みんなで進めるごみ減量とリサイクル

ごみ処理から3Rへ
 23区では35年ぶりに廃プラスチックの分別方法が変わるので、ごみに対する関心が高まっていると思う。
 日本全体の状況では、容器包装リサイクル法(容リ法)が1995年にできたこともあり、リサイクル率は増えている。2005年の全国平均は19%、多摩地域は35%と高い。埋め立て量は反比例して減っている。
ごみ量は日本全体で約5000万トン、高いところで推移している。1日1人あたりのごみ量は、平均1000グラム以上。

 使い捨てではなく、3R を基本にした社会に変えようと、今ではメディアでもよく取り上げている。
循環型社会というとリサイクルと思うが、それより上位にある、リデュース・ごみになるものを作らない、リユース・繰り返し使うということを忘れてはいけない。

 循環型社会に向けて法整備が進んでいる。循環型社会形成推進法が2000年に作られる前に、容リ法が制定されている。

水俣市の事例
 今では、可燃、不燃以外に、びん、缶などの分別が当たり前になっている。「分ければ資源、混ぜればごみ」という有名な標語もある。
その反面、分別する種類が増えれば、回収などにお金がかかる。リサイクルはエネルギーや経費もかかるということを忘れてはいけない。

 水俣市では、水俣病という負の遺産を教訓に、環境先進自治体を目指している。
市は合併後、人口が2倍の29000人になった。しかし、焼却施設を建替えても大きさをほとんど変えなかった。
どうして焼却施設を2倍にしないですんだか。分別の細かさもあるが、生ごみの堆肥化に取り組んだことが大きい。

 可燃ごみの3割以上が生ごみといわれている。水俣市では生ごみを集める時、ビニール袋を破く作業が大変なので、生分解性プラスチックの袋を使用している。
だが、5リットルの袋が1枚18円と高い。

 板橋区では家庭ごみの有料化を導入していないが、高くても1リットル2円ぐらい。
水俣市の市民はそれよりも高い袋を買って生ごみを出している。ごみを減らそうという意識が高いという表れだ。

 啓発も行き届いている。生ごみの中に異物がないかステーションでチェックをしながら回収しているという。
ごみは22種類に分類。廃プラスチックも集積所で回収し資源化している。南九州地域では720ミリリットル入り焼酎びんのリターナブル化を進めていることもあり、市ではびんを色別に回収している。

プラスチックごみと容リ法
 プラスチックごみは家庭ごみを考える上で重要。焼却施設にバグフィルターを設置したり、燃焼時に薬品を大量に使ったりしているので、ダイオキシンの数値は低くなっている。
しかし、プラスチックは燃焼カロリーが高く、埋め立てても分解しないということで問題視されている。

 今まで、木綿、木、紙、びんなど自然に分解できるものでできていたものが、プラスチックに変わり、日常生活がプラスチック製品に囲まれている状態。
プラスチックごみは家庭ごみの40%を占めている。容器包装は容積比で6割以上を占める。

 容器包装の場合、重量より、かさばるので容積が問題になる。ペットボトルなどは空気を運ぶようなものと言われる。
そのための人件費もかかる。集積所回収と拠点回収の分かれ目にもなっている。
廃棄物処理法は家庭から出るごみはすべて税金で処理している。

 容器包装リサイクル法では容器包装を作っているメーカーと中身のメーカーが、リサイクル事業にかかる費用を払っている。
年間約500億円、7万社ほどの事業者が払っている。

 一方で、自治体が分別収集したペットボトルやプラスチック製容器包装を、リサイクル事業者に引き渡す際に、1メートル四方のベールという形にすることになっている。
板橋区で容リ法に基づいてプラスチック製容器包装を収集する場合、収集からベールにして保管するまでが自治体の役割になっているので、23区では思うようではない。
新宿区や中野区は足立区の戸部商事に持ち込んで選別保管している。

23区のプラスチックごみ
 容リ法は2004年から改正の審議が始まった。同じ頃、国は「再生利用の対象とならない廃プラスチックは埋め立てないで燃やす」という方針を出した。
「容器包装対象のものはリサイクルして、最終処分場は限られているから、それ以外は焼却してもしかたない」ということだ。

 容リ法でプラスチック製容器包装を分別収集するようになった2000年から7年過ぎ、1827自治体のうち941自治体、約半数の自治体が容リ法に則って分別収集している。

 東京23区は35年ぶりの大改革、不燃にしていたプラスチックを焼却するという方針がでた。
しかし、23区も「リサイクル対象以外のプラスチックごみを焼却する」という内容。23区のように大量に容器包装を出し、効率的に収集できる人口過密地域は、率先して分別収集すべき。

 23区は来年度中に廃プラを可燃ごみ扱いにしようとしている。一方で、プラスチック製容器包装については対応が分かれている。
23区はごみ政策と収集は区、中間処理は東京23区清掃一部事務組合、最終処分場は東京都と、3者が分担している。
水俣市は資源化をすると焼却施設を縮小できるが、23区は減らした効果が見えない。ごみが足りないという事も起きる。
こうした事情からほとんどのプラスチックを燃やす区もある。

 容リ法で「プラスチック製容器包装は資源化」としているにもかかわらず、ベールにする施設が造れない、処理業者を探せない、ということで区の対応が分かれている。
来年は無理でも、再来年は容器包装プラスチックの資源化を目指してほしい。

 1996年につくられた「東京ルール」で「事業者による自己回収」を打ち出したのが、プラスチック製容器包装の分別収集を邪魔する方に働いている。
拠点回収は、お店の人がリサイクル施設に持っていく。税金がかからず、良いことだが、忙しい生活の中で毎日出るプラスチックを店舗に持って行くのは難しい。
スーパーでも山のように集まるのは困ると思う。

