パネルディスカッション
循環型社会への挑戦

排出者責任の徹底と拡大生産者責任

 

 環境庁が主催するフォーラム 「循環型社会への挑戦」 が2000年10月27日に東京・日本都市センター会館 コスモスホール、続いて11月7日に大阪・毎日新聞ビル オーバルホールにて開催されました。
 このフォーラムにパネリストとして 『ごみ・環境ビジョン21』 の運営委員である 吉崎 洋子(東京会場)、 服部 美佐子(大阪会場)が参加しました。大阪会場のパネルディスカッションの内容を 鞄報アイ・ビー「月刊廃棄物 2001−1号」 の記事を転載して、皆様に紹介します。


 循環型社会に向けて、市民NGO・行政・事業者の3者の代表が集まり、循環型社会実現への道筋として各主体がどの様に取り組むべきなのかを明らかにするフォーラム「循環型社会への挑戦」が2000年11月7日、大阪市内の毎日新聞ビル・オーバルホールで、環境庁が主催となり開催された。
 各主体の代表がやりとりを行ったパネルディスカッションを中心に紹介してみたい。


パネリスト の プロフィール

コーディネーター
小林 康彦(こばやし・やすひこ)
 (財)日本環境衛生センター専務理事
 東京大学工学部卒業。横浜市、厚生省、環境庁で水道、廃棄物、環境行政に従事。
 環境庁長官官房参事官、厚生省水道環境部長を歴任。
 現在、中央環境審議会の特別委員を務める。埼玉大学(生活環境システム)、
 芝浦工業大学(人間と環境)の非常勤講節。

パネリスト
伊藤 哲夫(いとう・てつお)
 環境庁水質保全局企画課海洋環境・廃棄物対策室長 (2000年11月時点)
 京都大学経済学部卒業。1979年環境庁入庁。
 93年の環境基本法の策定、「平成9年度版 環境白書」の作成などを担当。
 99年7月より現職。循環型社会形成推進基本法の策定を担当

バネリスト
服部 美佐子(はっとり・みさこ)
 ごみ・環境ビジョン21 運営委員
 北多摩生活協同組合から現・東京マイコープ環境委員会委員長を8年間務める。
 1993年に「むさしのごみを考える会」を発足、代表。
 ごみ・環境ビジョン21の設立後、2000年5月まで事務局長。
 「循環型基本法」円卓会議実行委員会に関わる。

パネリスト
寺下 晃司(てらした・こうじ)
 生活協同組合ヨープこうべ福祉・環境活動部環境チーム
 大阪大学大学院環境工学攻修了。
 生活協同組合コープこうべに勤務し、1994年から現職。
 リサイクルステムの構築、組合員の環境活動支援、子どもの環境活動企画、
 環境マネジメトなどに従事。

パネリスト
小寺 卓郎(こでら・たくろう)
 松下電器産業(株) 環境本部環境保護推進室 GPグループリーダー
 (*GP:グリーンプログクツ=環境配慮商品)
 大阪府立大学工学部応用化学科修士課程修了。
 松下電器産業(株)に入社し、公害防止機器を開発した後、
 事業部及び研究所で材料関連の製品開発を担当。
 1990年より、本社環境保護推進室で環境配慮型の商品づくりを主体に、
 全社環境保全行政を担当。

パネリスト
西川 富久子(にしかわ・ふくこ)
 京都市地域女性連合会 常任委員 2000年8月より現職。
 京都市ごみ減量化推進会議委員及び―地域の会長を務め、
 京都市地域女性連合会の常任委員として活躍。


小 林
 パネルディスカッションに入らせていただきます。前半はパネリストの皆さんから報告、ご意見をいただいて、これをもとに、後半ディスカッションに入りたいと思います。
 会場からたくさんのご意見をいただいております。なるべく盛り込みながらと思っておりますが、数が非常に多いので私のほうでポイントを紹介しながら議論の素材という進め方でお許しいただければと思います。
 パネリストは、環境庁から基調講演をいただいた伊藤さん、ごみ・環境ビジョン21の服部さん、生活協同組合コープこうべの寺下さん、松下電器産業の小寺さん、京都市地域女性連合会常任委員の西川さん、それから私、日本環境衛生センターの小林でございます。
 最初は基調講演で循環型社会形成のための施策の方向をお話しいただいた伊藤さんから、それにプラスしてパネル向けの御発言をお願いいたします。

伊 藤
 循環型社会形成のための取組の方向として若干、先ほどの話に追加してお話ししたいと思います。
 循環型社会作りのための国の政策をどう展開していくかにつきましては、循環型社会形成推進基本法に基づきまして、循環型社会形成推進基本計画の中で国民的な議論をしながら進めていくことが非常に重要だろうと考えております。
 その中でもとりわけ「排出者責任の徹底」と「拡大生産者責任に基いた施策の推進」ということが重要なポイントになるだろうと思います。
 それに加えて、国の枠組みで決められたことだけをやっていれば循環型社会が形成されるというものではありません。その中で事業者や国民の自主的・積極的な取り組みが不可欠、とりわけ事業者については非常に重要な責任があると思います。

