実践! 食べて感じて、はじまる循環型生活 (その1) 神宮司 真人 |
食べてもらいたいお弁当がある。昼夕問わず毎日注文をいただける方もいる。美味しいのである。 はなはだ勝手であるが多くのメッセージを詰めこんだお弁当である。
「食」というところから循環型社会を実践出来ないかと模索し、こんな内容のお弁当になった。
まず食材だが、農家から直送の新鮮野菜が中心。海草、干し椎茸などの乾物、日本の風土から生まれた保存食である凍り豆腐(高野豆腐)、お麩、切干大根等。 穀物など保存のきく食材を多めに使用。栽培方法にこだわっている農家からのお米、じっくり時間をかけて作られた味噌、醤油、梅酢、塩。
そして一番の特長は雑穀(あわ、ひえ、きび等)を積極的に食材に使っていること。 これらは国産であり、できるだけ多摩に近いところで作られる食材を用いる。
どうってことなさそうな内容なのかもしれない。 だが直送の新鮮野菜、乾物、保存食、穀物、雑穀…生産者との顔の見える関係であると、過剰包装で食材を流通させる必要がない。 例えば農家から直送の野菜はバケツに入れられ泥付きのまま運ばれてくる。
通常、野菜は透明なビニール系のパッケージに包まれて流通している。毎日色々な種類の野菜を多く使うので、過剰包装の食材を使うと厨房はたちまちビニール系のゴミの山になる。 他の食材(保存がきく)は使いきるまで時間を要すので、すぐにゴミにはならない。また、なるべくリユースのきく厚紙の袋で流通できるよう、お願いしている。 これも話のできる顔の見える関係だからできることだ。
調理過程で発生する野菜くずやご飯粒など、いわゆる生ゴミは、資源ゴミとして考えている。 今3つの方法で資源化している。まず、水をきった生ゴミをばけつに入れ米ぬかをふりかけ、寝かせて半堆肥化、近所の鈴木牧場の堆肥化装置に混ぜさせてもらい、堆肥として畑に返っていく。
また、藤本式の通称「ゴミケシ君」で生ゴミが無くなっていくのを観察。1日300グラムほどしか投入できないが、できた堆肥は農家の畑へ。 この「ゴミケシ君」なかなかの優れもの。匂いはないし、液肥も出ない。
もうひとつは、店先に設置してある太陽電池と小型風力発電機で作った電気で「電気式の生ゴミ処理機」を動かして半堆肥化。鈴木牧場の堆肥化装置へ。
厨房から出る生ゴミは手間をかければ、多くの人との協力によりまた土へ返す事ができるのだ。 家庭でもひと手間かけるときっと出来る事だと思う。土へ返す事でまたそこから生命が生まれる、その生命が食材となり食べられ、また生命がつながる。 地域で食を通した循環型社会ができると生ゴミは減る。
次にお弁当につきもののお弁当箱は「リユース」と「マイ弁当箱」を呼びかけた。 マイ弁当箱は 自分でお弁当箱を2つ用意してもらい、繰り返しお弁当箱を使うシステム。環境への意識の高い方が積極的に利用している。 リユースの弁当箱はこちらで用意したものを使ってもらい、回収してまた使うシステム。
回収した弁当箱は洗うのだが、この回収した弁当箱に食べた人の意識が見え隠れする。 洗って返却してくれる方がほとんどだが、いつも弁当箱に大量のゴミをつめてきたり、ペットボトル、ビニール類、残飯まで一緒に返却してくる人も…。 ゴミの分別の意識なんてない人の多い職場がどこなのかもわかってくる。
最悪はリユースの弁当箱を捨てられる事。リユースという単語を知らなかった人もいる。 「リユースは不潔」と言っていたOLさんも、最近はリユースの弁当箱で常連さんになってくれた。 お弁当を食べていただきながらメッセージが少しずつ伝わってきたかも。 食を通した循環型社会は自然の流れのなかで、昔はあたり前のことばかりっだったのだ。
最近、「環境(地球)に優しい食を考えると、人間の体にも優しい。しかも美味い!」と実感。 環境問題!!といっても、一個人として何をどう関わっていくかはナカナカ難しくて…とおっしゃる方々、とりあえず、この弁当を食ってみて!
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