見学会レポート・三菱電機 東浜リサイクルセンター
最終更新日 2001年 9月 8日

2001年4月より施行された家電リサイクル法
 循環型社会の実現に向けての施策の1つである『家電リサイクル法』が4月1日から施行された。3月には駆け込み需要のために対象品の買い換えも多かったが、予想の範囲で混乱もなくスタートした。また、排出者の負担が増えたため大量の不法投棄が心配されたが、私たちが調査した「東京・三多摩」地域では不法投棄は僅かであった。
 私たち日本人のモラルもそれほど悪くないことが証明されてほっとしている。ご同慶の至りである。

 こうなると、リサイクルの責任を新たに負った「メーカーの処理はどうなっているのだろうか」に関心が移ってきた。8月27日、日本消費者連盟が企画した三菱電機・東浜リサイクルセンターの見学会に参加した。
 ここで見聞きしたことをレポートします。変化の激しい昨今の社会情勢、記述した事が短期間の間に変化する可能性が高く、回収された資源の売価や廃棄物の処理費などは特に変化が大きいと思われる。また、私の誤解に基ずく事もあろうかと思われます。
 リサイクルセンターの概要を知る目的でお読みいただき、疑問点や他の目的で使われる時には『三菱電機・リサイクル推進室』にお確かめ下さい。

家電リサイクルの全国体制
二つのグループにより再商品化
 再商品化の義務を負った家電メーカーは二つのグループを作り廃家電のリサイクルに取り組んでいる。その一つが2社連合またはAグループと呼ばれ、他を5社連合またはBグループと呼ばれている。
 今回、見学した東浜リサイクルセンターはBグループに所属している。

指定引き取り場所
 全国に各々190箇所設けられ、小売店・自治体・指定法人などが排出者から受け取り、ここに持ち込む。東京都の多くの自治体は福祉目的以外には自身では扱わず、指定法人を紹介している。

再商品化事業者
 Bグループが利用するリサイクル事業者(工場)は全国に15箇所で、各々地域別に分担している。Aグループは24箇所である。
 家電メーカーが主体となって設立された事業者と素材メーカー、プラントメーカーなどが主体になって設立した事業者があり、家電メーカーが直営している工場はない。

東浜リサイクルセンターの紹介
 東浜リサイクルセンターは出資比から分かるように三菱電機が地元の産業廃棄物事業者とが主になって設立した5社連合のリサイクル工場である。担当エリアの5社の廃家電がここに集められ処理されている。
 運営は三菱電機の責任で行われているリサイクル工場、管理スタッフは三菱電機家電の主力である静岡工場からの出向者である。工場との人の交流により価値観や情報を共有しリサイクルの容易な製品作りに取り組むとのこと。

所在地   千葉県市川市東浜1−2−4
運営会社  株式会社ハイパーサイクルシステムズ
資本金と株主構成     4億9千万円
 三菱電機         …… 出資比率 69.5%
 市川環境エンジニアリング …… 出資比率 20.5%
 日立製作所        …… 出資比率  2.0%
 三洋電機         …… 出資比率  2.0%
 シャープ         …… 出資比率  2.0%
 富士通ゼネラル      …… 出資比率  2.0%
担当エリアの人口   13%
敷地面積  16,276平方メートル*注
建屋面積   7,700平方メートル*注
従業員    約100名*注
処理能力   家電製品60万台・OA機器(コピー機・FAX・パソコンなど)40万台*注

   *注 OA機器のリサイクルを担当するグリーンサイクルシステムズと合わせた数値

指定引取場所から大型トラックで到着
 東浜リサイクルセンターは埋め立て地にあり、近くは倉庫や工場地帯。東関東自動車道や京葉道路のインターに近く廃家電の搬入には絶好の立地にある。大型トラックにより次々と運び込まれてくる。
 入り口には計量装置があり、搬入されたリサイクル品は計量・記録される。処理済みの物質の搬出は別の門から行われ、搬出された資源・残査の重量も計量管理されるとのこと。
 廃家電は品目ごとに分けられ、専用のコンテナーに入れられている。当然ながら総てに「家電リサイクル券」が貼り付けられていた。

計量室に向かう運転手コンテナーに入った廃家電

冷蔵庫・エアコンの資源化工程
先ずは手分解
 先ず手分解で次の物を外します。
  @冷媒のフロン、冷凍機の潤滑オイルの抜き取り
  Aコンプレッサーの取り外し
  B熱交換機の取り外し
 この後、クーラーは破砕・選別工程に送られます。冷蔵庫は断熱材として発泡ウレタンが多量に使われ、発泡剤としてフロンが使われているので断熱材のフロン回収の工程に送られます。
 手分解されたコンプレッサー、熱交換機は専門のリサイクル事業者に引き取られていきます。エアコンは他の廃家電と一緒にHEARTシステムで破砕、選別されます。
 フロンは専門業者に送られ分解処理されます。これに掛かる費用は600円/Kg+輸送費とのこと

冷蔵庫から冷媒のフロンを抜き取るエアコンの熱交換機を外す

断熱材フロン回収工程
 冷蔵庫は密閉された部屋に設備された破砕機とロッドチューブミルにより破砕され、発泡ウレタンとその他の物とが風力選別機により分けられます。この破砕工程でもフロンが発生しますが、部屋が密閉されているので外部には漏れません。
 発泡ウレタンはウレタン破砕機で粉々に砕かれ、ウレタン圧縮機で圧縮されます。これによって発泡したウレタンの小さな泡の中に含まれていたフロンが絞り出されます。フロンは活性炭チャンバーに送られ活性炭に吸着されます。
 十分フロンを吸着した活性炭にはスチームが送られ、高温の水と共に活性炭から放出させ、冷却され沸点の差を利用してフロンが回収されます。
 ウレタンはウレタン単体として回収されます。断熱材以外はHEART(High Efficient Applicable Recycle Technology)システムに送られ他の家電と共に素材ごとに選別されます。

