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はじめまして!

ごみかん

ドイツ特派員です

第 2 巻

 

ごみっと・SUN 28号
第7回 電力源を選んで電気が買える ♪

  2001年も終わり。この原稿が出る年明けにはいよいよヨーロッパでは共同通貨ユーロが街に登場です。ドイツマルクが消えてしまうなんてなんだか信じられないような。次号はユーロについてご報告したいと思います。
 今回はハノーファーの環境センター(Umweltzentrum)について。ここには市の援助を受けて、20あまりの自然や環境にやさしい組織が拠点を構えています。例えばグリンピースや自然保護団体ブンドが支部を置き、太陽エネルギー促進団体や自動車のシェアをする団体など地域のグループもあります。これらの事務所では訪れた人に情報を提供したり相談にのるほか、催しをして環境やエネルギーに対する新しい視点を市民に提供しています。
 その中のひとつ、「緑の電気」についてご紹介します。この団体は水、風、バイオガス、太陽によって製造された電気を市民に供給する橋渡しをしています。ドイツでは1999年の法改正により、消費者は電気供給事業者を選べるようになりました。北のハノーファーに住んでいても、南のミュンヘンの電気事業者から電気の供給を受けることが可能です。別の業種からの参入もあり、自由競争が生まれました。
 電力源別に選べるのもサービスのひとつ。例えば原子力30%、火力50%、太陽20%と組み合わせることもできます。ちなみに原子力や火力に比べ、自然エネルギーは2割ほど高くなります。
 「緑の電気」は自然電気の良質な製造者と、それを家庭に届ける経済的な配給事業者と、消費者を結ぶ役割を果たしています。2年半前にできてから全国に消費者会員は1,400人おり、増加の一途をたどっています。配給者にとってこの団体は大口顧客ですから、消費者は個人で配給を受けるより、この団体を通した方がキロワットあたり2ペニヒ(約1円)安くなります。
 原子力からの全面撤退を4年前に決めたドイツですが、社会民主党と緑の党の連立政権が危うくなるたびに持ち出される改正案。ごみのでない自然エネルギー促進のため、国は自然エネルギーの買取保証をするなど尽力しています。国の政策と市民の意識が一致してこそ改革は進むというもの。「緑の電気」のような地道な努力は、欠かせません。

《田口理穂 ハノーファー大学学生 ごみかんドイツ特派員》


ごみっと・SUN 29号
第8回 「 ユ ー ロ 登 場 」

  今年の元旦よりヨーロッパでは共同通貨ユーロが流通しています。導入の瞬間には、大蔵大臣が秒読みしてお祝いしている様子をテレビでやっていました。Euroと書いてドイツ語ではオイロと読みます。
 ドイツでは2月末までマルクも使用可能ですが、多くの人が、銀行に殺到して手持ちのマルクをユーロに換金。1月半ばにはほとんどマルクは見かけなくなりました。

 1ユーロ=約19.6マルクなのですが、ユーロ導入をきっかけに、レストランや商店の多くで値上げが行われました。店頭にはユーロの代金しか表示していないところがほとんどで、金銭感覚ができていない消費者にはとっさに、高いのか安いのかわからない。
 例えば3.99マルクだったものは、計算どおり2.04ユーロになるのではなく、いつのまにか2.29ユーロという札が付いているというふうに微妙に高くなっているのです。  マルクで買い物してもお釣りはユーロということで、ユーロの流通は促されているのですが、ある大手衣料雑貨店では、つり銭不足解決のため、カード払いには20%引きを打ち出し、裁判で違法と判定されました。

 考えてみれば、元旦から一斉にヨーロッパ中で、さらっぴんのお札とピカピカのコインが出回り始めたわけで、すごいことです。戦後からあったマルクは消えてしまった。小学生くらいの子どもが大きくなったとき、そういえば小さいころはマルクなんてあったな、と思い出したりするのかしらと思います。
 派手な滑り出しを飾ったユーロだけれど、金色が基調のコインはなんだかおもちゃみたいで、マルクの銀色の渋さが恋しくなる。ドイツ在住6年弱の私がそう思うのだから、お祭り騒ぎが収まった今、マルクとともに育ってきたドイツの年配の人たちはもっとノスタルジックな想いを持っているようです。

《田口理穂 ハノーファー大学学生 ごみかんドイツ特派員》


 