環境に貢献できる企業、正しい評価ができる社会

伊 藤
 健全な環境がなければ事業活動そのものが成り立たないということをすべての事業者が十分認識した上で、環境負荷の少ない社会づくりに貢献できるような企業活動をやり、そういう企業が評価される社会にしていかなければなりません。
 それから、国民・消費者の役割も非常に重要です。 一人一人のやっていることは小さいことでも、それを積み重ねなければ世の中は変わりません。
 企業の活動のあり方も結局は消費者が決めていくわけですが、現在は消費者の志向が必ずしも環境保全型になっていません。企業活動を根本的に変えていく上で国民・消費者の役割は重要です。

小 林
 どうもありがとうございます。それでは続きまして服部さんから、「日本は循環型社会に向かえるのか」というお話をいただきます。


「ごみ・環境ビジョン21」、ドイツ30万人NPO目指し

服 部
 私は『ごみ・環境ビジョン21』という市民グループの運営委員をしております。今日会場に来られた方々は、この名前を知らないと思います。ホームページや情報紙「ごみっと」を出しておりまして、まだ2年半の若い、駆け出しのNPOですが、「日経エコ21」のベスト10にも選ばれたなかなか中身の濃いホームページです。インターネットをされている方は是非見てください。
 私は東京都の武蔵野市に住んでおりまして、先日の10月10日に、全国で初めて処分場の強制代執行が行われた日の出の処分場問題、全国的に報道されたので皆さんご記憶に新しいかと思いますが、日の出の問題に関わってきました。生協活動も含め、約10年、環境問題、特に廃棄物問題で活動しております。「日の出町」の処分場の話を少しさせていただきます。

 武蔵野市を含め三多摩地域の26市1町、約365万人の家庭から出るごみ、不燃物と焼却灰が「日の出町」というところに運ばれております。内陸型の管理型処分場としては、たぶん一番大きいのではないかと思います。
 広域処分場ということで、ごみが一極集中するという問題に関わりながら、廃棄物の問題点が見えてきました。問題はたくさんありますが、まず、ごみが自然環境を破壊していくということ、自然体系の中で処理できないごみが出てきてしまっている、ごみは量の問題もありますが、有害物質が大量に含まれていて自然環境を破壊するということと、もう1つは、 一極集中することによって自分たちのごみが見えなくなってしまうということだと思います。
 私たちは捨てている側で、捨てている側の運動としては非常に画期的だとは思いますが、ステーションにごみを出してしまうとその行方さえ知らないということを何年も続けてきて、汚染問題があって処分場に気づいたのです。

 こうしたことを通して、私たちは何を実感したかというと、やはり広域処分場である限り、大量のごみがそこに集中されるわけですが、大量に出たごみを処理処分する、対処療法というか後始末的なごみ処理ではもう何も解決しないのではないか。
 日の出のような処分場や焼却場という施設をめぐる紛争は全国で、今でも起きていますが、そこの地域紛争だけではとうてい解決しないのではないかと考えました。
 そこで「ごみ・環境ビジョン21」発足のきっかけにもなった「三多摩発アクションフォーラム・21世紀のごみを変える」というまさに今ぴったりのタイトルの集まりを1996年12月にもちました。

 環境先進国の筆頭に挙げられるドイツのNPO、「BUND」というグループ、会員が30万人で、何百人、何千人までの日本のNPOに比べて大変会員数の多い、ドイツ最大のNPO「ドイツ自然環境保護連盟」の設立者であるエアハルト・シュルツさんをお呼びしました。
 私たちがごみ問題の活動を始めた頃も、「大量生産・大量消費・大量廃棄」の蛇口を閉めなきゃいけない、循環型社会、ごみの発生抑制ということを自治体も掲げるようにはなってきておりました。しかし、それを実現するのに何がなされていたかというと、実際は処分場をめぐって紛争が起こっていたのです。
 ドイツから見ると、かなり遅れていたといわざるをえないと思うのですが、エアハルト・シュルツさんのお話は、ドイツの循環経済・廃棄物法が施行された年で、リアルタイムのお話を何えました。その中で「ごみ回避」というキトワードに象徴されるような、ごみそのものを作らない社会を作り出すんだという実践活動を、私たちはそのフォーラムで学びました。
 シュルツさんから私たちへのメッセージとして、「ごみは必ず減る」と言っていただいて、私たちはその気になって、「目指すは日本のBUND」と発足したわけです。

ドイツ環境大臣がびんでパフォーマンス
全てのごみの自治体処理を変革

服 部
 お話の中で、とても印象的だったのは、いま日本では、循環型社会をめざそうということで、法律ができ、このようなフォーラムが開かれるようになりましたが、ドイツでも実現するということは、いろんな話を詰めていかなくてはならないという点で、なかなか難しいことだということでした。そういったアクションの一つをご紹介します。
 ドイツの環境大臣がリユースびんを使っていこうというデモンストレーションで、自分の名前を入れたビールをおいしそうに飲むというパフォーマンスを国民の前でするのです。循環型社会というものは、みんなで話し合って合意形成を図っていくということはものすごく大事です。その上でいかに、どんな方向でそれを実現していくのかに主眼が置かれなければいけないと思います。
 私は、処分場や地域の活動なども関わっていますが、有害なもの、あるいはどのような添加物が使われているかわからないものや、ごみのもとになる製品の情報公開がきちんとされないまま、いろいろな質のものがすべて抑制されることなく大量に生産されて、最終的に自治体が処理をするという、そういう時代を変えていかなければならないという認識を持っています。

