・・・」と助役が発言。
 どちらも耳を疑いたくなる中身です。迷惑施設の建設は大変だから、相乗りでやりましょう、今、一緒に使ってる場所でいいでしょう、という安易な思いつきのように聞こえます。将来のごみ処理ビジョンや周辺の環境影響との関係性には全く触れられていません。

一方的な用地選定、ガス化溶融炉へのこだわり

 市長発言で始まった調布の素案説明会は、7月18日に行われ、225名以上の方が参加しました。周辺住民を中心にした「ふじみ・ゴミ焼却場計画絶対反対の会」のメンバーも多く「適地選定」に厳しい質問が続出しました。
交通量が多い、住宅が密集、学校、病院、幼稚園などの施設が多数ある。他の場所と比較検討していない。素案の段階なら白紙でいい。「はじめにふじみ」ありきの選定の仕方に納得できない。・・・どこかで聞いたような指摘です。
 日の出町の二ツ塚処分場内に予定されている焼却灰のエコセメント化施設。二ツ塚処分場の近くには谷戸沢処分場がある。つまり谷戸沢のある日の出なら、それはふじみリサイクルセンターのある調布に酷似しています。「日の出の二の舞にならないで」と願わずにいられません。

 「ガス化溶融炉」については、ダイオキシンなどの環境影響やコスト面での質問、トラブルの危険性や未完の技術であるなどの的を得た指摘に対して、市長や市職員は声を揃えて、あくまで“案”であることを強調。
 当然ガス化溶融炉はトーンダウンと思っていたところ、後日、訊ねると「中心に検討する」ことは変わらないとの答え。用地にしても施設にしても、別な選択肢はあるのか、と疑いたくなるような拘り方です。

市民と共に将来のビジョンを見据えた検討を

 ごみ処理関連の施設建設をめぐる住民と行政の対立は今に始まったことではなく、これまで多大な時間とエネルギーが費やされてきました。
 ただ、今回の素案説明会での、住民側の発言には「反対」という言葉では括れない、鋭い指摘がみられます。「施設だけを建替えても何も解決しない」ということです。
ごみ処理を一方的に押し付けられてきた地方自治体で、行政と住民、事業者が製造者責任を明確にさせるために、何をすべきかが試されている時です。
 行政はプラントメーカーや国の代弁者ではありません。今回のやり取りを見ても、問題の本質を質している住民に比べ、それを真摯に受け止めようとしない行政の姿勢に疑問を感じます。

 合同処理が大前提となっている建替え計画は、この先、市民を交えた検討委員会が作られ協議しても、三鷹の単独処理という選択肢はないと、行政は断言しています。
 けれども、ごみ処理施設は個別の自治体が発生抑制、減量政策、分別収集・資源化、そのための市民啓発など、ごみ処理基本計画に基づく複合的で具体的な実践の進捗状況を踏まえて、計画していくものであり、施設にしても、焼却施設に固執することなく、堆肥化センターやリサイクルセンターなど様々な組み合わせが考えられます。

 合同処理を進める前に、三鷹市と調布市各々が将来的なごみ処理ビジョンを市民や事業者と共に協議すべきであり、過去の経緯やトップの思惑で、進めるべきではありません。
 ごみ問題の根っこは製造者責任にありということが、共通認識になりつつある現在、地方自治体のごみ処理行政が何を目指すのかが問われています。


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