1、日本のごみ事情 日本のごみ処理の歴史
海外の話をする前に日本のごみ処理事情について、簡単に説明したい。日本は大量生産、大量消費、大量廃棄の時代から、循環型社会、あるいは3R(リデュース、リユース、リサイクル)に方向転換している。 今まではごみ処理やリサイクルに力を入れてきたが、今後はリユース、発生抑制に力を入れる必要がある。
これまで日本では上流で製品がどんどん作られる一方で、自治体は衛生的に処理しなければいけないという事で、ごみを焼却したり、埋め立てたりしてきた。
「簡単便利」という事でプラスチック容器包装がどんどん作られる一方、自治体では、バグフィルターなどの公害防止装置を設置するために億単位の税金を投入して焼却施設を建設してきた。
これではいけない、生産者に責任を負わせなければ、という事で、EU圏などを中心に拡大生産者責任(EPR)という考え方が広まった。
「ごみ処理やリサイクルのお金は誰が払うのか」ということでいえば、納税者負担から、事業者・消費者負担にする。
プラスチック処理の現状
自治体でのプラスチック処理は3つに分類できる。@可燃ごみとして収集・焼却 A不燃ごみとして収集、埋め立て Bプラスチック容器包装を資源化(06年度)966自治体
現在東京23区は廃プラスチックの扱いをAから@に移行しようとしている。
だが、板橋区はペットボトル以外のプラスチック容器包装等を燃やす予定だ。
環境省は、「資源化できない廃プラスチックは埋め立てないで燃やそう」という方針を示している。
2、リサイクルは進んだが、新たな課題を抱えるドイツ 容器包装のリサイクルシステム・DSDシステム
ドイツは、日本と違い、事業者が容器包装の回収やリサイクル費用を負担している。自治体と、製造・販売者のルートの2つで回収されている。ヨーグルト容器や缶、プラスチック容器などすべての容器包装はゲルベザックという黄色の袋で、に入れて出すことになっている。 事業者がリサイクル費用を払った印に、グリューネプンクト(緑の点)というマークがついている。 商品のリサイクル費用が内部化されているということである。
1991年に包装廃棄物規制令が制定され、容器包装を収集してリサイクルするために事業者が出資してDSD社という会社をつくった。
事業者が支払う容器包装のマーク使用料はガラスびん7.6セント、紙18セント、缶28セント、プラスチック容器包装は1キログラム135セント。
包装廃棄物規制令では、リサイクルすれば良いというものではなく、リユースも重視している。
デポジット金額は、使い捨て容器25セント、リユース容器は15セントと差をつけているが、中身はリユース1リットル、53セント、使い捨て1.5リットル、55セントなので使い捨ての方が安いため、使い捨てを選んでしまう人もいるようだ。
レジ袋を規制する法律は特にないが、事業者は経費がもったいないので、無料で配らない。 また、自治体には市民が粗大ごみ、家電、剪定枝、ペンキ、有害物質などを持ち込める「リサイクリングホフ」があり、そこで中古の家具等を買うこともできる。
有機物の埋め立て禁止
1995年に、一般廃棄物技術指針が改正され、メタンガスの発生や地下水汚染を防止するという理由で、処分場に埋め立てる場合は有機物が3〜5%未満でないといけない、つまり、生ごみの埋め立てが禁止になった。
自治体の対応は2通りである。
Aを選んだハノーファー郡と近接20州(110万人)の広域事業体(AHA)では、機械選別(水に入れて比重分別)、生ごみなど有機物をタンクで発酵し、発生したメタンガスで発電、(バイオガス化)し、残ったものは堆肥化施設で堆肥化している。
@を選んだ、ハンブルグ市(172万人)と近郊自治体では、MVB社が焼却施設の建設・運転・管理をしている。
リサイクルはDSD社が独占していたため、リサイクル費用が高く批判されていたが、近年になってクリーンウェイ社、ランドベル社という他の業者が出て、やっとDSDの独占体制が崩れ始めている。
3、焼却中心からリサイクルへ、転換を模索するフランス 容器包装のリサイクルシステム・エコアンバラージュ
フランスでは、廃プラスチックはボトル類のみをリサイクルし、残りは自治体で処理している。ただし、収集・保管費用の5割は中身メーカーである事業者が支払ったマーク使用料で賄っている。 プラスチックは有価で売却できる缶、びん、プラスチックボトル、段ボール、紙パックに限定しているため19%と資源化率は低い。 他のプラスチック製容器包装は自治体で焼却している。