 よくいわれるように、ごみになるものは始めから作らないことです。再利用できるものに製品の設計を変えていくというのは、ごみ問題に関わる方にとっては共通認識となりつつあります。
 それではどうして実現するのかという時に、自治体に押しつけられている廃棄物のもとになる製品の、製品価格に処理コスト、リサイクル費用というものを上乗せしていく、生産者がそれを負担することによって、その製品、便利さを買う消費者がその価格を払って応分に負担していくというしくみが考えられます。
 しかし、言うことは簡単ですが、なかなか産業界といいますか企業の方が「そうですね」と折り合いがつかないところだと思います。
 そういう意味での拡大生産者責任、実効性のある拡大生産者責任が、循環型社会形成推進基本法には含まれていないのではないか、ということも含め、東京の16の市民団体が円卓会議実行委員会を作りました。

 市民が考える循環経済法とはこういうものではないかということを何点かあげてあります。そこで重要なことは、単なる物質循環ではないということです。ごみの処理処分を経済の変革に向けていくわけです。大量に出た廃棄物の処理処分という今までの延長線上に描かれる循環型社会ではなく、大転換が必要なのではないか、処理処分の過程で自然環境が壊されていくことや、有害物質は作った時点で規制しなければならない、など4点ほど挙げています。細かくなるので後段に譲りますが、そのようなことを短期間に考え話し合ってきました。

 朝日新聞の「窓」というコーナーで法案はあっという間に通過したというように書かれてあります。私も基本法は瞬く間にできてしまったと思います。いろいろな考えがあるということが重要です。
 伊藤さんのお話にも、国民一人一人が使い捨てに甘んじていた、そういうライフスタイルを変えていかなければいけないということがありましたが、国民の間に浸透していくような法案づくりであったかという点には疑間を感じざるをえません。これから基本計画を策していく中でヒアリングされるということですが、私たちは発生抑制、リユース、リサイクルという言葉を、再三再四聞いてきたのですが、 一向に環境は改善されず、有害物資もどんどん放出されています。

 現時点では、とにかく循環型社会についてみんなが合意形成して、それをいかに実現していくかという、そこに重点を置かなければいけない、そのためには国民各層の意見を反映させるような、実効性のある法案であったならばと思います。
 ただ、できたものを嘆いていても仕方がないので、最後に、環境庁が21世紀「環境の世紀」に環境省になることについては環境NPOとしては非常に期待していますが、環境省になってどのように循環型社会を実現されるのか討論の中でお答えをいただければと思います。

小 林
 ありがとうございました。引き続きまして寺下さんからお話をいただきたいと思います。
 

1960年から環境に対する取り組み
年間9,000万枚の買い物袋削減

寺 下
 生活協同組合コープこうべ福祉・環境活動部の寺下と申します。コープこうべの紹介をさせていただきます。まず、生協は都道府県を越えて活動できないのでコープこうべは兵庫県で活動しております。組合員は今年3月時点ですが139万人です。事業内容は組合員への商品の供給事業と組合員の学習・教育活動などです。供給事業は174店舗とトラックで配送する協同購入という形でやっております。コープこうべは1921年にでき、戦前にできた生協は3つしかないのですが、そのひとつです。
 環境に対する取り組みとしては、1960年代後半から、水問題、石けんの普及から始まって、これからお話しするようないろいろな取り組みとなっています。できるだけ多くの組合員が参加できることを念頭において取り組んでいます。
 コープこうべの環境憲章がありまして、コープこうべ全体の環境の取り組みや考え方を述べております。一点だけ述べさせていただきます。
 健康・福祉、平和を守る運動を生協運動の根元的課題としてやっていましたが、環境問題も同じように根元的課題として取り組むと環境憲章では述べております。たとえば商品を供給する場合に、健康・安全と環境がバッティングする場合もありますが、そういうことを考えながら取り組んでいます。

 何点か具体的取り組みをご紹介いたします。まず、特にお店での取り組みの中で循環型社会とからめて2点ほど。1つは買い物袋を持参する「マイバッグ運動」を1978年から進めております。当初はスタンプ制でしたが、なかなか広がらないので1995年からは、基本的にはレジで袋を渡さない、必要な方には5円でお取りいただくということにしました。
 その結果、持参率が14.5%程度だったのが、現状では4人に3人の方が持参されるようになり、かなりの成果を収めています。その結果、年間9,000万枚の買い物袋を削減できています。
 たかが買い物袋かもしれませんが家庭ごみの中では、こういう袋はけっこうな量です。 一人一人にとっては簡単なことですが、毎日の買い物が年間を通じてかなり大きな影響力を持つと思って取り組んでいます。

