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はじめまして!

ごみかん

ドイツ特派員です

 このたび、ごみかんのドイツ特派員となりました田口理穂といいます。ドイツにきて4年半になり、現在は北ドイツのハノーファーで大学に通っています。

 このコラムでは、一市民の目から見たドイツのごみ事情や環境政策について、日常生活のようすをまじえながらお伝えしたいと思います。

 どうぞ長いおつきあいを・・・・・・・。

 

ごみっと・SUN 22号
第1回 アパートを4人でシェアしています

 私は貧乏学生なので、アパートを4人でシェアしています。各人が8畳弱のスペースを自室とし、台所とバスルームは共同です。現メンバーは、大学準備コースに通う リトアニア人のターヤと、ドイツ人家庭で住みこみお手伝いさんをしているため週末しか来ない、これまた リトアニア人のリーナ、そして唯一男性でフリーターのドイツ人のティノです。
 男女国籍ごちゃまぜの、このような共同生活はヨーロッパでは、特に若者の間でごく一般的です。家賃は安く上がるし、寂しくないというわけです。
 とはいえ、あかの他人が4人一緒に生活すれば、何かしらトラブルも生じます。誰が掃除をさぼったとか、人のパンを食べてしまったとか。

 ごみの分別もそうです。古紙、ビン、生ごみ、プラスチックの包装容器類、家庭一般ごみ・・・・・・の5種類に分けていますが、守られていないこともしばしばです。先日も、1カ月ほど日本に帰省している間に、プラスチック類と家庭ごみが一緒にされていました。
面倒だから、というのが同居人たちの弁です。以前いた高校教師もそうでした。ジャムが入ったままのビンや学校のプリントも一緒!
 そのときは自然保護団体に勤務する女性も同居していましたが、彼女は完璧に分別を実行していました。ドイツ人は環境意識が高い、と一般に言うけれど、個人差はあるようです。

 しかし、例えばビンはリユースが主流で、使い捨ても茶色・透明・緑色と分けるところはさすが環境先進国です。社会的な基本レベルが、やはり高いんですね。だから皆、重いジュースや水のビンを黙々と運ぶ。買うときと返すとき、二重の労働になりますが、当たり前にこなしています。さすが力持ちのドイツ人!

 私もリュックを担いでスーパーに行きますが、いつも大仕事です。ドイツではふつうの事が日本人にはエコに映る、ということでしょうか。
 (P.S ごみっと・SUN21号の「家電リサイクル法」の特集を読みましたが、ハノーファーでは「自然に優しい電気製品」を買うと、市から数千円の現金補助がでます。ヨーロッパと日本では対照的ですね。)


ごみっと・SUN 23号
第2回 北ドイツ・ハノーファー市の生ごみ

  私の住む北ドイツのハノーファーでは、市が生ごみを別個に回収し、堆肥化しています。1994年から一部地域で段階的に導入され、1999年末から全市で実施しています。専用の家庭用容器「ビオボーイ」は無料で支給され、アパートの建物入り口には大きな生ごみ専用ごみはこが置かれています。市が2週に1度回収し、80リットルサイズのごみ箱で11.6マルク(約700円)、120リットルで16.7マルク(約1,000円)の月あたりの処理費は住人負担。
 年間一人あたり約50キロの生ごみが回収され、1999年は全市で18,600トンでした。生ごみは市郊外に運ばれ、そこで3ヶ月かけて堆肥になります。完成した堆肥は50リットルあたり5マルク(約300円)で買う事ができ、家庭菜園用はもちろん、農家などトン単位で購入する人もいます。

 回収する生ごみは木の枝や皮、花や草、卵の殻、野菜皮、木屑、コーヒーかすとフィルター、落ち葉、ナッツの皮、茶の葉、キッチンペーパーなどを指しますが、情報がいき渡っているせいか、異物混入などの問題はほとんどないそうです。
 ドイツでは市や州の裁量が日本に比べてずっと大きく、ごみ処理方法も地域によって異なります。例えばブレーメンでは焼却していますが、ハノーファーは焼却はまったくせず、リサイクルできないものは埋め立てになります。ここは平らな地なのですが、大きな穴を掘って埋め、表面に盛り土をして芝を植えます。
 郊外を走っていて不自然な小高い丘があればその下はごみです。ごみを減らさなければ、郊外はごみの山だらけになってしまう。ごみ山が目に見えることで、警告の役割も果たしているのです。

