4年生の環境学習のお手伝い

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  小学校の社会の授業で環境問題の勉強のお手伝いをしました。
学習発表会に招待されて子供達の“ゴミを減らそう”との訴えを聞き、予想を遙かに超える訴求力に感激の一時を過ごしました。
  先生方に参考にしていただきたく紹介する次第です。

1.背景
  学校はJR駅周辺の市街地と住宅地の接点の部分にあり、各学年4クラス編成の比較的大きい規模です。4年生は120数人で4クラスに分かれています。
  総合的学習の時間が出来たので2年前から従来の劇を中心とした“学芸会”から『学習発表会』と名前を変えて行われていました。発表はクラスごとでなく学年単位で行うので、4人の先生の合意と120人の子供達の息が合わなくては上手くできません。

  担任の先生の1人がごみや環境問題を勉強され、ごみ・環境ビジョン21発行の絵本“いのちのまちをつくる…ゴミのへらしかた”を読みこのコンセプトにした学習を組み立て、発表したいとの構想を作りました。
また、総合的学習を視野に入れて「先生の教え込みよりも子供達の意見を入れてやりたい」との希望もありました。
  しかしな絵本で訴えている内容は、副読本に書かれていることや市のごみ処理担当部署、ごみ処分場等で聞く内容より一歩踏み込んでいるため、他の先生や子供達の理解が進まないとの問題がありました。
  ここで構想を作られた先生からごみ・環境ビジョン21に相談のメールが入りました。

2.お手伝いしたこと
  最初のメールは“ごみかん環境劇団 『ビジョン座』 デビュー公演 ”のシナリオが欲しいとのことでした。この講演は大まかな筋書きはあるのですが、出演者が自分にあった台詞を作り演じ、かつ会場の反応を見ながら変えていく方法を採用していたので参考になりませんでした。
  毎日1往復のメールで打ち合わせを進めましたが、時間が掛かることが分かりました。 先生からの要請で4クラスの子供達全員と4人の担任の先生に集まっていただき、絵本に書かれているコンセプトをお話しすることにしました。校長先生も一緒に聞いて頂きました。

☆ 使用したレジュメ
(1) 生き物のくらし(自然循環は命の循環)

 ☆ 35億年間生き物は自然循環の中で生きてきた
  ・植物が太陽の光を受けて、
   水と二酸化炭素と少しのミネラルから栄養(糖質)を作る
  ・植物を虫や草食動物が食べ
  ・虫や草食動物を肉食の虫や鳥や哺乳類が食べ
  ・糞を食べる動物もいます
  ・植物、動物の死がいや糞は地中の菌類が分解し
   水と二酸化炭素とミネラルに → 再び植物が利用する → ごみはないのです



(2) 自然循環を断ち切った文明社会のくらし

 ☆ 15万年前に変な生き物、人間が登場
  ・文明を発達させ、他の生き物をから食べ物や棲む場所を奪った
  ・地下資源を沢山掘り出して利用したり、
   たくさんの化学物質やプラスチックを作り出した

  ・物を大量に安く作る技術を開発した
  ・物があふれ豊かで便利になったが、多くものは循環しなくなった
   → ごみや公害が増えて環境を破壊する結果になってしまった

  ・このままでは生き物、そして人間も生きていけなくなってしまう



 ☆ 最近のごみは
  ・自然が分解できないものが多くなった
  ・環境ホルモンや重金属など毒を含むごみが増えた

  ・家庭から1年間に中型トラック1台分のごみが出る
  ・工場やお店、事務所から出るごみを加えると一家族あたり
   大型トラック1台分ものごみが出ている




 ☆ たくさんのごみを処分し続けた結果
  ・谷や海岸を埋め自然を破壊した
  ・ごみに含まれた毒がとけ出し、土、川、海を汚した
  ・空中に出たガスは地球温暖化、オゾンホール等の
   原因になった

  ・もう埋める場所がなくなってきた
  ・燃やすとダイオキシンなどの猛毒が出る
  ・たくさんのお金が掛かる

 



(3) 環境にやさしくなるには

“ カパ ”っていうんだおれたちことも
忘れないでくれ !
 ☆ 自然循環を大切にしてすべての生き物の命を尊重する

 ☆ 今の生活を続けたら  どうなってしまうだろうか?