ごみっと・SUN 30号
第9回 「 ソーラー週間 」

  ハノーファーでは5月3日から30日、4週間に渡ってソーラー週間でした。環境センターという団体の主催で、市や市電力公社、ソーラーパネルの会社など、さまざまな環境保護団体や企業が参加し、期間中は市内と近郊市町村で、ソーラーエネルギーや省エネについての相談所や講演会、討論会が開かれました。

一番の目玉は、日曜日に開かれたソーラーフェスティバル。市民憩いの場となっているマッシュ湖のほとりで開かれ、約30の団体や企業が参加しました。会場では、高校生が学校の省エネ運動を紹介したり、緑の党が環境保護政策をアピールしていました。

  ドイツ全国から17チームが参加したソーラーボート大会も、実際に湖を走り、人気を呼びました。このフェスティバルでは、ライブ音楽をはじめ手品やダンスもあり、いろんな年代の人が楽しめるような工夫がされています。子供向けには、太陽や自然について絵を描くコーナーもありました。

  こういうところは、ドイツは上手だな、と思います。これが正しい、と押しつけるのではなく、肩肘張らず、やっている側も楽しんでいる感がある。この分野に日ごろあまり興味のない人も、ふらっと立ち寄れるようになっています。ここで気軽にソーラーについて学び、情報収集できるほか、設置を検討している人は具体的に製品を見比べることもできます。

 ドイツは不況ですが、太陽や風力発電の分野は成長の一途をたどっており、昨年はこの分野だけで10万人の雇用が新しく生まれました。「エコロジーだけでなくエコノミー」をモットーに、ただ自然にやさしいだけではなく、経済的で市場競争力もあります。

 ドイツでは太陽発電について、キロワットあたり99ペニヒの買取価格を設定して法的に支援しているとともに、こういう草の根の活動を通じて実際面でも推進を図っているのです。

  ここでソーラーボートを見た子供たちがすごいなあと思って大きくなり、その志をつないでいくのでしょう。フェスティバルには、6,000人が訪れ、大盛況でした。

《田口理穂 ハノーファー大学学生 ごみかんドイツ特派員》


ごみっと・SUN 31号
第10回 「 学校生物センター 」

  環境といえばドイツではフライブルクが有名だけれど、ハノーファーもなかなか捨てたものではない。例えば学校生物センターでは、環境教育の多目的な取り組みを1992年から実践しています。
  同センターは市営で、市内と周辺町村の学校の子供たちが環境や自然、生物について学びにやってきます。授業に必要な用具やうさぎ、虫の学校への貸し出しや、教師対象の研修コースも実施しています。

  広さは約7ヘクタール。森林部分を始め、農園、コンポスト、生物が見れる池、ハーブ園、ミツバチハウス、小動物の飼育小屋などがあり、五感を使って体験できます。太陽熱で料理したり、自転車をこいでエネルギーを生み出したり。
  人気なのは、目をつぶって裸足で歩く自然の道。区画ごとに石ころや木切れ、砂、落ち葉などがあり、裸足で歩くことで、その違いを十分に感じることができるようになっています。
  コンポストがどのようにできていくか、材料による違いはどうかを時間を追って見られるものもあれば、温室で蛇を首に巻きつけることもできます。白、黄、赤、緑の色で分けた色の植物園では、周囲の色によって、その植物の持つ色自体が違って見えることがわかります。日曜日には家族向けの体験コースもあり、無料。

  先日、私が参加したのはリスについて。何を食べてどこで眠ってと、想像力を膨らませてリスになり切って一時間、森で過ごしました。ただの教育というより、芸術的であり哲学的でもある。
  環境教育という言葉を超えた何かがここにはあって、身近なところに自然の不思議さ、素晴らしさが潜んでいる。それが私たちとつながっている。そんなことを教えてくれる施設なのです。

 最近は日本から視察に来る人が増えているらしい。日本びいきの職員、ヨークさんの熱いもてなしのせいもあるのでしょうか。ちなみに彼は本当に自然を愛している。愛しているという言葉がぴったり。
  そういう熱意ある人によってまた、同センターは魅力あるものになっていると思います。一度訪ねてみてください。

学校生物センターの記事と写真はこちらにもあります。


ごみっと・SUN 32号
第11回 「 エコロジーなヘルマンス村 」

  ハノーファーの元万博会場のそばに、ヘルマンス村といわれる自給自足をモットーにしたエコロジーな村があります。2000年夏にごみかんの吉崎さん、江川さんがこちらにいらしたときにも案内しましたので、ごみっと・SUNでも紹介されましたが、今回はもう少し詳しく・・・・・

