京都府八木町・八木バイオエコロジーセンター
[ 家畜糞尿等再利用施設 ]
最終更新日 2000年 5月 6日

 ごみかんの「生ごみ交流会」にて出席者の野上 圭さん(奥多摩町・フリーライター)さんの報告と朝日新聞 2000年 4月22日付け夕刊『京都府八木町・家畜のふん発電』の記事で八木町の実施例を知った。早速、同町・農林課にお願いして資料を送っていただきました。
 八木町のご厚意に報いるためにも、私たちだけの資料にしておくのは勿体ないと考え資料から抜粋して掲載することにしました。
 文中の誤字や解釈の誤りなどの責任は“ごみかんWeb Master”に有ります。


中川 泰宏 町長 ごあいさつ
 私たちは、今日われわれが享受している繁栄を維持しつつ、この素晴らしい環境を子孫に引き継いでいかなければなりません。ところが、私たちが余りにも便利な生活を追求しすぎたため、地球温暖化、オゾン層の破壊、海洋汚染などの環境問題が生じるようになりました。これに対し、私は従来の経済成長(生活水準の向上を保ちながらの環境保護の実現は、人類の英知を集結した技術により対処できると考えています。
 今回完成したバイオエコロジーセンターは、家畜の糞尿と食品工場から出る有機性廃棄物により「消化ガス」を発生させて発電するものです。さらに、発電後に残ったものを使って脱水ケーキをつくり、良質の堆きゅう肥として農地に還元することができ、農畜産面 からのリサイクルシステムの実現が可能になりました。
 八木町は、今後、豊かな自然環境を守り、おおらかで美しく快適な生活環境づくりをすすめるなかで「地球にやさしい町づくり」を目指すと同時に、人木町新エネルギービジョンに基づいての事業推進を図っていきたいと考えています。


目  的
 この施設は、家畜糞尿処理を単なる堆肥製造のみという従来の方法にとどまるのではなく、家畜糞尿を嫌気性発酵させることで「消化ガス」を発生させこれを用いて発電を行うものです。
 このことにより施設内で消費される電力はすべて賄うことが可能です。また地球環境においては発電用の石油等(化石燃料)の使用縮減を図るとともに、畜糞尿から大気中に放出されていたメタンガスを利用することから、地球温暖化等の環境に与える影響を考慮 した環境にやさしい施設です。

 @メタン施設
 このシステムはメタン発酵(嫌気発酵、空気を供給しない状態で微生物が有機物を分解すること)を中心に、家畜の糞尿等の有機性廃棄物を処理して有機性肥料を生産するとともに、処理の過程で得られるメタンガスを利用してコージェネレーションを行い、エネルギーを有効利用するトータルシステムです。
 施設の稼働内容は、各農家からバキュームカー等で乳牛と豚の糞尿を収集し、食品工場から発生する「おから」をトラックで搬入します。これを受入槽に投入し、沈砂槽で粗大物の沈降除去を行い、さらに破砕機でわらなどを破砕し、糞尿と共に原水槽で一時貯留します。
 これをBIMA消化槽へ投入し、BIMA消化槽では水温を35度前後に保ち、約30日間滞留させ、嫌気処理を行います。処理の過程で、メタンを65%程度含む「消化ガス」が発生します。この「消化ガス」はガスホルダーに貯留し、脱硫塔で硫化水素を除去した後、ブロワで「消化ガス」をガスエンジンに送り、同時にガスエンジンで発電機を回転させ、発電を行います。
 また燃焼ガスとエンジン冷却水の排熱は熱交換器を介して温水として回収しBIMA消化槽の保温と管理室の暖房に利用することができます。一方処理が終了した糞尿等は、消化汚泥として排出されることになります。これを脱水して固形分の「脱水ケーキ」と液分の「脱離液」に分離し、「脱水ケーキ」は肉牛糞尿と共に堆肥化施設で処理されます。

 A推肥化施設
 堆肥化は、先にメタン施設から排出された「脱水ケーキ」と肉牛の糞尿をロータリー式発酵装置(2台×2槽)に入れ1日に1回ロータリーの回転で撹拌を25日間くりかえし一次発酵を行います。次に一次発酵した堆肥は堆肥舎(5槽×2棟)にタイヤショベルで移動し65日間の堆積により二次発酵後、製品庫で袋やフレコン詰めを行いマニアスプレッダーで農地還元します。


施設の概要

@ 堆 肥 施 設
設置年度:平成 8年度 :事業費 523,969千円
 項  目   
発酵棟992.8m×2棟、鉄骨造ポリカーボネート張り
堆肥舎1,051.2m×2棟、鉄骨スレート葺
製品庫799.2m×1棟、鉄骨スレート葺
撹拌機ロータリー式撹拌機×2台
堆肥製造量約 7,000トン/年

