市民ごみ大学セミナー2002 実施報告 4


第4回 『 生ごみの新たな活用 バイオマスエネルギー 』
開催日 2003年 2月23日
五十嵐 泰夫さん(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授)
後藤 雅史さん (鹿島建設(株)技術研究所 上席研究員)


  昨年末、政府が発表した「バイオマスニッポン総合戦略」。
生ごみ資源化の選択肢としてバイオマスエネルギーの可能性はどうなのか、熱い注目を集めているテーマについて、お二人の講師を迎え、2月23日、今年度最終回のごみ大学セミナーを行いました。


「廃棄物処理・再利用とバイオテクノロジー」
五十嵐 泰夫さん

 

「かっぱらいの人生」しか送れない人間

  日本人は、1人1年に17トンの資源を使って、10トン/人・年の製品を作り、4トン/人・年の廃棄物と9トン/人・年の二酸化炭素CO2を排出している。 人間が生物として必要なCO2は、0.3トン/人・年といわれるから、その30倍もの有機物を燃やして、便利な生活をしている。(世界の平均の10倍、アメリカは50倍)

  生物の生き方には二種類あります。
一つは「独立栄養生物」で、植物のように何らかのエネルギー(主に光)で、CO2から有機物を作ってそれで自分の体を作ると共に、生きるエネルギーを得ているもの。
もう一つは、人間のような「従属栄養生物」で前者の前半分はやらず、後半分だけ。有機物を使って、いろいろやって、炭酸ガスを出している。生きるのに必要なエネルギーの30倍も使っているということが、人間の根本的な問題です。

  人間はいわば「かつぱらいの人生」しか送れないのです。
そんな人間が何で大きな顔をしてのさばっているのか、それは化石燃料、特に石油のおかげです。

 

バイオマスエネルギーだけでは日本を救えない

  バイオによる有機性廃棄物の処理技術としては、
1.メタン発酵
2.アルコール発酵
3.乳酸発酵がある

  メタンは燃料になり、エネルギー流通に入っている利点がある。エタノールも同様。
乳酸発酵で、ごみから工業用乳酸を作って生分解プラスチックにしている。
次に
4.コンポスト化だが
  これは自分の家の庭でやる分にはいいが、大掛かりにやったらどこに売るのだという問題が残ります。
バイオマスが将来どういう方向になっていくのかと考えると、基本的にはまず廃葉物をきちんと処理することが第一で、次に、できたらエネルギーを絞り出すようにするにはどんな道が開けていくだろうか、と考えるのが順序です。
結論的にいうと、バイオマスエネルギーだけで日本を救うことはありません。

  我が国のバイオマスを集めて無理やり燃やしたら、どれくらいのエネルギーを回収できるかというと、エネルギー総使用量の6%、かなり技術革新があっても10%を超えることはないでしょう。
バイオマスの回収や前後の処理にエネルギーがかかりすぎるのです。でも、バイオマスの資源化はやらなくてはならない。
その理由は6〜10%といってもこれは我が国のエネルギー自給の中で大きな比重を占めるものだということ。また、いずれは、石油は私たちの生活を支えられなくなるのは確かだからです。

 有機性廃棄物の処理分解になぜバイオ技術かというと
1.環境調和型である
2.省エネルギー型である
3.基本的に小型分散型であるからです

 

市民がどういう生活をしたいかがカギ

  ドイツ・フライブルク市のビオトンネ(バイオ発酵施設)を見てきました。
なぜフライブルク市が環境都市なのかと考えると、一つは人々の自然に対する関心が高いこと、もう一つは産業的に重化学工業がなく環境産業を発展させていくしかないからではないか。
結局、そこに住む人が、どういう生活を求めているのかという選択の問題だと思う。

 

 


「有機性廃棄物のバイオガス化」
後藤 雅史さん

 

 バイオ発酵 背景と実設備例

  廃棄物系バイオマスの再資源化技術として、いま再びメタン発酵が関心を集めている背景として、先ず、第一にエネルギー資源を回収するリサイクル手法の一つとして国から認知された(補助金の対象になる)こと。
また、バイオガス化効率を向上する手法、すなわち微生物密度の増大や処理温度の高温化などの技術開発が進んだことを挙げることができる。

  これまでに手がけた実規模の稼動設備としては、明石市大型ショッピングモール、神戸市ポートアイランド、うつくしま未来博(福島県)などの例がある。

 

 今後の課題と展望

  課題の一つは、用途に応じたバイオガスの精製・処理(不純成分の除去や,メタンの濃縮,高圧化など)技術の開発・改良である。また、エネルギー密度が比較的低いバイオガスの性状に応じた利用機器の開発も必要である。

  廃棄物系バイオマスのメタン発酵装置は、環境負荷の低い廃棄物処理システムとしてだけではなく、回収バイオガスを利用した分散型エネルギー源である。
特に、熱・電力を併用するコ・ジェネレーション型の分散型電源としての適用も可能である。
回収エネルギーの有効再利用を実現するためにもこの分野での普及が期待されるが、そのためには関連制度の簡素化・整備が必要である。

  現在、鹿島建設だけでも、北海道砂川地区(22トン/日)、富山市(24トン/日)、白石市(3トン/日)の3ヶ所においてメタン発酵処理施設が本年3月末には竣工予定であり、他社による大型メタン発酵処理施設の建設も各地で進められている。
将来、2003年を振り返って「バイオガス元年」と呼べるようになる展望が開けてきていると思います。

 


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