 生ごみはごみ総量の30〜40%にあたるといわれていますから、生ごみの堆肥化はごみ減らしに大いに貢献しています。
 うちの同居人たちもよく料理をしますから、ビオボーイはすぐいっぱいになります。誰が階下のごみ箱に捨てにいくか、いつももめるのですが。


ごみっと・SUN 24号
第3回 核廃棄物

 ごみといえば核廃棄物もそのひとつ。ドイツでは3月末、4年ぶりにカストル・トランスポートと呼ばれる使用済み核燃料の輸送が行われました。ドイツの使用済み核はフランスのラハクで処理された後、再びドイツに戻ってきますが、これがカストルです。85トンの核のごみを入れたカストルの容器6個は、北ドイツのゴアレーベンにある暫定保管所に運ばれました。

 この輸送は1995年以来、4度目ですが、核政策反対の象徴として毎回大規模なデモが全国で起こっています。反対する市民たちは道路をトラクターや材木で塞いだり、線路を占拠したりして輸送阻止を試みます。今回は16歳の女子高校生を自む4人が線路に自分自身をコンクリートで固め、17時間列車を遅らせました。
 その少女は体が冷えすぎたため、掘り出された後病院行きとなりましたが、反核運動のヒロインとして新聞で大きく取り上げられました。

 約1万人のデモ者に対し、1万8千人の警官が導入され、その費用は2200万マルク(約13億5千万円)にのぼりました。暴力的ないざこざで負傷者も出ました。グリーンピースによると輸送中の放射線量は政府の予告よリ17倍大きなものでした。すでに14個のカストル容器がゴアレーベンにありますが、2011年までに157個がフランスやイギリスから戻ってくる予定です。
現在、使用済み核の永久保存場所を探しており、地中にある巨大な塩岩に埋め込むという案が有力ですが、安全面で疑問が残っています。

 以上、カストルについて概要を書いたらいっぱいになってしまいました。緑の党が連立政権で与党になったとき、脱原発を法案化しましたが、それも今は危うくなっています。誰だって核を近所に持ちたくないから、最終保管所選びも難航する。核廃棄物を他国に押し付けるわけにはいかないし、自国に戻ってくるのを阻止したからといって原発がなくなるわけてはないとわかっています。ではどうすればいいのか。カストルは、核政策の根本的な見直しな迫る契機となっています。


ごみっと・SUN 25号
 第4回 学生寮のゴミ問題

 このたび引越ししました。以前は学生4人でアパートをシェアしていましたが、今は学生寮に住んでいます。といっても、留守にしている友達のところに居候している状態なので、ここには2ヶ月だけです。この寮は2〜4人用のアパートになっていて、台所、トイレ、シャワーが共同です。私の同居人はドイツ人と、ドイツ国籍を持つトルコの少数民族出身者で、ともに男子学生です。
 台所はいつも散らかっていて、空き瓶と食器が山積みになっています。寮の中庭には大きなコンテナーがあり、生ごみ、プラスチックごみ、古紙、一般可燃ごみは分別していつでも捨てられるようになっているのに、この散らかりよう。いいのかなあと思いつつ傍から見ています。

 私の住む北ドイツのハノーファーでは、可燃ごみと古紙は週一回、生ごみとプラスチックごみは二週に一度、回収されます。普通はアパートの建物ごとに、大きな市指定のコンテナーが置かれています。コンテナーの下部にはこまがついており、回収のおじさんたちはずるずる引っ張ってごみ収集車に持って行きます。
 所定の位置にコンテナーを置くと、電動で持ち上げられひっくり返され、ごみは車の中に落ちます。おじさんたちはまたコンテナーを引っ張ってもとの場所に戻します。日本のように人力で持ち上げるわけではなく、効率的です。

