ごみかん見学会 報告 久喜宮代衛生組合・生ごみ堆肥化施設
「大地のめぐみ環境センター」 開催日 2003年 5月13日 ある日、偶然つけたテレビのニュースに、生ごみ堆肥化施設の稼動式の模様が放映されていた。9,000世帯の生ごみを回収して堆肥にする、というアナウンスに「すごい、どこだろう」と思わず身を乗り出すと、“久喜宮代衛生組合”という聞き償れた固有名詞が耳に飛び込んできた。 ごみ問題に取り組んでいる人には、 “久喜宮代”は、プラスチックの分別に早くから取り組み、焼却炉の排ガスのダイオキシン値を大幅に減らしたことでよく知られている。「今回は生ごみか、これは一度見に行かなければ!」ということで、久々のごみかん見学会を企画した。
広い敷地内にはし尿処理施設、焼却施設、資源物の中間処理施設、剪定枝資源化施設、プラスチック固形燃料化施設などがあり、川を渡った向こう側に、今回の目的の生ごみ堆肥化施設がある。 ごみ減量、リサイクルの推進をスローガンとして「げんりょう(原料・減量)化大作戦」を掲げ、日本一のごみ処理行政を目指す、とパンフレットにあるように、生ごみも「台所資源」と呼んでいるという説明に、まずこの事業に対する意気込みが感じられた。
久喜市と宮代町の約8600世帯のモデル地区の家庭では、週2回、集積所に生分解性プラスチック(とうもろこしのデンプン等が主原料で、99%水と炭酸ガスに分解する)の袋に入れた生ごみを出す。
パッカー車で午前中回収し、センターに運ばれた生ごみは、受け入れホッパーに投入され、破袋機、除袋機、磁選機を通過し、袋や混入している金属を除いたあと、破砕脱水機にかけて水分を約70%にする。
特徴的なのは、水分調整材として戻し堆肥(できた推肥の一部)を使うことと、脱水して出た汚水は加熱濃縮して一次発酵槽に入れること、また、最初の工程で取り除いた生分解性の袋を、一次発酵槽に戻して分解させること。
この実証プラントは日本鋼管製で処理能力は4.8トン/日。建設コストは5億6700万円。維持管理委託費が年間2,400万円。光熱費が年間1,200万円とのこと。
ロックウール式の脱臭設備を備え、匂いは施設の外では感じないが、さすがに中に入ると生ごみの匂いが立ちこめている。午後の見学なので搬入は終わっていたが、まだコンベアは動いていた。
現在、モデル地区は久喜市の16地区、宮代町の5地区で、世帯数は8,600世帯だが、生ごみ回収に協力しているのは半数程度ではないか、とのことだった。 そして、01年5月には組合が委嘱した生ごみ堆肥化推進委員会が発足。「収集システム部会」、「堆肥化プラント専門部会」、「流通システム専門部会」の44名で検討を重ね、今年の1月20日、プラントが稼動を開始し、今回の堆肥化事業がスタートした。 この実証プラントで製造される堆肥の量は年間161トンを予定しているが、農業者の意向調査では、管内で約724トン/年の堆肥の需要が見込まれ、全量堆肥化した時にできる堆肥の量、約623トンは、地域内で消費できる可能性が高いと判断しているそうだ。
衛生組合としては、この事業で実証したあと、全量堆肥化の方向で進めたいとしているものの、ここにきて市町村合併問題が起こり、久喜市と宮代町がそれぞれ別の自治体と合併するという話もあるそうだ。 リサイクル率39.2%と全国トップクラスの実績や、衛生組合内に「マイバッグ普及検討委員会」や「健康調査(血液中ダイオキシン類)専門委員会」などを置いていることなど、特筆に値する事例がたくさんあったが、県内に最終処分場がないことや、93年に高濃度のダイオキシンが測定され、その削減のために紙類やプラスチックの分別を実施したことが、いまの取り組みにつながったと言えるだろう。 配られた資料には、過去9年間のダイオキシン測定結果の一覧表もあった。また、衛生組合発行の「衛生組合だより」は1カ月おきに発行し、すでに86号にもなっていて、積極的な情報公開と啓発がなされていることが実感できた。
昨年度策定された一般廃棄物処理基本計画をみると(07年度以降の数値目標として、焼却量の20%削減(00年度比)、リサイクル率60%達成、最終処分量の50%以上削減(00年度比)など、思いきっ本気にならざるを得ない非常に高い目標が設定されていることにも驚いた。 <ごみかん理事 江川美穂子>
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