 もう1つは、多くの店で取り組まれていますが、店頭での容器の回収です。1991年から牛乳パック、アルミ缶、スチール缶、PETボトル、トレイの5品目を店頭にボックスをおいて回収するとともに、サービスコーナーで有料びん、無料びんの回収をしています。年々回収量が増えていて、組合員の中に、リサイクルが広がっています。それとともに、再生品もコープの環境商品として普及に取り組んでいます。
  一方、店舗ではかなりの有機物系の廃棄物が出ているので、まずはお店の廃棄物の削減ということで取り組んでいます。9月に全事業所でISO14001を取得して、店舗では売れ残り品を少なくして廃棄物を減らすことを重点的に取り組んでいます。その結果、97年以降、かなり減っています。それでも廃棄物は出ますので、「エコファーム」という取り組みを98年度から進めています。
 全店舗でなく神戸市と三木市の33店舗ですが、発生する加工屑を回収してコープ土づくりセンターで堆肥にしています。コープと地元農家で(有)みずほ協同農園を作り、これが土づくりセンターの目の前にありますので、堆肥をこの農園で使っています。そして、できた野菜を今度はコープこうべの店舗で供給していくという、 一つの循環のサイクルを構築するという取り組みを始めています。循環型社会という切り口ではこういった取り組みをしております。

小 林
 ありがとうございました。続きまして小寺さんから、循環型社会に向けての企業の取り組みについてお話しいただきます。

 

「地球環境との共存」を事業活動の前提に
年間700万件の修理を行う

小 寺
 松下電器環境本部の小寺です。私は環境に関して10年ぐらい、製品関係は91年にリサイクル法ができた段階からやっておりますのでご参考になればと思います。
 松下電器産業は家電だけでなく産業用機器や部品も製造しております。家電は4割ぐらいですが、皆様とおつきあいできる、わかりやすい部分ですので、家電を前提に話させていただきます。
 環境の取り組みには企業としての基本的な考え方が必要です。これは創業者の松下幸之助が、「宇宙万物と共存する」という崇高な理念を持っておりまして、これが松下らしい考え方であると93年に作った内容で、全社これを基本にしております。
 今の取り組みは、「地球環境との共存」を事業活動の前提にし、循環型経営の構築ということで5つの内容に取り組んでいます。
 グリーンプロダクツ=環境配慮商品、これを支えるものづくりでの工場の取り組み、それから使用済み製品のリサイクル、 一番ベースの環境マネジメントシステムの構築、これについては世界の245の事業所で取得しております。中国33、中南米6というところまで含んでいます。

 それと市民活動、個人の意識改革という観点から取り組んでおります。循環型経営とは、ものを作る動脈と静脈が連動したものを循環型経営と定め、両方の取り組みを行っています。具体的には、SAVE=省エネルギー、クリーン=有害物質排除、リデュース・リュースを含めたトータルな意味でのリサイクル、そして、日本全体のエネルギー使用量に対し、松下製品の使用により、1〜2%の影響を持つのではないかという試算をし、大きな観点から取り組みを考えています。
 それから拡大生産者責任についてコストの内部化というお話がありましたが、我々も取り組んでいますが、なかなか理解してもらえない、売れないという問題があります。企業としてはきっちりとものを製造して、適切な選択をしてもらう、それによって社会を進めていくという大きな使命があり、そういう形で皆さんの協力も得たいと思っております。

 グリーンプロダクツの考え方として、設計=製品アセスメント、部品のグリーン調達、輸送、包装材、それをお客様に届け、それから静脈、回収の仕組みの構築、分解性向上、有害物の使用削減などです。
 一方、長期使用ですが年間700万件の修理を行っております。ご理解をいただきたいと思います。工場に関しては、省エネルギー、化学物質の削減、廃棄物の削減とゼロ・エミツションを目指した取り組みを進めています。例えば廃棄物ですが、91年をベースにして2000年までに原単位25%削減という目標ですが、99年までにほぼ達成しております。

不法投棄が社会コスト増やす
資源の少ない日本での原点はものづくり

小 寺
 家電リサイクル法についてですが、我々も非常な努力をしております。一般廃棄物年間5,000万トンの内、家電4製品は60万トンです。料金は、テレビが2,700円、冷蔵庫4,600円をきっちりと払っていただかないといけない。東京都は冷蔵庫では実際、1万5,000円ぐらいかかっています。我々はある程度数が集まるという前提で設備投資をしております。不法投棄などが増えると社会全体として大きく狂ってしまいます。企業が赤字を背負えと言うことになると、それは消費者にまわっていくことにもなり、社会として全体として廻るように皆さんの協力も大切です。
 実際の運用の仕方ですが、全国に190の引き取り拠点と24のリサイクル拠点を設けています。兵庫県の社町に当社が造った研究を含めた、リサイクル実証施設があり、来年4月に稼働します。
 コストとの関係で、環境会計をやっておりまして、99年度実績で525億円経費をかけています。基本は技術ですから研究開発には、昨年比1.8倍の経費をかけています。コストはかかってもやらなくてはいけないと、メーカーとしては自覚しております。
 市民活動としては、家庭や地域、企業内での活動、マイカー通勤や自動販売機の適正な使用まで含めて取り組み4,000人の社員が環境家計簿を付けています。
 創業者が1918年にアタッチメントプラグを作り、これが会社の起点になっていますが、電球の口金を再利用したものです。できるだけ利用できるものを利用するというのが当社の基本姿勢ですし、資源の少ない日本でのものづくりはそうして進んできました。環境の取り組みも同じことだと思います。その原点に我々は立ち返るべきということで社内の啓発を進めてきました。

