北への旅

みほへ。
一週間のごぶさたでした。
この一週問、お姉ちゃんは、北に向かって気ままな旅にでていたのさッ!
気ままなといっても、一人旅ではなくて、
同じ下宿のインゲが新学期前に実家に帰るのに便乗したんだけどね。
あのリサイクリング・ホーフで手に入れた自転車がさっそく活躍したのよ。
…といっても北の町まで
600キロもサイクリングしたわけじゃなくて
ドイツの列車には自転車専用車両があるから
列車と自転車で格安なエコ・ツアーができるの。

だいたい、ドイツの駅には改札口がないから
直接ホームに入れちゃうのよ。もちろん切符はいるけどね。
自転車を専用車両に入れたわたしとインゲは
ゆったりとしたコンパートメント(個室)に席をとって
持ってきたパンやチーズでお昼ごはん。
これは別に高い席ではなくて、ドイツではたいていこの形なの。
日本の感覚からするとぜいたくよね。
でもこの列車は、車両ひとつずつを
あちこちから持ってきてつないだようなつぎはぎ列車なの!

使えるものはとことん使う、このもったいない精神と
ゆったりしたぜいたく感がふしぎとマツチしているんだ。
さて、列車が北へ北へと走るにつれて
窓の外に点てんと見えはじめたのは発電用の風車です。
ドイツは2050年までに
国全体のエネルギーの半分を自然エネルギーでまかなう計画なんだって。
だから南は太陽光発電、北は風力発電に力を入れているのよ。

インゲの案内で
郊外にある風車と近くの村を見学できたの。
巨大な風車は、広びろとした牧草地の中にあって
羽根の向きや角度を調節しながら
意外とゆるやかな風の中で回っていました。
わたしたちは風車の中のらせん階段を上がって
機械室まで見せてもらったのよ。
高さ60メートル、羽根がすぐ横に見えてちょつとこわかったけれど
これが原発だったら
「どうぞ」って言われてもえんりょしちゃうわよね。
管理会社のクラウスさんの
「この風車がいらなくなったら
ここは明日からでもトウモロコシ畑にもどせるんだよ」
という言葉がとても印象的でした。


 


ごみのでないお祭り

さあ、いよいよ来週から授業が始まります。
みほも新学期だね。
ドイツにきてから1か月、何もかもめずらしくて
ちがいにびっくりすることもあったけれど
町の人たちが「自分自身を大切にするように
ほかのいのちや自然も大切にしていること」
「生活に使ういろいろなものとも
長くていねいにつきあっていること」がよくわかりました。
ぱじめぱめんどうだと思ったけれど
ごみをださないシンプルな暮らし方って、すがすがしくてステキ!

今日は丘の上の広場で
夏の経わりの大きなお祭りがありました。
日が西にかたむき、気持ちのいい風が吹いて
お祭りの広場へ行く道は、ちょっぴりおしゃれした人でいっぱい。
ロングドレスを着ている人もいたりして
野外ステージでは楽しいコンサートが次から次へと夜中まで続き、
みんなゆったりと食べたり飲んだりしているの。

何よりおどろいたのは
お祭り会場のごみ箱が、からっぽだったっていうこと。
食べ残しと紙ナプキンは堆肥にするので分けているし
ごみになる使い捨ての食器をいっさい使っていないからなのよ。
陶器のお皿やガラスのコツプでおいしく食べたり飲んだりしたあとは
洗い場のある車のところに持っていくと
容器代を返してくれるしくみ。
「お祭りに使い捨て食器を使ってはいけない」という
町の決まり(条例)があるんだって。

こんなきびしい決まりが受け入れられるのも
町の人たちの心の根っこに
「ごみになるものは買わない、使わない」が
あるからなんだろうね。
その根っこをささえているのが
森や小さな生き物を大事にしてきた長い歴史なのでしょう。
日本でもそんな時代が長く続いていたはずなんだけどな。
お姉ちゃんは、この町で
音楽だけじゃなく、もっといろいろなこと
生きる上で大切なことを、勉強できそうな気がしています。