【事例発表】
「日野市、杉並区における
買い物袋持参の取り組みの経過」

 今日はごみ環境ビジョン21という市民団体の立場でお話しをさせていただきます。

東京・多摩地域のごみ事情
 私が住んでおりますのは多摩地域と言いまして、30市町村の400万人近い人たちが同じ処分場を共有しているところで、ごみ処理の条件が厳しいところなのですが、それだけにリサイクルなどにも市民参加が進んでいる地域です。
私は今府中市に住んでいますが、レジ袋の削減運動に取り組み出したのは武蔵野市に住んでいるころでした。
まず最初はスーパーやコンビニでどんな取り組みがされているのかということを聞きながら始めました。

なぜ「レジ袋削減」
 いろいろな容器包装がある中でなぜ「レジ袋」かというのは、やはり「マイバック」という代替品があるからだと思います。
他にもスーパーで使われているトレーとか使い捨てのもので言えば紙コップだとかいろいろありますが、スーパーでの「セルフ販売」では魚を直に受け取るわけにもいかないし、飲み物をどこかで買おうと思えばやはり缶とかペットボトルといった容器を最小限使わざるをえません。
けれどレジ袋だけは使わなくても、多少利便性は失われますけれども、袋を持参すれば生活に支障がない。
 レジ袋に石油がどれくらい使われているかということだと、イオンの京都東山二条店のチラシにはお猪口1杯、1枚でお猪口1杯の石油が使われていると書いてあります。
なかなか分かりやすい表現ですが、日本国民が毎日毎日1枚、お猪口1杯の石油を喪失しているかと思いますと、これは無視できません。

容リ法改正の主な論点
 容器包装リサイクル法改正の主な論点は、事業者への責任をもう少し強めようということでした。
レジ袋の有料化を義務づけようという話もありました。
これまでリサイクルばかりが先行してしまったので、発生抑制をどうしようかというときに「白羽の矢」があたったのがレジ袋でした。
話が進んでマスコミも取り上げ法制化の一歩手前までいったのですが、まとまりませんでした。
 大手スーパーが参加するチェーンストア協会はOKでしたけれどもコンビニのフランチャイズ協会、あるいはデパート関係の百貨店協会、こちらは削減はいいけど有料化は難しいという感じで足並みが揃わなかったのが理由です。
こういったことが今回の容器包装リサイクル法の改正の過程にありました。ただ、有料化の風が吹いてきたということは言えます。

お隣の韓国でも
 この風は非常にいいことだと思うのですが、他国ではもう有料化しているわけで、一方ではすごくもどかしいと思っています。
お隣の韓国でももう5年ぐらい前から有料化されております。いろいろな国が有料化している中で、日本は有料化にこれだけ手間暇かけなければいけないのです。

行政・市民・そして事業者が一体になった取組
 ごみの削減としてレジ袋が象徴的で取り組みやすいというのは、行政、市民、そして事業者の3者が一体になって取り組めるという点だと思います。
各々の立場でレジ袋に関われるので、全国で色々な形でキャンペーンが行なわれています。
 武蔵野市ではレジ袋を断ってもらうためにチラシを配るほか、「レジ袋いりますか?」というステッカーをズラーっとレジのところに貼って、分かりやすく、誰もが目につくようにしています。
 多摩市ではスーパーの協力で、キャンペーンの日にマイバックでお買い物をする人はくじが引けるという取り組みもしています。こうやっていくと誰もが参加しやすい。
ただ、こうしたいわゆる啓発活動が果たして削減につながっているのかどうかということです。
 日野市は住民参加で「日野市ごみゼロプラン(一般廃棄物処理計画)」というのを作っている。
そのプランに参加する市民が150人という大所帯で、市民の声を良く聞いて進める行政で、その点で日野市はあっちこっちで引っ張りだこなのですけれども、この日野市でレジ袋の辞退率について2年間スーパーの出口調査をしてきた。
 そこで、実際に辞退する割合はどうだったかというと、やや高まってきたかのように見えてもせいぜい25%ぐらいなのですね。
積極的に働きかけても必ずしも削減率にはつながらない
ところが、アンケートをすると90%以上は有料化すれば買い物袋を持参するというように答えている。

有料化しても繁盛
 一方でオーケーというスーパーがあります。オーケーでは創業当初から有料化をしています。
ここは別に環境政策とかから導入したわけではないのですね。レジ袋は経費がかかります。当然商品価格のなかに含まれているんです。
そのお金を使わないで商品の価格を安くしようということで、もともと商品を低価格で提供するためにレジ袋を6円で売っているんです。
 小金井市でもこのスーパーがあるのですけれども、そこで見学したところ、10人のうち8人以上、8.5人〜9人ぐらいはマイバックでした。周囲にイトーヨーカドーとか西友といった競合店もあるのですが、この店には買い物に来る人が結構います。
それこそ最初はこの店はレジ袋も出さないのか、サービスが悪いとお客さんが従業員に詰め寄ったこともあったそうですが、今はもう定着して、たくさんの人が買い物に来る。

