市民ごみ大学 セミナー 2004 実施報告 1


村田徳治さんに聞く
これからのプラスチック処理

講師:村田 徳治さん(循環資源研究所所長)
開催日 2004年 6月27日
 

 

 今年度第1回目の市民ごみ大学セミナーは、悩ましきプラスチック処理問題がテーマとあって、会場は開始前から続々と参加者で埋まり、超満員状態となりました。


 村田さんのたっぷり2時間にわたる講演と、核心に迫る質疑の様子を記録した講演録が出来ました。
  こちらで案内していますのでご利用下さい。


廃棄物処理の現状


  1900年「汚物掃除法」が制定され、これが市町村が廃棄物を処理する始まりであった。目的は伝染病の予防と撲滅である。公衆衛生の立場だった。
  1970年産業廃棄物と一般廃棄物を分けた。産業廃棄物とされた19種類以外はすべて一般廃棄物とし、その中に事業系一般廃棄物というのを作り、現在も生かされている。たとえば『紙くず』は紙屋では産業廃棄物だが、店からでるダンボールは事業系一般廃棄物となる。
産業廃棄物処理の原則は…@無害化 A安定化 B減量化…で、もっとも大切な資源化は入っていなかった。

  2000年循環型社会形成推進法ができた。
処理の優先順位は、
 @発生抑制
 A再使用
 B再利用
 C熱回収
 D適正処分…とされたが、拡大生産者責任は有名無実になっている。
  最近、産業廃棄物の施設の新たな建設が住民の反対などにより激減し不法投棄につながりかねない状況になっているのに対し、税金で建設する一般廃棄物処理場はダイオキシンの発生を抑えられるような大型の施設が建設されるようになり、ごみが足りなくなっている現状がある。
環境省では、産廃と一廃のあわせ処理に対して、今年度より誘導策を打ち出している。


日本の物質収支

  1997年では、日本の資源の輸入は7.1億トン、製品の輸入は7千万トン、それに対して自動車などに加工して輸出したのは1億とん強である。輸出されなかった何億dは国内に蓄積する。毎年、何億dずつの輸入した物が蓄積されていく。
海外から資源や製品を輸入している限り、ごみも増え続ける。現在の産業技術体系に、枯渇性資源の永続的使用の理念がない。発生抑制の前に『輸入抑制』が必要である。


プラスチックの生産

生産量は…1999年 1457万トン。今は1300万トン。
 ・ ポリエチレン…26.6%(スーパーの袋等)
 ・ ポリプロピレン…18.0%(菓子の包装袋など)
 ・ 塩ビ(塩化ビニリデン、塩化ビニールとも)…17.3%
 ・ ポリスチレン…9.5%
 ・ PET(ペットボトル用約半分)…4.6%
 塩素が入っているプラスチック(塩ビ)は燃やすとダイオキシンが発生し、また加工をしやすくするため、劣化を防ぐためなどに添加剤を混ぜている。
 1970年に、東京都は廃プラスチックを「適正処理困難物」に指定する動きがあったが、国や業界の圧力によって実現しなかった。


エネルギー回収

  日本では、2000年度末現在、1715ある一般廃棄物の焼却施設のうち、発電設備をもっているのは13.6%(233施設)に過ぎない。しかも発電効率は江東清掃工場の場合で、17.9%である。75%以上のエネルギーを捨てている。これは地球温暖化にもつながる。
  ごみの焼却炉の熱量は,温室やプールなどでは使いきれないほど大きい。花形といわれている越谷市の東部清掃工場(処理能力800トン/日)では発電出力2万4000kw.(発電効率20.1%)である。
発電効率を20%以上に上げるためにはボイラーへの熱伝導効率を上昇させなければならず、そのため耐腐食性で熱伝導率にすぐれた高価な素材を使用し、高温・高圧の蒸気を作り出している。
 ドイツでは、75%以上エネルギーを回収できなければ、廃棄物の焼却を禁止するという厳しい規制によってエネルギー回収を進めた。
 ドイツの75%エネルギー回収するのと、75%捨ててしまう日本との格差は大きい。


自区内「処理」にあらず

  東京都では、70年代のごみ戦争から、自区内処理ということで一区に1つ清掃工場を建設するとされてきたが、灰はどうするかということが考えられてない。「自区内処理」ではなく「自区内焼却」というべきである。
 清掃工場の建設は、600トン/日で300億円の事業である。談合も起きるし、また焼却炉を中心とする都市環境施設メーカーには天下りも多い。
 清掃労働者は約2万人、特別職として一般職より手当てが高額であり、ごみ減量にも逆行する要素になっている。


廃プラのいろいろなリサイクル

  年間1千万トン発生する廃プラスチックも…
 ◇ 製鉄(コークス炉・高炉還元剤)
 ◇ アンモニア原料(宇部興産・昭和電工)
 ◇ セメント燃料(太平洋セメント・トクヤマなど)
 ◇ 発電
 ◇ RDF化
…などがフル稼働すれば、自治体で廃プラを処理する必然性はなくなる。
 廃プラの処理にはいろいろな方法があるが、経済性で考えてコストが安いところが勝つ。そもそも自治体でできるのは廃プラの焼却くらい。リサイクルはできない。現在は自治体の負担が大きすぎる。
  また、人間は元来なまけものなので、怠った時の罰則が必要。システム化が必要である。容リ法の改正も行政の責務であるが、産業界からの圧力があってできない。
廃プラの処理も方法はあるが、しくみづくりができていない。


循環型社会の大切さ

  石油を燃やすと石油は消滅してしまうが、石油を構成している元素(炭素と水素)は不滅である。石油が空気中の酸素と化合して、炭酸ガスと水に変化し、目に見えなくなるだけである。元素である炭素や水素は消滅しない。
  廃棄物も化学組織を持った物質であり、元素のレベルで考えれば不滅である。
不滅の元素は処理することができないので、循環型社会にあわせてリサイクルしていかなければならない。


自然は循環型社会

  自然界では、植物が空気中の炭酸ガスと根っこから吸い上げた水を原料にして、太陽エネルギーによる光合成によって有機物を合成する。
動物は、植物が合成した有機物を栄養源とし、動植物の不要物をみみずなどの分解者が分解し、その分解生成物を植物が栄養源として再利用している。
炭酸ガスの原子も、生態系において植物、動物、分解者の間を循環している。
  焼却しても元素は消滅しないことから考えても、人間が作り出したプラスチックは、人間がリサイクルの環に乗せなければならない。

[まとめ:ごみかん会員 松原政江(昭島市)]


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