この村は食肉加工工業で財をなしたシュヴァイスフルト氏が、工場を売り払い、エコロジカルな農業や畜産の形態をと、1986年に南ドイツにエコ村をつくったのがきっかけ。ハノファーの同村は2つ目にあたります。
  農場を含め15ヘクタールの広さで、住民はたちたの15人だけれど、約60人が農場や食肉加工場、エコスーパー、レストランなどで働いています。
牛や豚、鶏を有機飼料で開放的に飼育し、農場も有機肥料で。排水は葦が植えられたところで浄化されます。糞尿と生ごみはメタンガスをつくり、電気と熱を生み出しています。残りは肥料になって農場に戻ります。
  大手風力会社のエネルコンが、風力とバイオマスの施設の運営をしており、社員は住民でもあります。風力発電(出力1800kW)でほ年間240万キロワット(約800世帯分)を発電しており、余剰分は電力会社ほ売っています。

  村のスーパーではオーガニック食品しかおいておらず、村で飼われている豚などで作ったソーセージやハムが人気。レストランでは地ビールとソーセージをはじめ、ドイツ料理が楽しめます。ここの地ビールは少し濁っていて、本当に絶品。
同じ建物内で醸造されただけあって、新鮮そのものです。まあドイツの地ビールはどこもそうなんだけれど。

  住民の住む棟とゲストハウスは省エネ住宅になっており、断熱効果が高く、太陽の光と熱を最大限に利用する工夫がなされています。また、飼育小屋の隣には、子供が動物と触れ合えるスペースがあり、山羊やうさぎがいます。
  この村では需要と供給、生産と消費が隣り合わせほなっており、その循環を体感することができます。村の中心の渦巻状の池は、村のコンセプトの象徴。その渦巻き模様を広げる形で村ができています。
エネルギーとごみの循環。大地とのつながり。分業の進む世の中で、エネルギー、ごみ、生産の全体像を見れる場所として多くの人が訪れています。場所としては街からそんなに 遠くはないけれど、交通公共機関がないため、少じ辺鄙な印象を受ける。
その分、静かで夜は星がよく見えます。


ごみっと・SUN 33号
第12回 作業学校 [Warksttschule]

  トルコ人にドイツ語を教えていた先生たち8人が失業をきっかけに1983年、手に職を付けられる実践的な学校をと団体を設立して、始めたのがこの「作業学校」です。
いまではハノーファーに3校あり、今日ご紹介する市北区にあるこの作業学校は別名リサイクルセンターともいい、その名のとおり、リサイクルをはじめ、二輪車修理、電気技師の3種類の職業訓練コースがあります。

  訓練期間は3年。リサイクルに9人、二輪に12人、電気に20人の生徒たちがいます。
リサイクリングでは地域の人が粗大ゴミや生ゴミ、古紙などを持ち込むことができます。持ち込まれた洗濯機や電気調理器など大型電気製品は、生徒たちがじっくり解体します。

  部品は使えるものは保存し、あとは素材ごとに分別して業者に引き取ってもらいます。ドイツでは、修理しながら使えるものは長く使うのが一般的ですから、部品の換えが近所で気軽に手に入るのはありがたいことです。

  ここの生徒たちのほとんどは普通高校を中退し、学校に復学するのも就職するのも難しい子どもたちです。だからコースごとに、担当教員と管理人そしてソーシャルワーカーの3人体制で指導にあたっています。 学習だけでなく、来た人への応対を始め、生活態度の基本を学ぶことができます。

  同校は雇用促進プログラムの一環として、運営費は職安から出ています。コンポストもあり希望者に分けているほか、リサイクル用品を利用したバザーや、中古自転車の格安販売もしています。
小学校や養護学校の生徒たちの社会見学の場にもなっており、古紙を利用したオブジェの体験教室は人気。洗濯機の水槽を利用して机を作るなど、個性的な作品も反響を呼んでいます。

地域とのつながりを大事にした、学校であり作業場なのです。
  ますます不況が進む中、9月22日の総選挙では社会民主党がどうにか優勢を保ち、緑の党との連立政権続行が決まりました。
普通の職がないばかりでなく、若者の研修の場がないことも大問題になっているドイツ、将来を担う若者に、技術だけでなく自信と生き方を教える、同校のような存在が欠かせません。


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