小 林
 どうもありがとうございました。次は、西川さんの番ですが、先ほど、基調講演で「市民から見た循環型社会」のお話しをいただきましたので、私の番といたします。


「汚物掃除法」ができて100周年
「循環社会基本法」が策定

小 林
 私は大学で衛生工学を勉強し、その当時からごみに関係しております。本日、循環型社会の課題ということで廃乗物に関して一、二お話ししたいと思います。本年(当時2000年)は奇しくも1900年に汚物掃除法ができてから100周年です。
 当時コレラが蔓延して、衛生改革の充実の必要から、市町村が汚物を責任を持って処理するという、世界的に見ても早い時期の制度化でございました。1954年に近代化として清掃法に改正され1970年の公害国会の中で廃棄物処理法となりました。この時点では公害とはみなされず、廃棄物、下水道いずれも公害行政から一歩離れたところで制度化されました。当時は自動車が廃棄物になるとは想定されていなかったし、ぼろ切れも市場経済の中で廻っていた時代ですから、リサイクルには廃棄物からは極力踏み込まないという方針でできた法律です。
 これが大きく変わったのは1991年、平成3年の改正で、目的の中に「廃棄物の抑制及び再生」を書き込み、事業者サイドの再生資源利用促進法と車の両輪で資源化に向かおうと大転換をしたのです。100周年目の本年、循環型社会形成推進基本法で環境全体の中で位置づけられ、循環を目指してということになったのです。

 循環型社会といっても、どこから始め、何を目標にするかで、イメージやゴールが異なるのではないかということを私は長く思ってきました。今回は廃棄物から入った循環型社会ですが、資源の最大限有効使用から入る循環型社会、エネルギー節約から入る循環型社会、生活の中で時間を大切にしたいところから入る循環型社会、いずれもゴールが違うのではないか、それを明確にしないで議論が進んでいることが混乱の一つの理由と思います。
 今回、廃棄物からスタートしたから、廃棄物に非常に大きな期待が寄せられすぎているのではないか。廃棄物を減らし埋立て量を減らす。これが広い意味の循環型社会の実現だと描かれると廃棄物としては荷が大きすぎてうまく動かないのではないかと心配しております。
 今回の基本法の中で廃棄物の優先順位が決められて、理念としてはその通りですが、現実の施策としてはリサイクルするから埋め立て地も焼却場も要らない、リサイクルの徹底が先で、その後で焼却場を考えればいいという、白か黒かという割り切った議論が多いのです。

 それから、リサイクルは、需給、その他の条件で変動しますが、それをどこで受けとめるかというと、狭い意味での廃棄物処理のところで受けるしかないので、ベースの、狭い意味の廃棄物処理をきっちりすることが循環型社会を決める一つのポイントではないか、現実の施策では、解がいくつもある中で、広く議論をしながらベストミツクスを出すことが現実政策ではないかと考えます。
 もう一つはリサイクル、廃棄物とも現在排出時点でレッテルを貼り、それで最後までいきます。 一般廃棄物は最後まで一般廃棄物、産業廃棄物は最後まで産業廃棄物、容器包装とすれば容器包装のままリサイクル、しかし実際の受け皿からどう処理をしたらよいか、あるいはごみを排出する立場、分ける立場でどうしたらいいか、そちらの視点が現在、政府の打ち出している方向では非常に弱い、そのために住民やリサイクル事業に大変負担をかけている、というような状況のようです。
 最後に、これだけ複雑な法制度ですと、地方自治体レベルでこれを総合していくポストが是非ほしいと思います。国のように地方でも縦割りのままでばらばらという状況が心配されるので、是非、総合的な取り組みの必要性を感じています。

 以上を持ちまして、パネリストの報告と意見を終わり、少し討論に入りたいと思います。多岐にわたりますので柱を立てまして、会場からのコメントをいただきながら進めたいと思います。

循環型社会の位置付け、課題と経済性を考える

小 林
 1つは、循環型社会とは何か、どういうふうに位置付けるかということ、
2番目は循環型社会からみて、現在抱えている問題は何かをもう1度整理してみたい。
それから3番目に、循環型社会を目指す上でコスト、経済性をどう考えるか、
4番目に、いくつか実現手段が提案されていますが、そのうちどれを優先し実現させていくかということ、最後にパネリストの感想でまとめたいと思います。

