エコセメント・シンポジュウム

各自治体の徹底討論と責任ある検証を!
吉崎洋子(ごみ・環境ビジョン21)

 99年 1月31日、処分組合主催のシンポジウムで、エコセメント計画に対する20分のプレゼンテーションを行い、また、壇上での論議に加わって発言いたしました。ここに、前後の経過も含めてのご報告とさらなる問題提起をしたいと思います。


ごみは燃やし続ける、エコセメントどんどんできる
こんな安易なやり方でいいのか
 ごみかんが出した公開質問に対する処分組合の回答の席上(昨年11月末)で、私たちが数字的にもっとも問題にした焼却灰の発生予測量が、2ヶ月後の最終報告書の段階では、1万トン下方修正されました。

 指摘をうけて再検討し、徹夜の作業をした結果とのことですから、市民の提言に対する姿勢と数量算出根拠の精査に関する努力は評価するものですが、基本的な点て問題を残しています。
この数値は、ごみ減量計画を含む各市町村の排出予測量を踏まえた『第二次減容化計画』をベースにしているとのことです。
しかし、この計画の目的は「処分場の延命のため」であり、「搬入量割り当ての厳守」を果たすため、「プラスチックの全量焼却」などの場当たり的な減容化を招きました。

 一方エコセメント計画において、日量410トン(年間処理量12万5千トン)の焼却灰処理施設は、同時に毎日ほぼ同量のセメントを生産する工場であり、灰を原材料とする以上、「ごみの焼却処理」をごみ政策の中でどう位置付けるかの論議なしに決めてしまうのは、余りにも安易であり危険です。

 循環型社会をうたう三多摩の市町村が、もし暫定的にエコセメントを採用するとしても、脱焼却のスケジユールを描いた上で、右肩下がりの曲線の中での施設稼働とするべきです。各市町村の政策の裏づけのないまま施設規模を全体で先に決めてしまうことは、数量だけの問題にとどまらないのです。

 シンポジウムでは、市長でもある土屋管理者にここを問いたかったのですが、論議はかみ合わず、「高度な科学技術であるから市町村レベルでは判断できない、都や国のお墨付きがあれば大文夫」と繰り返されては、より不安にならざるを得ません。
市民よりも企業に寄り添う省庁の体質は、依然として変わっていないのですから。


市場原理無視の施設建設は
自治体の財政負担増から破綻を招くのでは
 いま、三多摩の市町村が、この計画を進めるか否かにあたって、もうひとつどうしても厳しく検討しなくてはならないのは、財政負担に関する点です。エコセメントは灰1トンあたり2万2千円〜3万円のコスト(維持管理費)がかかります。
一方、普通セメントのコストは2千円〜5千円と1/5〜1/10で、製品を市場に出すためには、差額分が自治体負担となります。

 負担を軽減するためには、ごみ減量すればいいわけですが、いったん作った工場の維持管理費は一定レベルでかかり続けるわけですから、トンあたりコストは上がります。ごみを減らせば減らすほど高くつくのです。
市場原理をかけ離れた設定で市場での流通を前提にすることの危うさがここにはあります。

 また、セメントは現在も供給過剰なうえ、取り壊したもののリサイクルも進んでいる中で、既存の市場に割り込んでいく構造になります。
しかも、報告書にあるように、焼却灰セメントは需要に合わせての生産調整はできないのです。

 この自治体のコスト負担については、新たなに処分場をつくることとの比較で「安くつく」といっているのですが、「資源循環システム構築」とこそ比較すべきです。
さらに言えば、三多摩にとっては日の出の処分場との二重負担を負うことになるのです。

 3月議会には、処分組合の規約改正が各市で提案されるようですから、事業主体も自動的に確定してしまいます。先行き破綻する危険も秘めたこの計画にどう対処するか、いま、間われています!



本件に関して読売新聞の報道を紹介します
 「エコセメント」テーマに、田無でシンポジュウム
 ごみ埋め立て処分場の延命化を目的に、多摩地区の自治体が導入を進めている「エコセメント」について論議する「第4回どうなる!どうする!多摩のごみシンポジウム〜エコセメントでごみ処理を変える」が31日午後1時半から、田無市本町、田無市民会館公会堂で開かれる。
ごみの焼却灰などを主原料にセメントを作り、消波ブロックや土壌改良材などの用途が見込まれている「エコセメント」。
その製造技術や安全性、16年が約30年に延びるとされる最終処分場の延命効果などの課題について話し合うのが目的だ。
シンポジウムではまず
「循環型社会に向けた技術開発」と題して京都大の平岡正勝名誉・教授が基調講演。
多摩地区のエコセメント化施設導入の経緯や今後の手順、安全性について、処分組合の飯山幸雄事務局長が報告し、
市民の代表として、市民グループ「ごみ・環境ビジョン21」の吉崎洋子代表が意見を述べる。
さらに吉崎さんや平岡名誉教授、組合管理者の土屋正忠・武蔵野市長らが、エコセメント時代のごみ減量化などをテーマに論議する。
読売新聞 99年1月23日