資源化で焼却施設を減らした横浜市
 横浜市は日本の中で最も大きな自治体ですが、「G30」という、10年間でごみを30%、減らそう、という計画をたてた。
ところが、2005年度、1年間で達成することができた。

 燃やしていた容器包装プラスチック類をリサイクルしたことが大きい。分別すると中身だけほしいのに無駄な包装も買わされていることに気づく。消費者として、過剰包装を避けようと構えができたこともある。

 古紙を資源回収したり、職員も説明会を5000回も開いたりするなど努力した結果だ。
360万人もいれば、回数は多いだろうが、説明会で市民に顔を見せてあつく訴える。
ごみを減らすのは人の力だと思う。目標を掲げても、汗をかく職員がいなければ、なかなかごみは減らない。リサイクルセンターが3カ所ある。手選別もしている。分別を徹底させるという事が難関。

 また、家庭ごみではなく、焼却場に持ち込まれる事業系ごみの搬入規制を厳しくした。
色々な手段を講じることで、1 年で30%減を達成した。小学校、中学校の給食の残渣も堆肥化している。

 焼却量が減ることで、7つあった焼却炉が5つになった。焼却施設は作っただけではなく、15年くらいで建替えなければならない。
焼却施設を減らす事で毎年30億円のランニングコストも減らせた。焼却施設の建替え費用が1100億円削減できたということで、横浜市の塀のところで「1100億円削減」と貼ってある。

 23区は35年ぶりにプラスチックの対応が変わる。願わくば、横浜市を目指してほしい。
リサイクルを進めて23区にある焼却施設も減らしていくという費用対効果もあるといい。そうすれば、焼却を少なくすることで地球温暖化の原因となるCO2も減らしていける。

楽しみながらごみ減量
 板橋区はボトル系の容器包装を店頭や拠点で回収する。誰もが持っていくきっかけをつくるために、安中市は集積所回収をしていないで、飲料容器回収機を使っている。
投入するとポイントがつき、それで買物ができる。誰が設置して運営費を払うのか、など分担しなければならないが、店頭回収を広げるきっかけづくりに良いと思う。

 一方で、そもそも、ペットボトルをどんどん使って良いのかということも考えなければいけない。
スーパーでは給水機を置いて初めに容器を買うと、何回でも給水できる。ボトルを持っていれば、容器ごみが出ない。

 板橋区でも色々なお祭りがあると思います。ところが、模擬店では、使い捨てのお皿や紙コップを使っている。
こうしたごみを出さないために、食器洗い機を搭載した車を市民に貸し出す自治体もある。
那覇市、仙台市、名古屋、金沢市などで活用している。お祭りに食器と食器洗い機を搭載した車を貸し出す。家庭でしている事を屋外でもする。

 野球場、サッカースタジアムなどでは、紙コップをリユースカップに換える所も出てきた。
横浜ではカップにG30と書いてある。仙台でもある。容器を戻すとお金が返って来る。

 杉並区の環境博覧会では、給食で使わなくなった食器を使用している。
食べ終わった人が布でふきとり、水で洗うなど手間がかかるが、NPOがボランティアで手伝っている。何万もの人が集まるイベントでこの様な試みをしているのは啓発効果がある。

生ごみのリサイクル
 生ごみの堆肥化をがんばっている自治体も多い。「地方自治研修」という雑誌の「ご減量最前線」という連載でごみの減量に取り組んでいる自治体を取材しているのですが、小田原市の小学校では、登校時に自宅から、果物の皮や調理くずを持って来て処理機に入れる。堆肥にして、校庭の植木に使用するという循環を肌で感じる、いい環境学習の事例と言える。

 飯田市は市全体で環境問題に取り組んでいる。ごみ排出も長野県で1 番少なく、1人1日500グラムしか出していない。
中心部の3000世帯で生ごみを回収している。生ごみをそのまま容器にあけている。週3回回収している。
 香川県善通寺市では、生ごみを家で処理しようと、女性の課長さんが率先して講習会をしている。40%も普及しているという。
武蔵野市は団地内に大きな生ごみ処理機を設置していて、その団地からは生ごみは出ない。

 使用済み天ぷら油を回収してバイオディーゼルにしているところも増えてきた。循環バスに使用したり、京都市はごみ収集車にすべて使用している。廃食油を空きペットボトルに入れて回収している。
リサイクルと温暖化問題・CO2の排出抑制を結びつけたいい試みだ。

ごみを減らすために
 家庭ごみの中には事業系の廃棄物も入っている。千代田区では90%は事業系である。
文京区などでもこの比率が高い。これを減らすためには、小売店などの事業者を区全体で応援するために、環境に優しい事情者を「エコショップ」としてホームページで紹介する。
例えば、レジ袋有料化のお店を自治体が応援することが重要である。

 事業者もごみを減らす取り組みが必要。飯田市では焼却施設のチェックで、古紙が混ざっていたら差し戻すなど、厳しい搬入規制をしている。
事業者は食品リサイクル法などでリサイクルにお金がかかっている。紙も徹底的に減らすなど、リサイクルを進めるチャンスだと思う。

 自治体全体でごみ処理政策をどうするか。みんなが意識を変えないとうまくいかない。結果としてごみが減ると思う。びん入りの牛乳を飲むとおいしい。

 23区では、今、ごみやリサイクルの意識が高まっていると思うが、板橋区は一部の容器包装プラスチックを拠点で回収し、かなりのプラスチックが可燃にされるので残念だと思う。
来年、または再来年には資源化できるといいと思う。


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