 循環型社会は、言葉としては広く使われていますが、内容としては理解にかなりの差があります。自然系、宇宙からみた大きな循環の中で今回の循環型社会をどう抑えるか、から入ります。
 会場の川島さんからですが、物質投入量を極小化するという考え方とリサイクルでエネルギーを投入する考え方の間にギャツプはないかという問題提起をいただいております。
 会場の松本さんからは、検討過程に比べて、できあがった法律は循環型社会の理念という点でかなり後退している、自然環境との共生、調和という視点が抜けたのではないかという指摘をいただいております。これらを含めバネリストから御発言をいただきます。


伊 藤
 今回の法は、出発点は廃棄物から入ったのですが、生産・流通・廃棄または再流通という流れと環境との関わりに焦点を当てたのが今回の法だと申し上げたい。
 「循環」という言葉が環境政策で初めて使われたのは、1994年の環境基本計画です。「循環を基調とする経済社会の実現」というもので、この循環はものの流れの循環のみならず、自然界の循環、たとえば水循環や炭素循環、窒素循環などの自然循環の観点が環境政策上、大変重要だということは十分認識しているのですが、現在の直近の課題である廃棄物問題に焦点を当て、ものの流れに焦点を当てて、対策の方向を出すことが今回の基本法としての提え方です。
 自然循環が大切だということは、基本法の中でも、自然界の物質循環についてきちんと配慮するように明確化されています。有害物質の問題も、当然ものの流れとして視野に入れ、ものの生産の時には、できるだけ使わないようにということも明確にされています。また、環境との関わりだけでなく物質の有用性を考慮した循環を考える必要がありますが、環境庁あるいは新環境省だけでは難しいところもあり、そういった点も視野に入れて循環基本計画を作っていかなければならないと考えています。
 そこで、環境大臣が責任を持って計画の案を作りますが、資源の有効利用を所管する大臣との協議についても規定しています。廃棄物問題から入って人間が作り出すものの流れ、それを環境との関わりでどのようにしていけばよいかという視点で今回の法を作りました。

LCAの手法を確立して判断、つなぐ作業が循環型をつくる

小 寺
 我々は資源の投入、エネルギーの投入、排出の最小化の考えに立った循環型を考えています。物質とエネルギー投入量を最小化することに対して相矛盾する場合があるのではないかと思います。そこでどういうふうに判断するかはライフサイクルアセスメントの手法、資源の採取から、製品の廃棄までの総合的な見方で判断する手法が、まだ確立していませんが、だんだん進んできています。それによって判断ができていくと思います。

寺 下
 今の話には賛同できます。販売業務と組合両方を持つ生協から、少し違った点をいうと、今回、循環型社会で目指すべきものはつながりだと思います。今まではものが上流から流れるだけでしたが、循環型になると、場合によっては消費者が資源の提供者になっていくかと思います。それらを含めてこれまで製造・流通・販売・消費・廃棄、これらが全部切断されていたものをどうつなげていくか、情報・製品情報もありますが、現場での混乱をどう共有化していくのかということも循環型社会の大きなテーマだと思います。

服 部
 環境庁の伊藤さんのご発言は同じ条文を読んでも読み取り方が違うという印象を受けるということだと思います。けれども厚生省・通産省のご説明を聞いても、どうしても大量リサイクル社会という印象を受けるのです。有害物質規制も、今回の法は理念をいくらかかげても実効性がなければ、理念だけに終わると思います。循環の輪の中に有害物質が含まれてしまっては自然の生態系が壊れてしまうわけです。
 印象深かったのは松下電器の話で、製品にコストの内部化をすると売れなくなって、思うような環境政策ができなくなる、大量生産・大量処理・大量廃棄という中身のままで、理念だけは循環型社会を掲げるというちぐはぐな印象を消費者として受けてしまいます。  製品にリサイクルコストを内部化することによって、長寿命の製品を作り、それを消費者も納得して買っていく、それによって有害物質を減らしていくという筋道が見えてこないといけないと思います。違う立場のすりあわせがうまくいっていないと感じます。
 環境庁の伊藤さんの実際にどのようにしていくのかという中で、言葉の端々からも理念とはかけ離れていると感じます。自然生態系、資源の世代間公平等を考え、環境に配慮した経済、ものづくりそのものを変えていかねばならないという世の中で、相当覚悟した転換が必要と思うのですが、理念倒れになるという危倶を持っています。

西 川
 循環型社会を目指すために私は「心」の問題から考えてみます。昔から「もの」を大切にする気持ち、「もったいない」という言葉は、リサイクルを支える日本人の気持ちを表す言葉だと思います。昔ながらの気持ちを取り戻し、子どもの頃から、環境教育を身につけさせることが大切です。多くの商品が使用された後、企業が引き取るという「もったいない」を生かす社会が「循環型社会」ではないかと思います。
 また、ここに「無関心層から見た環境への意識をもっと掘り下げるべきではないか」という質問がきていますが、実際、熱心な人は何%かで、やはり、無関心層があります。京都市では、地域女性会が環境学習や地域活動を継続していますが、今までは会員だけを対象にしていましたが、今年(2000年)から、男性やお年寄りなど地域の人にも呼びかけ、参加がありました。
 こうして関心を広げつつ、「もの」を大切にする価値観を一人ひとりのライフスタイルの中に見直していきたいと思います。

