ビールまでペットボトル!

アサヒビールへの公開質問状

 

  アサヒビールは7月8日、酸素や光を遮断する新型ペットボトルを開発し04年内に発売すると
発表した。
従来のペットボトルではビールの味を損なうので、ペットボトルの内側に酸化ケイ素の膜を作り、
紫外線をカットする特殊フィルムで外側を覆うとのこと。

  投げ捨てられたペットボトルの散乱やごみ量の増大、膨大な自治体のリサイクル費用負担など問題の多い容器包装材。
それを受けて「容器包装リサイクル法」の見直しが始まろうとしている矢先、トップメーカーである
アサヒビールからこの様な発表があった。
  おしゃれな容器に入れれば若者向けを中心として販売は伸びるであろう。
しかし、社会経験の少ない若者の飲酒による種々な問題や環境汚染の問題が一層増加することが、容易に想像できる。
  業界最大手のアサヒビールとして社会的な責任をどの様に考えているのであろうか。
潜在的な欲望を刺激し(作り出されたニーズ)、競争会社を圧倒し金儲けのみを考えているとしか
思えない。
そこで以下の質問状を送りました。


アサヒビール株式会社社長 殿
2004年7月12日
NPO法人 ごみ・環境ビジョン21
理 事 長  田 浪 政 博
公 開 質 問 状
 
  猛暑の候、貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
私たちは、「ごみ・環境ビジョン21」という、ごみ問題を主なテーマに活動しているNPO法人です。特に、家庭ごみの約6割を占める容器包装類については、現在、容器包装リサイクル法の見直しに向けて、活動に力を入れているところです。
  この点からも、貴社が年内に販売を予定されているという「ペットボトル入りビール」は、大変問題が大きく、また社会的にも、これがアルコール飲料だけに、特に未成年などの若年層にも多大な影響を与え、ごみ容器の散乱に拍車をかけることにつながると懸念いたします。
  さらに問題なのは、現在でもペットボトル容器は、ラベルやふたと本体の材質が異なり、自治体の中間処理場ではふたを一つ一つ手選別するなど、リサイクルにかける手間や収集コストに大変苦慮している現実がある中で、今回の新容器は、特殊なコーティングやフィルムを使用し、いっそうリサイクルを阻害する要因になると考えます。

  以上のことから、ビールというアルコール飲料を「軽くて自由な形のおしゃれな容器」で販売することについては、反対の表明をすると共に、貴社の企業理念にもつながることと思いますので、以下の事項について質問いたします。
生産者・販売者としてのお考えをお聞かせください。

.消費者ニーズがあっての新容器の開発なのでしょうか。
ビールをペットボトルで飲みたいという消費者ニーズに関する資料がありましたら、ご提示ください。

.ペットボトル容器については、資源削減(軽量化)やカラーペットボトルを透明に変更する
など、業界挙げての改善がされてきたと認識しております。
また、貴社におかれましても、「アサヒスタイニー」などリユースびんビールを販売するなど環境に配慮した企業姿勢を高く評価しております。
この度の新容器の開発と販売は、こうした流れに逆行すると思いますが、いかがお考えでしょうか。

.新容器は、通常の清涼飲料容器のペットボトルと同様なリサイクルが可能なのでしょうか。

.容易に持ち運びができ、長時間かけて飲めるペットボトル容器を、ビールに使用することに
ついて、社内ではどのような議論がなされたのでしょうか。
また、なされなかったのでしょうか。

.貴社が扱う飲料類の、びん、缶、ペットボトルの容器別・販売比率、将来ビジョンについて
お聞かせください。


− 以上 −

  恐れ入りますが、7月20日までにご回答ください。
また、ご回答内容は、公開させていただきますのでご了承ください。


そ の 後 の 経 緯
 
9月30日 「発売は当面見合わせる」との回答!
 
@公開質問状は7月12日に作成、直ちに送付

A何度も電話などにより督促しているが、誠意ある対応無し
  関連部門と調整中と一日延ばしの回答のみ、現在は9月まで待って欲しいとのこと。

B9月13日付けで回答の延期通知がFAXで送られてきた
  文面は以下の通り、冒頭の挨拶文を除いて掲載します。

  さて、弊社が発表させていただきました「PETボトル入りのビール」につきましては、貴殿より頂戴いたしました質問状をはじめ、お客様から多数のご意見、ご要望を頂戴しております。
連絡させていただきましたように、9月上旬には回答できるよう鋭意取り組んでまいりましたが、本件につきましては、現在、社内にて発売にかかる詳細内容の検討を重ねている段階であり、まだ、全てのご質問には回答いたしかねる状況でございます。
  お約束の期日を過ぎており、誠に申し訳ございませんが、詳細が決まり次第、速やかに回答させていただく所存でございますので、何卒ご賢察の程、宜しくお願い申しあげます。
敬具
アサヒビール株式会社 環境社会貢献部

C 9月30日に「発売は当面見合わせる」との回答があり、同時に新聞発表もあった。

回答文を下記に掲載します。
  質問状の内容に対する回答が示されなかったのが少し残念ではあるが、「発売は当面見合わせる」との回答があったので、抗議活動は大成功に終わった。
皆様のご支援に感謝します。
  回答が遅れたのは社内の推進(商売優先)派と慎重(環境優先)派との激しい議論のあったと想像している。
「当面見合わせる」とのことで当面は、同業他社もペットボトル入りのビールの発売は無いであろう。これで安心してはいけない、懸案となっている「容リ法」の改正に向かって力を合わせていきましょう。


回 答 文
 
  弊社は、PETボトル容器の利便性等に着目し、PETボトル入りビール商品の実用化を可能にし、本年中の発売をめざすことを7月上旬に発表いたしました。
今回の開発は、長年の研究成果により、PET容器の課題とされてきたガスバリア性(酸化耐久性)、遮光性を大幅に向上させるとともに、一般のPET容器同様にリサイクル可能な容器素材とすることで、ビールでの実用化を可能にしたものでございます。

  発表後は、多くのお客様から予想を上回る反響を頂戴いたしました。
この大きな反響から、弊社では、弊社のPETボトル入り容器入りビールの新商品発売をきっかけに、アルコール市場においても、PETボトル容器の普及が当初予測していた以上に加速し、順調に機能している現行のPETボトルのリサイクルシステムに多大な影響を及ぼす可能性を懸念し、発売について更に慎重な検討を重ねて参りました。
その結果、本年中に計画していたPETボトル容器入りビール新商品の発売につきましては、当面見合わせるという判断にいたりました。

  以上のような経緯のため、貴殿からのご質問状への回答が遅れましたことを改めましてお詫び申し上げますとともに、当分書を持ちまして、回答に代えさせていただきたく、よろしくお願い申し上げます。


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