パリの近郊にはびんボックスが設置してあるが、市民の意識は低いためか、あまり利用されていない。
外国人が多いことも要因のひとつといえる。回収ボックスの中が、らせん状になっていて、ワインなどのびんが割れない様に容れられる。
パリ近郊の巨大な清掃工場
パリ市と84市町村が構成する広域事業体(SYCTOM)では、550万人分のごみを3つの巨大な焼却施設で処理している。その1つがイブリー市にある。フランスのごみ処理政策の特徴はサーマルリカバリーである。 年250万トン出るごみのうち、200万トンを焼却している。熱回収率は70%と高く、10万世帯に給湯している。 分別が十分でないため焼却灰に缶などが混入しているため、磁石で鉄などを回収してリサイクルしている。
イブリー市は外国人が多いこともあり、無分別のごみが回収ボックスにあふれていた
今、イッシー市では日量1,200トンの焼却施設を2基、建設中である。
4、ごみ減量・リサイクルへ、新しい政策を進める韓国 ドイツを参考にした事業者責任制度
韓国では、2003年にドイツ方式を取り入れた事業者責任制度(EPR制度)を制定した。紙パックやプラスチックなどの容器包装だけではなく、家電や蛍光灯なども含めた18品目に関わる13業界団体が収集とリサイクル費用をすべて負担し、容器包装は自治体回収、家電は事業者回収している。 資源化率の目標値を掲げ、年々数値を上げてリサイクルを向上させている。全体の生産量に対する回収率の目標は68.4%、容器包装ではプラスチックが50%、紙製容器27%などと決めており、下回ると課徴金を課せられる。
使い捨てを規制
また1994年に使い捨て製品を規制する「1回用品規制」が制定された。レジ袋もデポジットになって、50%減少した。レジ袋は有料で売られており、買った場合でも店に戻すと50ウォン、約4.5円返金される。 ファストフード店、コーヒーチェーン業界は、店内での飲食はリユース容器であるマグカップなどを使用。 テークアウトの場合は紙コップなど持ち帰り容器に50ウォンのデポジットをかけて、自主規制している。 ホテルのハブラシなども禁止。不履行の店を知らせるとお金が貰えるようにして制度を徹底させようとしているが、守っていない小さな店もあり、途上といえよう。
ごみが足りない焼却炉
1990年代、ワールドカップ会場の隣にあったごみ処分場にごみや焼却灰が100メートルも積み上げられ、底から浸出水が出て、大変な環境汚染になった。そこで、ソウル市は25区全区に焼却施設を作ろうという「自区内処理」政策を打ち出した。 しかし、大反対運動が起き、水際でストップされた。リサイクルに方向転換することに決め、4施設だけ建設した。
その1つである江東区の焼却場では、住民の抵抗が強く、周りの区のごみを入れられないということで、稼働率が18%だった。
段階的な値上げで効果をあげる有料化
1995年から家庭ごみは従量制(有料化)を導入している。20リットル、21円程度で、ごみ処理費用の約70%を賄っている。 ただし、減量効果が薄れるのを防ぐため、金額を上げている。 ソウル市では、20リットルで270ウォンから350ウォン(約30円)、釜山市280ウォンから810ウォンに上げている。(100ウォン=8円)。 この結果、ごみ量は1994年から2004年の間に 1人 1日当り 1,330グラムから1,030グラムと300グラムも減っている。
生ごみのリサイクル
生ごみは2005年に埋め立てを禁止、飼料化、堆肥化している。排出用の黄色の袋は無料になっている。ソウル市郊外にはまだ養豚農家も多く飼料化が中心になっている。 ただし、生ごみをリサイクルする場合は、収集時の袋の破れや臭いの問題があり、日本で導入する場合もその対策が課題である。 ソウル市内から出る 1日3,200トンの生ごみは250カ所の工場で、1,800トンが飼料化、1,200トンが堆肥化されている。
2006年からバイオガス発電施設を建設しており、2〜3年後には 1日400トン処理できる施設が2施設稼動する予定だ日本のリサイクル率は全国平均19%(05年度)、韓国は49.2%。
韓国は携帯電話やコンビニなども普及して日本とほとんど変わらない状況にある。 外国の事例なので、そのまま日本に置き換えるわけにはいかないが、板橋区のごみ処理の方向を考えるきっかけにしてほしい。 |