 ごみ問題に取り組む市民グループ「ごみ・環境ビジョン21」代表・吉崎 洋子さん

 ☆ 『出さない知恵』模索   行政と「対立」を「対等」へ

 1996年12月、「21世紀のごみを変える」と題して小金井市で開かれたフォーラム。
先進的なごみ政策で知られるドイツのNGO「ドイツ環境自然保護連盟」(BUND)の設立者の一人、エアハルト・シュルツ氏の講演を聴いてこう確信したという。
 講演では、政策を提案し、行政や企業を動かしていくBUNDの活動が紹介され、最後に、シュルツ氏は「ごみをなくすことは可能。市民や自治体、生産者などが一緒に協力することが必要決してあきらめないで」とメッセージを残した。
 政策の決定に行政側が主導権を握る現状にもどかしさを感じていたためだろうか。
「市民運動も力を持てるんだと、目が覚めるような話ばかりだった。シュルツさんに勇気付けられた」と振り返る。
このフォーラムがきっかけで作られたのが、昨年5月に発足した「ごみ・環境ビジョン21」(国分寺市)だ。
 ごみ問題と真正面から、向き合うようになったのは、「生活者ネットワーク」の町田市議を務めていた1993年。
日の出町の処分場問題を調べる機会があり、当時ごみ焼却灰を埋め立てていた谷戸沢処分場の汚水漏れ疑惑や第二処分場用地選定の安易さを知った、という。
その後は「自分たちが管理できるごみ保管庫を作ろう」と訴える市民グループの結成にかかわり、三ツ塚処分場用地内のトラスト共有地の地権者にもなった。
 しかし、行政との対立は深まったが、肝心の間題解決の道筋はなかなか見えない。
このため、ごみを出す側の住民として、ごみを出さないシステム作りに運動の軸足を移すことに。
そこで出合ったのがシュルツ氏の励ましだったという。「ごみ・環境ビジョン21」は、すでに「市民ごみ大学」を2回開催し、環境教育や自治体のごみ行政を考えた。
ごみ情報誌「ごみっと・SUN」も発行。メンバーも地域でごみ問題に取り組んできたつわものぞろいで、情報基地としての活動も地についてきた。今、注目しているのが、多摩のごみ処理を大きく変える「エコセメント」計画。突然、浮上したこの計画に対し、検討している都三多摩地域廃棄物広域処分組合に昨年10月、公開質問状を提出。
 さらに、組合に招かれて、今月31日のエコセメントを考える処分組合のシンポジウムで市民の代表としで発言する。
エコセメントは、ごみの焼却灰などを主原料に製造するセメント。多摩31市町村が導入に向けて動き始めている。
「エコセメント計画の策定を半年間凍結し、まず、ごみの大幅な減量計画を各自治体で立案すべきだ」シンポではこう提案するつもりだ。生ごみや紙ごみなどリサイクルの余地がある中で、現在の焼却路線の延長であるエコセメントヘの疑間が払しょくできないからだ。
 「あえてシンポに参加しようと思ったのは、行政との対立構造を一度壊さないと、何も変わらないから。
責任ある市民参加のきっかけになったらうれしい」行政と市民の新しい関係作りに向け、あくまでも本気だ。
問い合わせはごみ・環境ビジョン21へ。
読売新聞 99年1月25日


 エコセメントでシンポ、導入へ溝埋まらず
 ごみの焼却灰などを主原料にセメントを作る「エコセメント」事業について考えるシンポジウムが31日、田無市民会館公会堂で開かれたが、主催者で事業への理解を求める都三多摩地域廃棄物広域処分組合と、導入に慎重な対応を求める市民グループとの間の溝は埋まらなかった。
事業の目的は日の出町のニツ塚ごみ最終処分場の延命化。
「早急に導入すべき技術として適切」との導入基本計画を策定した同組合からは、「二ッ塚の次の第3処分場はほとんど不可能。
安全性は組合独自で検証できないが、国が大丈夫だと言っている。
エコセメントを新しい資源循環型社会の1歩になるように考えていきたい」との考えが示された。
これに対し、市民グループ「ごみ・環境ビジョン21」の吉崎洋子代表が発言し、「行政の中で十分議論がされていない。
半年間、スケジュールを凍結し、各自治体でごみ減量の目標を盛り込んだごみ処理計画を策定すべきだ」と提案した。
同組合の管理者の土屋正忠・武蔵野市長は「現実としてむみはゼロにはならず、手を打っておかないとと思っていた。都からエコセメントの提案があって、これだと思った」と行政側の事情を訴えたが、市民グループ側の理解は十分に得られないままに終わった。
読売新聞 99年2月1日


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