市民ごみ大学セミナー2001 実施報告


第三回 「地域が支える環境学習」
環境まちづくりのビジョンを描こう

開催日 2001年12月 2日

講師の森さん
 2001年度3回目のごみ大学セミナーを開催しました。

 エコ・コミュニケ−ションセンター(ECOM)代表の森良さんに「地域が支える環境学習」というテーマで教えていただき、参加者同士でグループワークに取り組みました。

 今回は、ごみかんの会員で環境学習部会メンバーの滝口さんからの報告です。


ごみ・教育・環境学習がリンクして

 今年の4月から開始される小中学校での「総合的な学習の時間」(以下、「総合的学習」)には柱となるテーマのひとつに「環境」があり、「総合的学習」では積極的に地域住民の参加も歓迎されるといわれている。
私は、以前から「ごみ」や「自然」を含めた環境問題が学校ではどう扱われているのかも気になっていた。また、一般的におとなの感性では「ルールやマナー」か「分別・リサイクル」レベルの「ごみ」問題だったり、抽象的に守るべき対象レベルの「自然」だったりで、その上、それら二つは別ものと捉えられ扱われてきた長い経過がある。

  私の場合も、日の出町の最終処分場問題に関心があったし、「ごみ・環境ビジョン21」の環境学習部会に顔を出したり、多摩市の環境部が市民に呼びかけた「たまごみ会議」や「多摩市民環境会議」に参加していながら、「ごみ」と「自然」は近くにあるのに長いこと別テーマとしてしか捉えることができないできた。
  自然循環に乗れないもの、あるいはそれを阻害するものこそが「ごみ」なのだ…と、今思えばシンプルであたり前なつながり(関係)が、ようやくストンと腑に落ちたのは、実に「ごみかん」の環境学習部会が昨年7月に行なった「ビジョン座」の「親子ごみ環境講座」を準備する過程であった。

 そして、子どもたちだったら、もっとスーッと体得できるんじゃないか?…また、子どもを通じて、おとなたちに「ごみ」と「自然」の問題を伝えていけるのではないか?…なんてこともずっと考えていた。
 それともう一つ、自然の不思議や神秘にワクワクドキドキしたり、その中にいることで心身が安らいだり恐れおののいたりする感覚を、子どもたちといっしょになって楽しみたいなぁ、と常々思ってきた。
すでに自分の子どもたちは20才前後ということもあって、何とかそのチャンスはないものか、ずっと「待機」の状態だった。

 だから、今回のセミナーはそういった意味でとても楽しみな企画であった。「…参画したいと願う市民サイドにとって、どんな風にアプローチすれば良いのか、何が可能なのか、手探り状態です。
…環境学習を軸に、学校と地域と市民のネットワークをどのようにつくり、機能させ、地域をフィールドに展開してゆけばよいか、を考えます。」(セミナーの案内チラシより)まさに、私にピッタリ!

そして、ごみ大学当日・・・・・

プログラムは以下の通り
@ 子どもたちと環境を学ぶ……プログラムの体験と振り返り・解説
A たんけん・はっけん・ほっとけん……地域でのプログラムの展開の方法
B 環境教育の題材、しくみについて整理してみよう…カード式整理法による課題整理
C 発表と討論・まとめ

グループワークの一こま
 森さんの話とワークショップは、以上のようにとても盛り沢山だったので、私の関心に沿って、@の「子どもたちと環境を学ぶ」の内容をご紹介します。
 まずは体験から入ることが肝要!…ということで、フィールドワークの例がいくつか紹介された。
 最初は「葉っぱじゃんけん」。グーなら、グーと見える(感じる)葉っぱや木の実を探してきて、背に隠し「じゃんけんぽーん!」と前に出す。遊んだあとはグー、チョキ、パーの3つに分けて並べ、みんなで見る。
…色、形など、人による捉え方の違いと類似性の面白さ。

 次は「葉っぱめくり」。葉っぱの下にいる生きものを探す。初めは土や落葉に触るのを嫌がっていた子どもたちも、気がつけば地べたに座って探し出す。
 どんな虫がいる? ゴミムシ、ダンゴムシ、ハサミムシ…じゃあ何を食べて生きているのかな? …今度は上を見てごらん、木の実をつついている鳥がいるね…つながりと多様性。自然は循環していること、食物連鎖で成り立っていること。
 では、人間の生活はどうなっている? 今朝食べたものは何? それはどうやって作られて、どこへ行くの?
 紙の真ん中に自分を描き、絵にしながら、そのルーツと行き先(材料とその変遷プロセス)をたどってごらん。どんどん質問し、突っ込みを入れる。教えるのではなく、問いかける。…循環していないね、だから「ごみ」が出るんだね。

 そんな風にどんどん広がっていく、つながっていく。
まとめて言うと、子どもたちの声をよく聞き、問いを投げかけることをベースに、実感を伴う体験を通じ、動機づけ(気づき・発見)を促し、分かち合い(気づき・発見をみんなで出し合い、話し合い)、振り返り(体験しっぱなしでなく、考察し必要な知識を得、整理して概念化し、課題化し)、行動へといざなう。

 「環境を学ぶ」とは、人と自然、人と人との関わりやつながりを学び、自分を見つめ生き方を考える…つまり、循環・共生・参加を体得することである、ということだ。(あれれ、こんなまとめ方をすると難しい話になってきちゃったが…森さんの話はわかりやすくスーッと理解できた)
また、参加者が特に楽しんでいたのが、Bの環境教育の題材・しくみについて整理してみよう」のワークショップ。「題材」か「しくみづくり」か…各グループでやりたい方を選び、カード式整理法を活用して課題の整理をしていく。

参加型学習の可能性!

 当日配付された森さんの資料には―――
会場の一こま
 「ワークショップのような『参加型学習(身体的・感情的・思考的な参加)』は、出会いと対話による学習であり、まわりの世界との相互作用を通じて、自分の持つ情報や世界観を再構成していくこと、そして学習を学習者自らが創っていくものである。
そう考えると、その成果は、新しい知識に留まらず、現実の世界との新しい関係を創ることに気づくだろう。
 参加型学習とは、学ぶことを通して、人間や社会を変えていく学習でもある」――と。
 「総合的学習」はすでにほとんどの学校で試行的に進められているが、活用・運用の仕方によっては、世界がどんどん広がっていきそうだ。
「そんな夢みたいなことを期待されても困るよ」と教員からは言われそうだが、私たちにとっては、やっぱり今がチャンス!!(懇親会の席上、多摩市在住のごみかん代表は「多摩で絶対やるからねー!」とビール片手に元気な声を発していたっけ…)。
森さん、たくさんの事例とノウハウ、そして、やる気と元気、確かに受け取りました。ありがとうございます。
(多摩市 滝口直行) 

今回の企画のキーポイント!(森さんの話の中から)

♪ 多くの教員は、自分から外に向かってアプローチすることに慣れていない。
  (人材リストがあってもあまり活用されていない)→こちらからの積極的な売り込みが必要。
♪ 住民側の人材と学校をつなぐコーディネート役の人間(グループ)が必要。
♪ そして、全体を見通した上での「しくみづくり」を行なっていくことが必要。


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