フォーラム 「循環型社会への挑戦」

動き出す 『循環型社会形成推進基本法』

 

  環境庁が主催するフォーラム 「循環型社会への挑戦」 が2000年10月27日に東京・日本都市センター会館 コスモスホール、続いて11月 7日に大阪・毎日新聞ビル オーバルホールにて開催されました。
 このフォーラムにパネリストとして 『ごみ・環境ビジョン21』 の運営委員である 吉崎 洋子(東京会場)、 服部 美佐子(大阪会場)が参加しました。
 大阪会場の内容をダイジェストでお届けします。


 基調講演 「動脈経済と静脈経済の統合」 
群島 孝(同志社大学経済学部教授)
 

 リサイクル社会と循環型社会の違いは、ごみが出てきた後始末として事後的に考えるか、ごみが出ない始末をしていくのかという違い。動脈産業を静脈産業の中に融合させていく、動脈と静脈が一体となった社会を作っていくのがドイツの循環型社会で、後始末ではなく始末をするということである。
 循環型社会ではリサイクル量を増やすと同時に、分母のごみの総量を減らす対応を求めていくことになる。
 循環型社会の特徴は役割の変化。自治体が出てきたごみを処理する、リサイクルする形ではなく、消費者と生産者がごみを管理する主体になる。生産者も廃棄の段階において責任の一端を担う拡大生産者責任を、また消費者に排出者責任を求める。

 


法律解説 「循環型社会形成推進基本法」
 伊藤哲夫(環境庁水質保全局企画課海洋環境・廃棄物対策室長)
 

  廃棄物が大量に発生し続けている。
一方で最終処分場の立地が困難になり、不法投棄の件数が増加している。
廃棄物・リサイクル対策は一刻の猶予も許さないため、基本法と個別法の成立に取り組んだ。循環法は廃棄物・リサイクル問題に、焦点を当てた。
 生産者は製品の特質に応じて、地方公共団体や国民との役割分担の下で、その製品を引き取り、あるいは引き渡し、自らリサイクルする。すべてではなく、できるもので義務を果たしていこうというのが拡大生産者責任の考え方。

 


 法律解説 「廃棄物の適性処理とリサイクルの推進について」 
柏谷昭博(厚生省生活衛生局水道環境部広域計画室長)
 

 廃棄物の不適正な処理が続いている。
不法投棄が急増し、原状回復しようにも、業者が判明できず、資力もない。こうした背景で廃掃法は、排出事業者責任の徹底、マニフェスト制度の強化、処理業者、処理施設の許可について規制強化などの改正を行なった。また、公共関与による安全・適正な施設整備の推進を図った。
 建設廃棄物リサイクル法では、分別解体と再資源化を進めるのが目的。解体事業者の登録者制度も設けた。規定、政令や省令を準備中。

 


法律解説 「資源有効利用促進法」
 山内輝(通商産業省環境立地局リサイクル推進課課長補佐)
 

 一般廃棄物の食品、容器包装、家電以外のもの、産業廃棄物の建設、食品以外の製造業、電機関連というのを一手に面倒を見るのが資源有効利用促進法。
 車では、リデュースには部品を少なくする、製品が交換し易すくするなど製品を作るときの対策と部品のリユースがポイントである。

 

◇ パネルディスカッション 「循環型社会への挑戦」

 コーディネーター
  小林康彦(財団法人日本環境衛生センター 専務理事)
 パネラー
  伊藤哲夫(環境庁水質保全局企画課海洋環境・廃棄物対策室長)  
  服部美佐子(ごみ・環境ビジョン21運営委員)
  寺下晃司(生活協同組合コープこうべ環境チーム)
  小寺卓郎(松下電器産業滑ツ境本部)
  西川富久子(京都市地域女性連合会常任理事)
 


自己紹介と問題提起
 

【服部】
 処分場問題を通じて、出たごみの処理処分という対処療法では解決しないと気づいた。
 自治体に押し付けられている廃棄物の元である製品の価格に処理・リサイクルコストを上乗せする。
製品の利便性を買う消費者が価格で負担する。それが実効性のある「拡大生産者責任」。循環法に「拡大生産者責任」が含まれていると言っても、実効性がない。
【寺下】
 生協として、循環型社会と言う切り口では、具体的に「マイバッグ運動」と店頭での容器回収や再生品の普及に取り組んでいる。
【小寺】
 グリーンプロダクツ(環境配慮商品)として、製品アセスメント、グリーン調達、回収の仕組み、有害物質排除などを考えている。先程、拡大生産者責任についてコストの内部化というお話があったが、売れないという問題がある。

 


循環型社会とは何か
 

【伊藤】
 直近の課題である廃棄物に焦点を当てた。
【小寺】
 物質エネルギー量についてはライフスタイルアセスメントの手法を取り入れたい。
【寺下】
 製造・販売・消費・廃棄をどうつなげるか。
【服部】
 省庁の説明は循環型社会ではなく、大量リサイクル社会という印象。環境に配慮した経済、物作りに変える。覚悟した転換が必要。
【西川】
 「もったいない」をいかす社会。

 


循環型社会実現の手段
 

【小寺】
 長期使用と、ものから機能へ、という二極を想定し、そのような仕組みを作る。
【服部】
 容リ法は、事業者負担が少なく、リサイクルが免罪符になっている。ダイオキシン規制を名目にした広域化は循環型社会に逆行する。
【寺下】
 環境に良い物がコスト的にもメリットがあるよう法律や規制などで社会コストの転嫁を。
【服部】
 製品にコストを内部化し、環境に良い製品作りにしていくのが最短の方法。
【寺下】
 リターナブルビンは事業体だけでなく、市民が市民に広めることも重要。
【小寺】
 将来的な取組みを社会全体が認識できる、優遇税制などインセンティブや仕組みが必要。
【西川】
 再生紙は値段を安くするなど価格が重要。
【伊藤】
 容器包装リサイクル法でペットボトルが増えたのではなく、国民の嗜好が水とお茶を求めている。市町村は分別収集を自分たちにやらせろという議論があった。
 EPRは生産者が廃棄までの一定の責任を負うということだが、処理費用はその材を使って便益を得た方が負担する。それが経済原則。(法律は)やってみてだめだったら、変える。

 


ま と め
 

■ 紙面の都合上、一部分のみ抽出しました。部分的ですが、学識者、省庁、企業、市民、各見解の相違が表れています。
■ 法策定過程では、ほとんど国民からの意見聴取はありませんでしたが、「基本計画は国民的な議論をしながら決めていく」と環境庁の伊藤さんは述べていました。
■ しかし、発言内容から分かるように、循環法は廃棄物政策の一環でしかなく、拡大生産者責任と処理費用は切り離して考えているなど、決定的な違いがあります。
■ このフォーラムでその違いがより鮮明になったと言えます。

当日のパネルディスカッションは「月刊廃棄物2001年@」に掲載されました。鞄報アイ・ビーの許可を得て、
ごみかんホームページに全文を掲載しましたので、ご覧ください


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