冷蔵庫断熱材のフロン回収システム

冷蔵庫断熱材のフロン回収システム…… 東浜リサイクルセンター・パンフレットより

 

テレビ・洗濯機の資源化工程
これも先ずは手分解
 テレビはブラウン管と電子回路の基板が外されます。ブラウン管のガラスはカレットにされて、ブラウン管を製造する企業に、電極は金属材料として材料メーカーに引き取られます。基板はこれも専門の事業者に引き取られます。
 洗濯機はモーターと洗濯槽のバランサーの塩水が抜かれます。モーターは専門のリサイクル事業者に、塩水は近くに三菱の洗濯機工場があるのでそこに送られるとのこと。
 以上の工程の後、HEARTシステムに送られ破砕・選別が行われます。

破砕・選別工程(HEART)

破砕・選別工程…… 東浜リサイクルセンター・見学会資料より抜粋・加工

破砕・選別工程(HEART)の説明
(1)破砕
 手分解の終了したテレビ、洗濯機、エアコンは破砕機に投入され小さく破砕されます。小さく破砕すると後の選別の精度が良くなるが、破砕機の処理が遅くなるのでこの兼ね合いがノウハウとのこと。
(2)風力選別
 冷蔵庫の破砕品を加えて埃を吹き飛ばし、集塵機で集める。
(3)磁力選別
 磁力を使って鉄を取り除きます。
(4)分級装置(トロンメル)
 破砕された物を大きさ別に分けます。大きさ別に最適な選別方法と選別の順番を変えて選別精度を向上させています。
(5)比重選別機
(6)渦電流(うずでんりゅう)選別機
 交流磁界の中で金属に渦電流を発生させ、この電流と磁界の相互作用を利用して金属を透磁率・電気伝導率の差を利用して種類別に、かつ絶縁物のプラスチックを選別します。



選別機の外観選別されたプラスチックと鉄

プラスチック残さ リサイクル技術
 プラスチック残さから僅かに残った金属や塩ビを取り除く技術を開発し(特許出願中)、これらの含有率を低めています。
 これによりシュレッダーダストとして埋め立てたり焼却処分せずに高炉還元材として製鉄会社に引き取って貰える。ちなみに埋め立てると30円/Kgのコストが掛かるのを、製鉄会社に高炉還元材としの引き取り料は17円/Kgとコストが低減するとのこと。  その方法はプラスチック残さを粉砕(粒度6mm以下)して比重選別機で金属を除去し、誘電帯電させて静電選別により微細金属を除去、更に摩擦帯電により塩ビを取り除きます。塩ビの含有率を0.1%以下にすることが必要であるとのこと。

考  察
家電リサイクル工場は中間処理工場
 メーカーの生産工場は多くの部品・部材を購入して組立を行っている。1つの製品が完成するまでには素材メーカーから部品メーカーまで無数の企業がネットワークのように繋がって消費者に製品を届けている。いわゆる“動脈産業”である。
 生産と逆のリサイクルでは排出者から集められた廃家電が家電リサイクル工場に送られてくるが、ここだけでリサイクルが出来るのではない。家電リサイクル工場では製品を分解し、後工程を引き受ける企業に有償で売り渡したり、処理費を付けて渡している。
 引き渡した後に、多くの企業で作るネットワークを経て再利用したり廃棄されている。動脈産業とは反対の“静脈産業”の健全な発達が循環型社会の実現には不可欠である。
 家電リサイクル工場は静脈産業の入り口に位置し、中間処理工場であるとも言える。

採算性 と コスト低減
 採算性に関しては今回の見学ではハッキリしなかったが、排出者の支払ったリサイクル料の半分ほどがリサイクルセンターの売り上げ(収入)であると思えた。コストの低減努力は処理プラントの性能向上や運営上努力されていることが伺えた。
 選別して材料メーカーに渡される物は国際的な需給で価格が変動し、焼却や埋め立て処理費は年々上がって行くと思える。東浜リサイクルセンターの採算が合わなければ三菱電機が何らかの方法で補填することになると思われる。
 5社の製品を総て処理しているが、製品ごとの処理の難易が分析されてコスト問題として企業間で検討される機運を感じた。製品開発の段階でリサイクルし易い製品作り、長寿命化、修理の容易な製品作りへの動機付けになることを期待したい。また、静脈産業による種々な施策と工夫で適正な利潤を上げられることが必要である。

不法投棄の心配
 幸いに排出者による不法投棄は極僅かである。しかしながら、一部悪徳業者が廃家電をリサイクル料金より安く集め、不適切な処分や発展途上国への不法な輸出の動きがあると聞く。
 法治国らしく法体系を整備し、取り締りの強化が必要。今までの産廃の不法投棄問題を含めて。

 この度の見学会には三菱電機本社のリサイクル推進室の担当部長さん、リビング・ディジタルメディア事業本部の担当部長さんに説明・工場の隅々まで案内していただきました。写真の撮影も制限無しで多くのことを学ぶことが出来ました。有り難うございました。

(ごみかん運営委員 宮島)

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