ごみかん見学会 報告


久喜宮代衛生組合・生ごみ堆肥化施設
「大地のめぐみ環境センター」
開催日 2003年 5月13日

  ある日、偶然つけたテレビのニュースに、生ごみ堆肥化施設の稼動式の模様が放映されていた。9,000世帯の生ごみを回収して堆肥にする、というアナウンスに「すごい、どこだろう」と思わず身を乗り出すと、“久喜宮代衛生組合”という聞き償れた固有名詞が耳に飛び込んできた。

  ごみ問題に取り組んでいる人には、 “久喜宮代”は、プラスチックの分別に早くから取り組み、焼却炉の排ガスのダイオキシン値を大幅に減らしたことでよく知られている。「今回は生ごみか、これは一度見に行かなければ!」ということで、久々のごみかん見学会を企画した。

玄関前で記念撮影
  5月13日、総勢26名の参加者は、宇都宮線久喜駅に集合したあと昼食をとり、タクシー7台を連ねて、いざ久喜目代衛生組合へ。車で5分ほど行くと、のどかな田園風景が広がる中に、目指す建物が見えてきた。

  広い敷地内にはし尿処理施設、焼却施設、資源物の中間処理施設、剪定枝資源化施設、プラスチック固形燃料化施設などがあり、川を渡った向こう側に、今回の目的の生ごみ堆肥化施設がある。
「大地のめぐみ循環センター」というネーミングがいい。さっそく、会議室で生ごみ堆肥化処理の流れ図で堆肥化プロセスの説明を受け、ビデオを見た。

  ごみ減量、リサイクルの推進をスローガンとして「げんりょう(原料・減量)化大作戦」を掲げ、日本一のごみ処理行政を目指す、とパンフレットにあるように、生ごみも「台所資源」と呼んでいるという説明に、まずこの事業に対する意気込みが感じられた。

生ごみ回収から堆肥ができるまで

  久喜市と宮代町の約8600世帯のモデル地区の家庭では、週2回、集積所に生分解性プラスチック(とうもろこしのデンプン等が主原料で、99%水と炭酸ガスに分解する)の袋に入れた生ごみを出す。
この袋は20リットル入りで1枚14円91銭だが、漏斗状の水切り用の器具と袋は無料配付している。週2回出すとなると20リットルは大きすざるのでは、という質問には、生ごみの量の多い家庭もあり、この1種類で実証実験しているとのこと。水切り状態は大変いいそうだ。

  パッカー車で午前中回収し、センターに運ばれた生ごみは、受け入れホッパーに投入され、破袋機、除袋機、磁選機を通過し、袋や混入している金属を除いたあと、破砕脱水機にかけて水分を約70%にする。
撹拌移送しながら34日かけて一次発酵、2台の二次発酵装置を交互に使い20日かけ て二次発酵させたあと、粒度選別装置、磁選機、風力分離器にかけて再度異物を取り除き袋詰めされる。

  特徴的なのは、水分調整材として戻し堆肥(できた推肥の一部)を使うことと、脱水して出た汚水は加熱濃縮して一次発酵槽に入れること、また、最初の工程で取り除いた生分解性の袋を、一次発酵槽に戻して分解させること。
籾がらなどの副資材を使わず、戻じ堆肥を使うのは、堆肥の総量を押さえる意味で有効だろう。また、汚水は灯油を使って加熱濃縮するのは難点だが、堆肥の一部に組み込むことで、汚水処理施設がいらなくなる。
袋については、バケツでも収集実験を行った結果、異物の混入には差がなく、総合的にみて採用を決定したそうだ。

施設内を見学

  この実証プラントは日本鋼管製で処理能力は4.8トン/日。建設コストは5億6700万円。維持管理委託費が年間2,400万円。光熱費が年間1,200万円とのこと。

  ロックウール式の脱臭設備を備え、匂いは施設の外では感じないが、さすがに中に入ると生ごみの匂いが立ちこめている。午後の見学なので搬入は終わっていたが、まだコンベアは動いていた。
二次発酵槽にくると生ごみの匂いはなくなり(置かれた堆肥には、ビニールやアルミ箔などの破片も混ざっていたが、異物を取り除いて袋詰めされた堆肥は、乾燥した荒い土のようだった。
できた堆肥は、今後(肥料取締法に基づく届出をして、10月頃から試験的に利用者に配付されるそうだ。

管内全量堆肥化に向けて

  現在、モデル地区は久喜市の16地区、宮代町の5地区で、世帯数は8,600世帯だが、生ごみ回収に協力しているのは半数程度ではないか、とのことだった。
目標は07年度までに、久喜宮代衛生組合管内(約3万9000世帯)の生ごみの全量堆肥化だ。この計画は、新設炉建設検討委員会が98年度に答申した内容の一つで、これに従つて、00年度から4か所の地域(合計379世帯)に生ごみ処理機を設置したほか、02年度には、事業者に向けても業務用生ごみ処理機の補助(補助率1/2、限度額250万円)を開始した。これについては、不況の影響かまだ申請はないそうだ。

  そして、01年5月には組合が委嘱した生ごみ堆肥化推進委員会が発足。「収集システム部会」、「堆肥化プラント専門部会」、「流通システム専門部会」の44名で検討を重ね、今年の1月20日、プラントが稼動を開始し、今回の堆肥化事業がスタートした。

  この実証プラントで製造される堆肥の量は年間161トンを予定しているが、農業者の意向調査では、管内で約724トン/年の堆肥の需要が見込まれ、全量堆肥化した時にできる堆肥の量、約623トンは、地域内で消費できる可能性が高いと判断しているそうだ。

見学を終えて

  衛生組合としては、この事業で実証したあと、全量堆肥化の方向で進めたいとしているものの、ここにきて市町村合併問題が起こり、久喜市と宮代町がそれぞれ別の自治体と合併するという話もあるそうだ。
久喜宮代衛生組合は(両自治体のごみの処理計画から実施まですべて行い、市と町はごみには関知していないというだけあって、現場と直結した施策がこれまで進められてきたわけだが、これからの動向を見守るしかないようだ。

  リサイクル率39.2%と全国トップクラスの実績や、衛生組合内に「マイバッグ普及検討委員会」や「健康調査(血液中ダイオキシン類)専門委員会」などを置いていることなど、特筆に値する事例がたくさんあったが、県内に最終処分場がないことや、93年に高濃度のダイオキシンが測定され、その削減のために紙類やプラスチックの分別を実施したことが、いまの取り組みにつながったと言えるだろう。

  配られた資料には、過去9年間のダイオキシン測定結果の一覧表もあった。また、衛生組合発行の「衛生組合だより」は1カ月おきに発行し、すでに86号にもなっていて、積極的な情報公開と啓発がなされていることが実感できた。

  昨年度策定された一般廃棄物処理基本計画をみると(07年度以降の数値目標として、焼却量の20%削減(00年度比)、リサイクル率60%達成、最終処分量の50%以上削減(00年度比)など、思いきっ本気にならざるを得ない非常に高い目標が設定されていることにも驚いた。
いずれにしても、久喜宮代衛生組合には今後も注目したい、と思いながら帰途についた。

<ごみかん理事 江川美穂子>

  関連情報

埼玉県の東北部に位置する久喜市と宮代町のごみとし尿を共同処理することを目的に設立された一部事務組合。
管内の人口は10万8千人、世帯数は3万9千世帯。


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