ごみっと・SUN 26号
中国のごみ問題−2 【ごみの収集とリサイクル体系】
西田幸信(東京農工大大学院農業研究科)
|
前回は中国のごみ問題について、公害及び法的な整備状況を紹介しました。 今回はごみの収集とリサイクルシステムについて述べたいと思います。
まず、中国都市部におけるごみの発生から最終処分までの過程の流れを追った下図を見て頂きたい。日本との違いは、居民が排出したごみが、「単位」や「社区」毎にまとめられることである。
中国都市部における生活ごみの処分フローチャート
@居民 →→ | → A単位・社区 → | → Bごみ収集センター → | → C中継積み替え場 → | → 最終処分場 |
生活ごみの排出 | 収集 | 地域ごとに収集 | ごみの積み替え | 最終処分 |
「単位」とは、社会主義体制のもとで築かれた農村を除くあらゆる企業・機関・学校・軍など各人が所属する組織のことで、「ゆりかごから墓場まで」というように、単なる企業などでの労働だけではなく、消費・福祉・教育など社会生活の全てを保障し、かつ都市住民を管理する行政制度の性質をあわせもった組織である。
また、「社区」とは、コミュニティの中国語訳で、市場経済化が進み「単位」制度の揺らぎが見える中、「職域」に代わる「地域」として「社区」の建設が進められている。現在は旧来の「単位」と「社区」が混在する過渡期である。
各「単位」「社区」に専門の清掃員がおり、彼らの多くは「外地人」(外来流入人口)であり「長工」(常雇い)として雇われており、リアカーでごみ収集センターまで運ぶ。
また、市街地は「胡同」という細い裏通りが多く、大型トラックが入れないため、収集センターから直接最終処理場まで運ばない。中型トラックで中間積み替え所まで運び、その後、大型トラックが最終処分場まで運ぶ。しかし、中継積み替え場には、収集センターのようなコンテナはなく「ごみ山」のようになっているところが多い。それは、最終処分場に運んでも同じであり、公害の原因となっている。(前号写真)
なお最終処分法は、堆肥化・埋立て・焼却があり、近年ODAなど海外からの援助で近代的焼却処理技術の導入がはかられているが、地理的、技術的などの要因からも、埋め立て処理が主の現状である。
一方で、中国にも資源回収のシステムがある。この静脈産業としての廃品回収システムを示したのが下図である。
国家級 | 省級 | 地区級 | 県級 | 地域 社会 |
商業部再生資源管理弁公室 中国再生資源開発公司
| 物資回収公司 | 物資回収(分)公司 | 物資回収(分)公司 | 総合回収商店…回収ステーション 供蛸合作社 |
中央組織では「国務院商業部再生資源管理弁当室」が、有価物の買い取り、分類、整理、貯蔵、加工までの中間処理が管轄している。また、全国規模の商業公司(「公司」≒会社)として、「中国再生資源開発公司」があり、国家管理担当外の有価物などの業務を担当している。
地方組織では、「物資回収(分・区)公司」が一連のリサイクル業務担い、地域内にネットワークや加工工場を持っている。いずれも企業経営体として独立採算制を採っている。そして、末端の地域社会には、「総合回収商店」、あるいは「供・合作社」(社会主義時代に供給と販売を管理していた機構の名残り。)が置かれており、その下に「回収センター」(買い取りステーション)が置かれているというしくみである。
中国のリサイク関連資本の動向
| 1990年 | 1997年 |
再生資源公司 | 1024 | 5,000 |
回収センター | 111,600 | 160,000 |
販売拠点 | 5,400 | − |
加工生産工場 | 1,200 | 2,500 |
リサイクル関連職員(万人) | 63 | 80 |
リサイクル資源販売額(億元) | 100.2 | 300 |
現在発展途上にあるというものの、リサイクル資本は着実に増加している。97年には全国で16万の回収センター、計80万人の関連職員が従事している。また、97年における販売額は90年の約3倍、300億元(1元≒14円)に達している。
中国のリサイクル事業回収実績
| 1987年 | 1990年 | 1997年 |
くず鉄 | 6,392 | 8,622 | 3,800 |
廃銅 | 10.8 | 16.5 | |
廃アルミ | 4.38 | 6.3 | |
廃鉛 | 2.64 | 2.3 | |
廃ゴム | 15.29 | 15.1 | − |
廃タイヤ | 4.1 | 3.1 | − |
廃プラスチック | 19.4 | 12.6 | − |
雑骨 | 18.3 | 14 | − |
廃布 | 35.2 | 35.8 | − |
廃紙 | 164.4 | 159.2 | 580 |
中古車(台) | − | − | 290.000 |
回収実績を見ると、くず鉄や有色金属は大幅に伸びており、また中古車の回収が始まっている一方、雑骨や布類は減少している。(「−」はデータなし。)骨は、高価な家畜の飼料や肥料として農業に使われていた。布については、現在は農村でも見ることが少なくなった「布靴」がかつては一般的に履かれていた。どちらも伝統的な習慣が、近代化によって化学肥料や合成繊維の運動靴などにとって変わられたことが分かる。
前回、北京市でごみの逆有償回収が開始されたことを述べたが、有価物の有償回収は今のところ継続されている。しかし、資源の買い取り価格から、北京のような経済水準が比較的高い地域の一般の住民にとっては資源回収から得る利益は低く、経済的利益の目的で回収センターを利用するという人は少なく、専門の回収業者にとっての価格と考えられる。
以上、行政主導のトップダウンによる中国のごみ管理だが、最終回では末端の現状について紹介したいと思います。
北京における有価物の買取りおよび販売価格(95年8月時)(単位:元)
| スチール缶 | アルミ缶 | 飲料瓶(大) | ダンボール | 新聞 | 書籍 | プラスチック | 綿 |
買取価格 | 0.1/5個 | 0.1/2個 | 0.1/1個 | 0.4/Kg | 0.9/Kg | 0.8/Kg | 2/Kg | 1.6/Kg |
販売価格 | 0.1/3個 | 0.1/1個 | 0.18/1個 | 0.7/Kg | 1.6/Kg | 1.4/Kg | 3.2/Kg | 3.2/Kg |
前のページに戻る ページトップへ |