 ☆ そうだ ! ごみを減らさなければ

 ☆ 環境にやさしい物を選ぶ


  ・自然材料で作られたもの
  ・直ぐにあきてしまいそうな物は買わない
  ・故障しにくい物を選ぶ
  ・プラスチック類は出来るだけさける
    特に塩化ビニールや塩化ビニデン
  ・少しのエネルギーで働くもの

 ☆ 化学物質を出来るだけ使わない
  ・臭い消し
    人の鼻が“匂い”や“臭い”を感ずるのは何故?
  ・洗剤や漂白剤
  ・殺虫剤を出来るだけ使わない
  ・安全とは明らかに危険でないもの → 本当は危険かもしれない

 ☆ エネルギーを大切に使う
  ・エネルギーのほとんどは化石燃料や原子力から作られます
   化石燃料を燃やすとたくさんの二酸化炭素が出て → 地球温暖化が進んでしまいます
  ・原子力発電では強い放射能を持った使用済み核燃料が出来て → 処分する方法が決まっていません
  ・電気
  ・ガス
  ・ガソリン

(4) ごみの減らし方

 ☆ みんなが知恵を出し合って、身の回りからやっていくことが大切
分かってくれてありがとう
今日から実践してね!

 ☆ ごみになりやすいものを(出来るだけ)買わない

 ☆ 物を大切に使う

 ☆ いらなくなったり故障したもの


  ・人にあげる(お下がり)
  ・フリーマーケットやバザーに出す
  ・修理して長く使う
  ・リサイクル(リユース)ショップへ
  ・リサイクルする

(5) リサイクル

 ☆ リサイクルにも多くの問題がある

 ☆ リサイクルできる主な物
  ・紙
  ・容器・包装品
   びん、かん(アルミ缶、鉄製の缶)、ダンボール
  ・家電
  ・衣類
  ・自動車

 ☆ リサイクルで大切なこと
  ・正確な分別

 ☆ リサイクルの問題
  ・リサイクルすればいいとたくさん買う、使う
  ・リサイクルするのにお金がたくさんかかる
    たくさんの税金が使われる
  ・集めたり、工場で処理するのにたくさんのエネルギーを使う
   この結果、たくさんの二酸化炭素が排出され地球温暖化が進む
    原子力発電所からはとても危険な使用済み核燃料が出る
  ・資源化にたくさんの化学薬品を使う
  ・たくさん集まると使い道がない
  ・もとの物が出来ないことが多い
  ・リサイクル資源で作ったものも、やがてごみになる
  ・リサイクル資源で作った物が売れない

 ☆ リサイクルした資源で作られた物を選ぶ
  ・少し高くても
  ・見かけが悪くても

  質疑では子供達がたくさんの質問、提案、自分がやっていることの発表があった。いずれも的確、子供らしい鋭いものであり、手応えを感じた。
  質問の1つ
  “私の家ではレジ袋にゴミを入れて出しています。新しいゴミ袋を買うより良いと思います”

  話し終えて自然材料を・・・・・・・・の例として持参した手製の竹とんぼを飛ばしたり、竹笛を鳴らしたり、最後にこれらのおもちゃをプレゼントして学校を後にした。
  これも子供達に親密感を与え、話したことの理解に繋がったと思う。

 

3.発表会で演じられた“ぼくたちからのメッセージ”
第1のシーン ごみのひとりごと

 ☆ ごみ達のパフォーマンス
   舞台いっぱい『ごみ』に扮した子供達が踊ったり、はね回りダイナミックな演技で幕開け。
  「人間もごみにしちゃえ!」と気勢を上げる

 ☆ 処分場で働く人をインタビュー
   1学期に見学した内容を再現。
  悩みや、困ったこと、嬉しいことをインタビュー形式でゴミの処分に係わる人を紹介。
  ・ゴミ収集車のおじさん
  ・ゴミ処分場で働くおじさん

第2のシーン 宇宙人からの問題提起

★ ペットボトルで作った宇宙船でやってきた ☆

  ペットボトルを沢山集めて作った円盤形の宇宙船が色とりどりの豆電球を点滅して舞台に下りてきました。宇宙船には太陽系惑星に住む宇宙人が乗っていました。彼らは人間の暮らしの問題を次々と指摘します。
 でも地球人は “だって・・・・・・・・・だもの” と強く反論して宇宙人をやりこめてしまいました。

