循環型社会を阻害するもの
開催日 2001年10月30日
  2001年10月30日に開催された、生ごみ堆肥化促進協議会主催

「循環型社会を阻害するもの」 シリーズ第3回 〜市民生活の立場から〜 

と題したセミナーに 「ごみ・環境ビジョン21」 運営委員・服部 美佐子が講師として招かれ講演を行いました。

セミナーの開催目的
  廃棄物は「私たちが生産・消費した物を、税金で処理する」という、正に私たちの生活に密着した問題です。最終処分場の逼迫した状況、環境ホルモンの及ぼす人体への影響が度々取り上げられます。
  根本的な解決は、自治体や処理業者だけではなく、私たちの市民の理解と行動から始まります。安全で快適な生活を送るために、私たちは何を始めればよいか環境専門家の方に、市民としての立場からお話いただきます。

  講演の概要を使用したレジュメによって紹介します。

「循環経済を阻害するもの」
服部 美佐子 ごみ・環境ビジョン21
1. ごみ問題は川下から川上へ
  ○大量生産・大量消費・大量廃棄
   * 三多摩地域廃棄物広域処分場(日の出町)の問題
   * 自然分解できないごみ質、有害化学物質
   * ごみ処理における地方自治体の限界
   * 市民参加のあり方
  〇環境政策(スウェーデン)93年国会で承認
   * 94年 包装に対する製造者責任に関する政令
   * 古紙に対する製造者責任に関する政令
   * タイヤに対する製造者責任に関する政令
  〇循環・経済廃棄物法(ドイツ)94年に公布
   =循環型社会経済の促進及び廃棄物の環境に適合した処分の確保に関する法律
   * 廃棄物を出さないこと
     ごみを出してから処理を考えるのではなく、厳しい法律によってごみを回避する
   * どうしても出てしまったごみは、環境や福祉と調和する形で再利用する
   * 拡大生産者責任(EPR=Extended Producer Responsibility)
     ものを作る時点で、ごみにならないように設計し、
     長く使えて修理できるものを作る。
   ☆ この法律は法案提出から2年の歳月をかけて、様々な議論をした末に制定された

2.循環型社会形成推進基本法とその問題点
  ○制定過程
   * 政治的な妥協の産物
     与党間の主導権争いと省庁の縄張り争い
     公明党のたたき台に対し、自民党が難色、環境庁に他省庁がブレーキ。
   * あくまでもリサイクル法などの個別法に踏み込まない基本法
   * 国民的論議の欠如
     国民の生き方や暮らし方を変え、次世代にも深く影響を及ぼす法案であるにも
     かかわらず、国民からの意見聴取などが皆無
     そもそも「持続可能な循環型社会とは何か」について
     合意形成がはかられていない
  ○法案の中身
   * ザル法、または理念法
    「…可能な範囲」などの条件がつけられており、どのようにでも解釈できるため、
     実行性がない
   * 拡大生産者責任の欠如
     製品に回収費用が内部化するという規定がないため、
     生産の見直しなどには至らない =役割分担論の過ち
   * 個別法とリンクしていない
     容リ法、家電法、建築資材リサイクル法などの個別法を統括する根幹法に
     なっていない=大量リサイクル社会
     大量資源・エネルギーの投入と有害物質の拡散
     リサイクル費用が地方財政を圧迫する

3.「飽食」の時代を検証する
  〇食料自給率の低下
   * カロリーベース・・・・・約40%、穀物自給率・・・・・30%以下
  ○残飯として捨てられる食糧の損失11.1兆円
    日本の農業・水産業総生産額12.4兆円
  〇約2,500万トンの食糧を輸入
  〇食べものごみ
   * 約1,940万トン
    産業廃棄物   340万トン
    一般廃棄物   1,600万トン(家庭・・・・・1,000万、事業系・・・・・600万)
  〇再利用
   * 肥料化 52万トン、飼料化 104万トン、その他 12万トン・・・・・食品廃棄物の9%
   * 事業系生ごみの増加  600万トンのうちリサイクルは1%
  〇食生活の変化
   * 自給率の低いものにシフト 飼料穀物や大豆(油の減量)の輸入増加
   * 輸入農作物の残留農薬
  ○食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)
   * あくまでも「リサイクル法」発生抑制の発想がない
   * 事業系一般廃棄物が対象 約950万トン
   * 100トン/年以上の生ごみを出す企業が対象
   * 2006年までにリサイクル率20%の実現
   * 堆肥の中身、安全性・・・・・新たな土壌・水質汚染の懸念
   * 需要の問題

4.三多摩地域の生ごみ処理の実態
  ○最終処分場の限界
   * ごみ減量のための生ごみ堆肥化
  ○コンポスターや処理機に補助金をつける
  ○市街地での生活環境や都市農業という共通点
  ○学校などの公共施設への生ごみ処理機の導入は進んでいる
  ○武蔵野市の場合
   * 桜堤団地に生ごみ処理機を設置
     公団が設置、市が管理・運営
   * 市民の取組み
     啓発、生ごみ堆肥を市民農園で活用
     大規模集合住宅における生ごみの減量・資源化等に関する指導指針
     全市的な展開はない… 行政曰く「堆肥の受け皿がない」
  ○地域内循環
   * 地産地消(そこで取れたものをそこで食べる)に近づける

5.「環境容量」という考え方(地球の友オランダ)消費と環境汚染の許容量
  ○将来の世代が資源を利用する権利を侵さず、世界中の人間が公平に持ちうる限度量
   * 鉄、アルミ、銅などの金属資源は95%以上削減しなければならない
   * 食肉は2010年までに50%削減

6.目指す社会は
  ○「最適生産・最適消費・最小廃棄」社会へ
  ○循環型社会とは
   * 単なる廃棄物政策にとどまらず、政治・経済のあり様や地球規模での資源及び
    エネルギー活用の仕方を見直すとともに、地域社会でのまちづくり、
    産業、個人の暮らし方まで含む。
   * 大量生産の蛇口を絞り、物を大切に使い、ごみが出にくい社会を作る
   * 多くの商品に企業の引き取り責任を広げ「もったいない」を生かす社会

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