A メ タ ン 施 設

設置年度:平成 8年度 :事業費 568,000千円
 項  目  仕     様
 BIMA消化槽  2,100m、鉄筋コンクリート製
ガスホルダー吊り下げ式、350m
脱水機スクリュープレス式
発電機70Kw×2台
廃水処理施設膜分離活性汚泥式、62.3m


メタン施設の処理プロセスと処理量

@ 計画処理量と搬入ふん尿の性状
投入物 対象頭数重 量含水率乾物中有機質比率
乳牛ふん尿 650頭32.5トン/日88%80%
豚 ふん尿1500頭8.1トン/日91%69%
おから5トン/日80%95%
わら・おがくず840Kg/日25%88%

A 受け入れ槽・破砕機・原水槽
 処理廃棄物がバキュームカー、トラックなどで運ばれ受け入れ槽に投入される。 ここに希釈水(この処理プロセスの排水の一部を利用)2.5m/日が加えられ破砕機に送られる。破砕機で細かく砕かれ、原水槽に送られ蓄えられる。

B BIMA消化槽
 2,100mの鉄筋コンクリート製で、発電機の廃熱とメタンを燃焼させるボーイラーからの熱で35℃前後に保たれた中にメタン発酵が行われ30日ほどでメタン65%の消化ガス(バイオガス)に分解される。
 BIMA消化槽の特徴は内部がコーヒー沸かしのサイホンのような構造をしていて、発生するメタンガスの作用でサイホンの管を原水が上下する。この時必要な量の原水が原水槽から取り込まれ、上澄みの液体が排水される。発生したメタンガスはガスホルダーに送られる。
 処理される原水は62.8m/日、発生する消化ガスは2,028m/日である。

C ガスホルダー・脱硫塔
 350mのガスホルダーに発生したガスは蓄えられる。メタンガスは脱硫塔で硫化物が取り除かれ発電機のガスエンジンとボイラーに送られる。

D 発電機・ボイラー
 70Kwの発電機2台のガスエンジンにより発電機が回され、発電を行う。発電量は3,200Kwh/日でバイオエコセンター内で使用される。余剰の電力があり、買電可能。  発電はコジェネレーション方式でエンジンや発電機からの廃熱も熱源として回収し[BIMA消化槽]の保温に利用している。

E 消化液槽・脱水機
 [BIMA消化槽]からの排水は[消化液槽]を経由して脱水機に送られる。ここで高分子凝集剤が加えられ、凝縮した有機質を圧縮し脱水される。  脱水脱離液は62.3m/日ほどであり、水質はBOD 1,500mg/リットル、SS 3,000mg/リットルである。
 放流できる水質にまで処理するために廃水処理施設に送られる。

 一方固形分である脱水ケーキ(含水率70%)は[堆肥施設]に堆肥の原料として送られる。脱水ケーキの量は10.2トン/日である。

F 廃水処理施設
 廃水処理施設で更に沈殿、オゾン脱色消毒が行われ、排水される。排水される水質はBOD 20mg/リットル、SS 50mg/リットルである。水は[受け入れ槽]で希釈に使われる希釈水(2.5m/日)、高分子凝集剤の溶解水(m/日)として利用され、最終的に排水される量は37.2m/日である。

 [廃水処理施設]で固形物として分離された余剰汚泥は前工程の[受け入れ槽]にフィードバックされ、[BIMA消化槽]で再度分解処理される。


堆肥化施設の処理プロセスと処理量

@ 計画処理量と搬入ふん尿の性状
投入物 対象頭数重 量含水率乾物中有機質比率
肉牛ふん尿500頭12.75トン/日87%
おがくず5.64トン/日25%

A 強制発酵処理施設
 農家や製材業者から運ばれてきたふん尿やオガクズに[メタン施設]からの脱水ケーキを加え[ロータリー式発酵装置]に入れ1日1回の回転数で撹拌を25日繰り返し一次発酵させる。投入量は28.59トン/日、一次発酵後のコンポストの量(含水量65%)は21.23トン/日である。コンポストは[堆肥舎]にホイールローダーで運ばれ二次処理される。

B 堆肥舎
 [堆肥舎]で65日間堆積し二次発酵を行う。ここで最終製品の堆肥が完成する。出来上がる製品量は19.27トン/日、含水率は63%である。販売用は袋詰めされで出荷され、地元での消費用はフレコンバッグ(フレキシブル コンテナー バッグ)に詰め、自走式マニアス スプレッダーで散布、農地に還元する。


消化ガスによるコージェネレーション

  定格平均使用電力消化ガス発生量からの
最大発電可能電力
発電機出力140Kw111Kw(日平均)134Kw(日平均)
 消費ガス量(m/日)16802028


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