 最近日が長く、夜10時ころまで明るい。今のうちに太陽を吸収しておかなければ、とこっちの人は思うらしく、芝生で日光浴をしたり、バーベキューをしているのをよく見かけます。しかしその後、わりとごみは捨てられっぱなしになっています。
 学校でも生徒は掃除せず、専門の人を雇っています。そのせいか捨てる人、片付ける人が分かれている感じ。
 街にごみがあまり落ちていないのは、集める人がいるからです。自分の部屋はきれいに保ちたいけれど、共同の場が汚くても関係ない、という人はたくさんいます。日本と同じですね。


ごみっと・SUN 26号
第5回 包装や容器のリサイクル

  こちらでは、製品の包装や容器に小さな緑のマークが付いています。これはグリューネプンクト(緑の点)と呼ばれ、リサイクルを意味しています。商品から出るごみは製造者責任で処理すべきだと、1993年、製造者が合同出資して“ドゥアル・システム・ドイツ”(D・S・D)を設立。対象は、チョコレートのアルミ箔、ジュースの瓶やペットボトル、歯磨き粉のチューブ、空き缶、ヨーグルトの容器など多岐にわたります。瓶類以外は、ゲルベザック(黄色い袋)に集められ、2週に一度、委託を受けた市が回収します。
  この袋はスーパーなどに置かれており無料です。ごみはまた別の委託会社で分別、さらに別の委託会社で処理されています。ハノーファーは人口約50万人で、一人あたり毎年約20キロのザックのごみが出ています。
  回収されたザックの中身は、ほとんど手作業で分別されます。ハノーファーでは昨年のエキスポをきっかけに国内初の自動分別機が導入されましたが、現在故障中だそうです。古新聞など紙類が多く混じっていて迅速な処理の妨げになっており、コスト増の原因になっています。

  また以前はデポジット瓶が主流だった飲料の容器にプラスチックボトルが大量に出回るようになり、リサイクル量が増えています。増えているのは、人々のリサイクル意識の高い証拠という見方もありますが、それだけリユースの瓶の利用が減っているということ。リサイクルするからいいじゃないか、という論ではごみ全体の量は減りません。
  それでも、ドイツと比べフランスやスペインでは圧倒的に瓶が少ない。来年から共通通貨ユーロが導入され、西ヨーロッパではますます国境がなくなってきます。外国資本が始めれば、それに追随しないと乗り遅れてしまう。
ドイツなりの環境に対する信念を貫くのは容易ではないということでしょうか。便利な生活がいいという時代の流れ。政府は空き缶にもデポジット制を導入しようとしてますが、業界から猛反対にあっています。ガソリンに環境税を導入するのと同様、環境にいいとわかっていても理想論だけでは市民の理解を得るのは難しいようです。


ごみっと・SUN 27号
第6回 ドイツのお洗濯

  洗濯…ドイツでは温水でするのが普通です。洗濯機は、普通30度から95度まで温度調節できるようになっていて、白いものは60度、色物は40度というふうに分けて洗います。
 洗剤を色によって使い分けている人もいます。私はディスカウントショップの洗剤を使っており、安いけれど消費者テストで良品の太鼓判を押されたもの。白物も色物もいっしょくたに洗っていますが、問題ありません。色物は高温で洗うと色あせが早いから低めで、シーツやタオルは高温でと、いろいろ技があるようです。
 洗濯には少なくとも一時間、洗濯機によっては2時間近くかかることもあります。日本に来たドイツ人に、日本の洗濯機は水洗いの上、時間も短いけれど汚れは本当に落ちているのか、と聞かれたことがあります。それほどドイツは長くかかります。
 水は硬水で、排水ポンプ破損の原因になるため、塩を加えて中和します。洗濯物がこわばりやすいため、柔らかくする液体を加える人も多くいます。
 アパート住まいの場合、洗濯物は外でなく天井裏や家の中に干します。景観を損なうし、冬は曇ってばかりで太陽を見るのは一週間ぶりというような気候では、外に干すことはあまり意味をなさないのでしょう。表通りにプライベートなもの、洗濯物をさらすのは恥ずかしいという考えもあります。
 太陽光線のかわりに温水が、殺菌効果の役割を果たしているのです。空気が乾燥しているため、洗濯物の乾きが早いというのも一因です。
日本では青空の下にはためく洗濯物は家庭の幸せの象徴という感がありますが、これも生活文化の違いでしょうか、ドイツではあまり見られません。


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