「森林大国」日本の資源循環は、木材の
多段階活用から


 自然エネルギーグループ「萌」と東京マイコープ環境委員会が開催した学習会・見学会で、環境自治体会議の専門委員の大場龍夫さんからお話を伺いました。
 「本気で循環型社会を目指すなら、日本では森林の活用がかなめになる」と強く感じた学習会でした。

 昨年11月に行なわれた地球温暖化防止の国際会議では、日本政府が森林のCО吸収量を大幅に算定しようと画策してEUと対立しましたが、実際、日本は、国土面積に占める森林率が67%とスウェーデン並みの森林大国なのです。(ちなみにドイツ29%、イギリス9%)
 林業や、紙パルプ産業が盛んなスウェーデンでは、大量に出る間伐材や木の枝などの林地残材を燃やして温水をつくり、配管を通して各家庭に送る地域暖房施設が進められているそうです。
人口が少ない地域には、製材所から出る端材や樹皮・鋸くずなどを粉砕して棒状に固めたぺレットを供給しています。
ごみ大学でレーナさんがスライドで見せてくださったのが、この木質ペレットのストーブです。
 寒さが厳しいスウェーデンでは冬の暖房をなにでまかなうか、がエネルギー政策の決め手になりますが、今までの石油や電力(水力や原発による)から、この木質資源に変えて、再生可能なエネルギーへの転換が進展しました。
 スウェーデンでは、1991年に化石燃料に炭素税をかけて以来、バイオマス(生ごみや家畜の糞尿・木の枝など、生物をもとにする廃棄物)が、コスト面でも有利になり、一次エネルギーの22%をまかなうところまできているということです。
 EUでも再生可能エネルギーを2010年までに現在の6%から12%にする計画を進めていて、そのうちの7割をバイオマスが占めています。

 森林資源は、太い良質材は建築や家具の用材に、並材は集成材に、低質材は紙パルプの原料に、その他の樹皮や枝などはエネルギー資源に…と多段階に使うことができます。
人工林は適切な手入れをしながら活用することで、健全に保つことができるのです。
 日本の利用可能な森林資源の成長量は年間約1億mとみられています。
日本国内の需要量もほぼ同じなので、計算上は日本は建築用材や家具、紙の原料などの自給が可能ということになります。
しかし実際には、利用可能量の2割しか利用されず、あとの8割は輸入に頼り、東南アジアの熱帯林等を破壊してきました。
 それは、外国材の方が価格がずっと安く、国産木材が太刀打ちできなかったからですが、そのため国内の森林は伐採されれば伐りっぱなしで植林されず、表土が流失し地崩れを起こしたり、間伐などの手入れもされず、放棄された森林が増え、国土の荒廃を招いています。

 東京都林業試験場の見学では、木質ペレット・ストーブの実物を見せてもらい、都も木質バイオマスエネルギー利用の研究を行っていることを聞きましたが、全く微々たるものに過ぎません。無駄で、自然を壊す公共事業に金と手間をかけるなら、同じ土木業ならその分を森林の手入れに回せば、経済も自然も循環するだろうに、と目の覚める思いでした。



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