啓発から有料化へ
 ここで私が言いたいのは、もう啓発は卒業して有料化の時代かなということです。
ごみ環境ビジョン21としては、啓発から有料化に活動のテーマを切り替えて、情報発信しています。
そのときにたまたま容器包装リサイクル法の改正のなかで、有料化を法制化しようという話が出てきたので、タイミング的には一致したということです。
 レジ袋削減についてはいろんな対策があると思いますが、有料化というのはそれとは全然違う、啓発とは違います。
商品にするわけですから、啓発から1歩先へ踏み出すことです。

大手スーパー、ジャスコの挑戦
 ジャスコの京都東山二条店にちょうど1週間前に行ってきました。ここでは、1月からレジ袋の有料化が始まっています。出口のところで見ていたのですが、数字で言いますと、35人中、33人ぐらいはマイバックを持っていました。
 当初東山二条店ではまあ50%いけばいいかなというような予想で始められたそうですけれども、今は90%近い辞退率です。店内表示も非常に分かりやすく工夫してありました。
ここの有料化の進め方というのは3カ月前、10月の途中くらいから皆さんに告知を始めたようです。
折り込みチラシを入れたり、店内で放送したり、あるいはチラシをレジのところで配ったりして。
その地域では、この店を使う自治会が二つあるのですが、その自治会にイオンの方から出向いて、女性の店長さんですが、これこれこういうことで1月から有料化しますという話をして地域の支援をいただいたそうです。
 京都にはジャスコが4店舗あるのですが、なぜここがトップバッターに選ばれたかというと、ここは古くからある地域密着型というか、通りすがりの方は少ない、お客さんのほとんどが地域の方だからです。
それと、バラ売りをしたり、野菜なども地域で取れた物を売っているとか、食品を主に売っているスーパーなので、レジ袋の有料化がしやすいということで選んだようです。
 イオンではあと仙台、名古屋、横浜で予定されているということなので、是非がんばっていただきたいと思っております。

京都市の取り組み
 4月からは今度イズミヤが有料化をするということで、だんだん広がっています。
京都の場合は「レジ袋有料化推進懇談会」という私的懇談会が一年ぐらい前からできていて、そこにはスーパー、市民団体、市はオブザーバーで参加しました。次に市は、30%削減しますよ、50%削減しますよという協定を結ぶお店を募集して東山二条店と協定を結びました。

もったいないから…
 東山二条店の取材をしているときに、店内でカートを押しているおばちゃんに「どうですか?」と聞いてみました。
そうしたら、「もったいない、もったいないから(レジ袋は)一回も買ったことない」と言うんですね。
私は「ごみ処理のお金は誰が払うのか」という本を書いたのですが、やはりお金でごみ問題をみていくことは大事だと思うんですね。
 環境とか石油資源、あるいは地球温暖化からレジ袋ってこう順番に頭のなかで組み立てていくまでに、もうレジ袋もらっちゃったりしていますから、やはり一番早いのはもったいないからやめる。
もったいないからレジ袋は買わない、というのであれば誰でもできる。
おばちゃんは多分、このレジ袋に使う石油がどうだこうだということはあまり考えていないと思うんですね。
ごみになるから、もったいないから買わない。で、「どこの店でもやったらええやんか」って。

杉並区…「税」から「有料化」へ
 杉並区は全国でも有名だと思いますけれども、「杉並環境目的税」というのを2002年条例で定めました。
杉並区の目論見としては、全国のあちこちでこの条例を作ってもらうことが狙いだったのですが、あにはからんや杉並区だけになってしまいました。
これはすぐに導入するのではなく、マイバックの持参率が2007年までに60%を達成できなければ導入するということだったのですが、お豆腐やさん、八百屋さんといった中小の商店街は非常に反対していました。
 杉並区は行ってみればわかるのですが、啓発に非常にお金をかけています。区長の特命でレジ袋の担当者が2、3人いまして、のぼり旗は作る、いろんなグッズは作るで非常に力を入れている。
それにも関わらず持参率は35%止まりということで、やはりいかに啓発が難しいかということですね。
杉並区としてはレジ袋税ではなく、有料化で60%を達成するというふうにいまは政策を切り替えています。

諸外国の例
 諸外国の例です。
ドイツは袋を買う人もいましたが、1回買ったらどこのスーパーでも使うという感じで、他の店のでっかいロゴが印刷してある袋を、若い人たちも平気で使っていました。それが習慣になっているなあという感じでした。
 韓国は使い捨て容器を禁止しております。
小さな店は免除されたり守らないところもあるのですが、まずは大手から網をかけて、浸透させていくというやり方で、発生抑制を進めていくのにこういう凹凸のあるやり方もいいのじゃないかと思います。

「しなののくに」でも
 まとめですが、全国各地でマイバックキャンペーン、手を変え、品を変え、ほとんどやりつくしたのではないかなあと思うくらい啓発運動をしていますが、やはり地球温暖化のことも考えても、もうもたもたはしていられない。
 松本市、長野県でも有料化のお店をどんどん増やしていっていただきたいと思いますし、もうそういう時期にきたのかなあと思います。
 それからレジ袋というのは何もレジ袋で終わるわけではありません。
これからごみを減らしていくためのほんのとっかかりにすぎませんので、これをしっかり肝に銘じてごみを減らしていきたいなと思います。


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