循環型社会の矛盾、大量生産でなく「適量生産」

小 林
 現在の大量生産・大量消費・大量廃棄型経済社会からの脱却からスタートするという認識で立法されたという説明がありました。私たちは大量生産の恩恵を受けているという面があるが、果たして大量生産は変えねばならないのか、問題は使用せずに廃棄することを見込んでの大量生産や短寿命での使い捨てが前提の大量生産ではないか、など言葉は丁寧にしないと議論が空転しないかという懸念を持っています。 もう少し丁寧に、現在何が問題かを考えてみたいと思います。
 会場の松田さんから、問題は何なのか、最終処分場の不足か、資源の枯渇か、また、循環型にしたときにどういう矛盾が生じるのかという質問、また向井さんからは、理念に反してPETボトルが大量に生産され、廃棄物に歯止めがかかっていないという意見、拡大生産者責任については何人か質問がきています。EPRが大事だと言いながら、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法に十分反映されているのかという質間、今回の基本法で本当に拡大生産者責任が織り込めているのか、リサイクルの費用は拡大生産者責任では誰が負担するのか、特に廃家電の処理費用を消費者が負担することは拡大生産者責任に則っているのかという質問が出ています。
 また、賞味期限前でもより新しいものを買うという消費者の行動にも問題があるという指摘、自動車の台数を減らす、自動販売機の設置を禁止する、という徹底したところヘ踏み込んでの検討が必要ではないかというご意見もいただいています。これらを踏まえ、循環型社会の視点からの現在の問題はどんなものでしょうか。

小 寺
 企業としては、同志社大学の郡嶌孝教授の「適量生産」がぴったりかと思います。私たちの会社で2010年に社会がどのように変わるかを想定しますと二極分化ではないかと。長期にものを使い続けるという流れと、ものから機能へという流れの二極を想定し、長期使用型、飽きのこない製品、きっちりとメンテナンスするという仕組みを作っていこうと思います。
 片方で安全性という問題がありますのでそういう取り組みが一つあるかと思います。サービスで誤解を招くのは、人件費です。専門能力があるから故障箇所を短時間で見つけることができる。新製品が安くなりすぎたことに我々も困っているところが問題で、企業も努力します。また、レンタル、リースでやっていくか、事務機器と違い家電製品のように10年も使うものはリースでは難しい。かつての松下の水道哲学は、ものが不足していた時代のもので、現在は物質面・精神面両方で社会が豊かになることを目指しています。

使わない人も支払う、法律では生産量は規制できない

服 部
 容器包装リサイクル法とダイオキシン規制の観点から国のほうですすめているごみ処理の広域化・大型化という二点から問題点について触れたいと思います。容器包装リサイクル法では、リサイクルが免罪符となってさらにワンウエイ容器が増えています。循環型社会形成推進基本法にはそれを見直す方向に働くかというと、そうではなかったわけです。リサイクル費用がメーカーより自治体負担が大きく大都市が容器包装リサイクル法を敬遠していることは、その実態だと思います。そのヘんの現状をどのように理解されているのかといわざるをえません。

 PETボトルのリサイクル費用、1本数十円とかいわれていますが、これが販売価格に上乗せされていたら、消費者も買う量を減らしたりしてやがては、法の優先順位の上位にあがっているリユースに近づきます。デンマークなどではビールはすべてリターナブル容器で、そういう具体的な政策を出さないと、ワンウエイ容器の氾濫は止められません。 リサイクル法がそういった抑制になったかというと、拡大生産者責任は、ほとんどお題目に過ぎないと思えます。使い捨て容器を使わない人の税金もメーカーの後始末に使われるという明らかな矛盾も解決しません。ここを変えていく法律でなければ拡大生産者責任という言葉にすぎません。
 また、私たちの経験でも大型炉を作ったためにごみが足りなくなるということがあります。ごみの発生抑制に向かっているのに、ダイオキシン規制に結びつくとしてもやはり無駄な施設ではないでしょうか。ごみ処理やリサイクルの受け皿を作っていくことと、ごみの蛇口を締める循環型社会作りとどう整合するのか聞きたいと思います。

小 林
 現在も容器包装リサイクル法では生産量や使用資材をコントロールするという規定はありません。そこでのブレーキが働いていないというのは大本の問題としてあります。
 それから、現実の社会ではリサイクル品が新規資材を使った製品より高いということがかなりみられます。にもかかわらず努力する企業も市民もいるが、限度がある。循環型社会に向かってコストが増加する場合、どこまで負担するのか、どこまでなら認めるのか、どこを越えると転嫁できないのかなど、経済的視点が必要という意見、消費者はどこまでコストを負担するだろうかという質問をいただいています。