★ 水星人の問題提起 ☆

   水を無駄に使い、汚しても平気だ。大切に使おうと提起
 『地球人』 “だって・・・・・・・・・だもの”
   と口々にたくさんの水を使う生活の快適さを主張

★ 金星人 ☆

   お金お金と、毎日お金のことばかりと指摘
 『地球人』 “だって・・・・・・・・・だもの”
  と口々に買いたいものが沢山あると主張

★ 火星人 ☆

   ごみをどんどん燃やして、目の前からなくなればと安易にやっている
 『地球人』 “だって・・・・・・・・・だもの”
★ 木星人 ☆

   森の木をどんどん切ってしまう問題を指摘
  『地球人』 “だって・・・・・・・・・だもの”

★ 土星人 ☆

  ところかまわず土を掘り返してゴミを埋め、
  土を汚していると指摘
 『地球人』 “だって・・・・・・・・・だもの”

★ 天王星人 ☆

   排気ガスで空(空気)を汚しても平気な地球人と指摘
 『地球人』 “だって・・・・・・・・・だもの”

★ 海王星人 ☆

   人間の活動で海が汚されたと問題提起
 『地球人』 “だって・・・・・・・・・だもの”

★ 冥王星人 ☆

  いずれの問題提起も地球人には通じないことを知り、がっかり

  『地球人』の反論する “だって・・・・・・・・・だもの” ・・・・・・は子供達に考えさせましょう。
  あなたの本音だったり・・・・・・ オット 失礼。
   環境関連法案の審議会で「環境抵抗勢力議員」の発言そっくりだったり。

第3のシーン ごみ探検隊のゴミへらし
  いよいよクライマックスシーン。ごみ探検隊が調べたことを発表

 ☆ 自然循環の説明
  ・自然界にはゴミは1つもなく、完全に物質が循環し命が繋がっている

 ☆ ごみ処理の問題
  ・世界一の焼却場の数

 ☆ リサイクルの問題
  ・集めても資源化できずに多くがゴミになっている
  ・資源化しても直ぐにゴミになる
  ・多くのエネルギーやお金(税金が使われる)が掛かる

 ☆ ゴミをへらす身近な方法
  ・ペットボトルを止めて水筒を使います
  ・布巾や雑巾を使うとペーパータオルやティシュを使わなくてすみます
  ・買い物袋を持っていき、レジ袋ははもらいません

  等など子供達が次々と大きな声で身近で出来るゴミ減らしを発表。
 子供達の澄んだ声で訴えられると、胸の底までジーンと染みわり、訴求力抜群であった。

第4のシーン リサイクル楽器の演奏
  ダンボールや大きめの空き缶で作ったドラム、ペットボトルや小型の空き缶のマラカスなど、廃品を利用したリズム楽器で「風になりたい」を演奏。大勢で演奏するので迫力があり、廃品とは思えない音でリズムを刻んだ。
  最後で盛り上げ第2のシーン、第3のシーンで訴えた問題を観客の脳裏に強く焼き付ける効果を発揮した。

 

4.確かな手応え
(1)子供達の訴求力と影響力
  今回の学習発表は第1日目は子供達、2日目が保護者や招待者が観客であった。4年生が演じた“僕たちのメッセージ”は
1,500人以上に届いたのである。劇が終わって父兄の席からの拍手と誉め言葉が一段と大きかった。
  この日以来、職員室で“この紙の裏が使えるね”、“紙コップを使うのはよそう”等の声が上がっているとのこと。
学区内の多くの家庭でも確実に何かが起こり始めているように思える。子供達の訴求力の大きさと、学習を通したメッセージ伝達力を改めて感じた。

(2)子供達の理解力
  小学校4年生が私たちが狙っている“ごみ問題の本質に迫った”環境教育をどこまで理解してくれるか不安があった。しかし、ごみ問題に長く係わってきたが今回のお手伝いと「学習発表会」を見て得られた感動はなかった。短時間に理解し、堂々とメッセージを発してくれた。
  この様な素晴らしい成果は“教師が教え込むのではなく子供に考えさせる”との先生の指導方法によるものである。また、私たちのように普段接していない町のおじさんが、先生と少し違う言葉で、少し違った見方の話は、新鮮で彼らの心に響いたに違いないと思う。

環境学習部会


 ごみや環境教育・自然体験を計画している教育機関・諸団体の皆様、目的や対象者に応じたプログラムの企画や実施までのお手伝いをします。
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