寺 下
 大きな問題ですが、コープこうべは環境商品を130アイテムぐらいもっていますがその基本的考え方は、環境商品だからといって同等の商品に比べて高くしないというものです。高くても環境によいものを買う人もいますが、社会全体を考えれば無理だと思います。コープこうべでは古紙のトイレットぺーパーのほうが安いので8割が古紙のものです。環境によいものがコスト的にもメリットがあるようにしないと難しいと思います。できれば法律や規制などで環境に関する社会コストを商品に転嫁することを日本全体としてやっていき、環境に配慮しないものは高いというようにしないと広がらないと思います。

小 林
 自然体で循環型社会に流れるための提言をいくつかいただいています。デポジットの採用、製品のコントロールのお話など。具体的な方策、最優先課題は何かということについてパネリストのご意見をお願いします。

リターナブル統一びんは法律で、経済的な優遇税制が必要

服 部
 意識のある方だけが環境に配慮した商品を選択するのではなく、製品づくりには、規制、基準というものが必要です。循環型社会は製品に、処理・リサイクルコストを内部化し、環境によいものづくりにしていくのが最短の方法かと思います。そのへんを基本計画の策定時に是非とも加えていただきたいと思います。

寺 下
 びんをリターナブルの統一びんにしたらどうかというご意見が出ていますが、なかなか一事業体では難しいです。こういったことは最終的には制度化、法律化でやらないと難しい。
 ここにお越しの市民の方がまず市民に広めて世論作りをしていかないとなかなか国も受けないでしよう。ホームページのパブリック・コメントにも企業だけでなく市民の意見も出していくことが今後できることかと思います。

小 寺
 コストが受け入れられるかどうかは大きな視点です。たとえば当社は鉛フリーのハンダを2002年までに全製品に導入する目標を上げていますが、かなリコストアップになります。
 しかし、将来報われるだろうと取り組んでおります。省エネはわかりやすいのですが、リサイクルとクリーンについてはなかなかわかりにくい。将来に向け、社会全体にとってコスト的にもいいことをしているということが、社会全体としてわかるような仕組みが必要です。
 その意味で、自治体の家電リサイクルは大変わかりにくい。東京都で冷蔵庫1万5,000円、メーカーでは4、700円で消費者にはわかりにくい。きっちりやっているメーカーの品物を買おうというようにならなければいけない。優遇税制など、メーカーや消費者にインセンティブが必要です。

西 川
 循環型社会実現の方策として、廃棄物リサイクルを上手く回すためには、もっと経済的な視点を入れないとうまくいかないのではないかと思います。
 例えば、容器包装リサイクル法よりデポジット制度の導入、また、再生品の利用促進のために、バージン製品より安く売る(トイレットペーパーなど)とか、再生紙を上質紙より安くし、その普及率を高める必要性があります。
 私たち消費者は、環境に配慮した商品を買おうという意識は十分もっていますが、要は値段の問題です。また、家電製品も省エネで年間いくら電気代が安くなるとか、明示していただけたら消費者も環境に優しいものを買うでしよう。

伊 藤
 拡大生産者責任について、この法で位置づけたものはドイツのそれに比べて決して弱いものではありません。ドイツでも実体法については個別に法規命令などで作るようにと決められています。
 拡大生産者責任には3つの柱があります。設計段階での配慮、情報提供、適切な役割分のもとでの引き取り・リサイクルなどです。
 容器包装リサイクル法、家電リサイクル法はEPRの考え方にもとづいています。家電のリサイクル費用についても議論はありましたが、排出時に消費者が負担するということになりました。消費に伴うコストという考え方です。これでうまくいかなければ循環型社会形成推進基本計画の中で議論されていきます。
 PETボトルについては、増えているのは水とお茶で、嗜好や利便性があり、法律ができて増えたということではないと思います。市町村の負担について、容器リサイクル法ができたとき、自治体が分別収集は自分たちでするという議論もあり、こうなりました。
 この法律が今のままでいいのかという議論はあり、これも循環基本計画の中で議論をどんどんしてほしいというのが本意です。費用は最終的には便益を得ている人が払うのが原則ですが、やり方は大切です。デポジットの意見がありますが、一時的にせよ国民に新しい負担を課すことになり反対もあり、調査・研究などに努めていきたい。
 製品そのものを規制することについては、コンセンサスが難しいが、必要なら検討したい。環境庁のパブリック・コメントにも意見を出してほしい。ただ、社会的仕組みだけで循環型社会を作ることは不可能で、事業者や市民の自主的取り組みが必要で、今日、環境カウンセラーの方が多く見えているのは非常に心強いです。

小 林
 会場からまだ取り上げていない多くの質問をいただいています。法律の中身に関すること、来年からの環境省の仕事に関することなど、伊藤さんにしばらく残っていただきますので、個別にお聞き下さい。パネリストの皆さんありがとうございました。
 循環型社会を目指して考えるべきこと、なすべきことについての有意義な議論や問題点の指摘があったと思います。循環型社会形成推進基本法は枠組みを示すもので、これからの基本計画や個別法で具体的に展開されるものです。これから最も重要なことはみんなで大いに議論して国として合意に向かうことと考えます。会場の皆さん共々、さらに理解を深め、行動することを今後の課題として、フォーラムを閉じます。


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